腕時計
バーゼルワールド2018 レポート
シャネル
2018.08.03
年明け1月のSIHH(ジュネーブサロン)に続いて、バーゼルワールドがスイスで3月22日〜27日に開催された。1917年から始まった商品見本市をルーツとして、昨年に100周年を迎えた国際的な時計と宝飾の展示会。多彩な新作が数多く披露された。今年のトレンドは最後にまとめるとして、日本でも人気の高い有力ブランドから注目のモデルをピックアップしていく。
自社開発ムーブメント第3弾はスタイリッシュなスケルトン!
「エレガンスとは、外側と同様に内側も美しいこと」(ガブリエル・シャネル)。2000年に発表された「J12」で時計界に独自のポジションを築いたシャネルは、この創業者の言葉を機械式ムーブメントで本格的に体現しつつある。
2016年には初の自社製ムーブメント「キャリバー 1.」を発表。レトログラードの分表示とジャンピングアワーを組み合わせた複雑機構だけでなく、斬新なセンスでモダンに造形されたムーブメントをシースルーのケースバックから見せて大きな話題となった。続いて翌年には第2弾の「キャリバー 2.」をカメリアの花の形のスケルトンダイヤルで表現した「プルミエール カメリア コレクション スケルトン」を発表。花弁を重ねたような大胆で独創的なデザインが高く評価され、同年のジュネーブ・ウォッチグランプリでレディース部門賞が授与されている。
そして2018年に登場した「キャリバー 3.」は、ヴァンドーム広場にインスパイアされた8角形のフォルムの「ボーイフレンド」に搭載。縦に大小の円を連ねたように並ぶブリッジがスタイリッシュなスケルトンムーブメントになっている。ダイヤルの向こう側まで素通しで見える透明感の高さだけでなく、リューズまわりのカムなどのパーツを見えないよう巧みに処理しているほか、ブリッジも時分針と秒針(スモールセコンド)の視認性を損ねないようブランドカラーのブラックに塗装。
ただし、その内側の面取り部分からベージュゴールドのソフトで上品な艶を見せており、シャネルの鋭い美的センスと技術力がハイレベルな水準で融合していることをうかがわせる。これまでになかった新感覚のスケルトンモデルであり、5時位置に配されたテンプの絶え間ない動きが、生命の躍動を伝えるダイナミックなアクセントになっている。
時計の“内側”だけでなく、シャネルのアイコンウォッチ「J12」では“外側”でもユニークなデザインの「J12 アンタイトル」が登場した。シンボリックな12の数字を、ダイヤルからベゼルまでを一体化して大きくアーティスティックにデフォルメしており、インパクトは抜群。カラーはホワイトとブラックの2種類で、世界限定各1200本。さらに、1から12までの数字をそれぞれセラミックのマルケトリ(象嵌)でアレンジした全12デザイン、各1本だけの限定モデルも発表された。
2017年に発表された「コード ココ」は、シャネルの伝説的なバッグ「2.55 」のクラスプ(留め金)をアレンジしたブレスレットウォッチ。ダイヤル上に配置されたバー状のクラスプを回転させることで、バッグのようにブレスレットを開閉できる。2017年にステンレススチールで登場したが、今年はシャネルらしくブラックセラミックを導入した新作を第2弾として追加。軽くしなやかなキルティングパターンのブレスレットにセラミックを用いており、漆黒の艶が美しい。
問/シャネル(カスタマーケア)0120-525-519
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。