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フィレンツェの異国人 その3 ブートブラック
2017.08.09
1919年にシューケアメーカーとして創業、48年にコロンブスに社名変更しました。ブートブラックは最高品質の素材を用いた靴クリームや、ブラシなどを扱うプレミアムブランドとして設立。ピッティ・ウォモには7年前から出展を続けています。
ブランド名はイギリスの古い言葉で“靴磨きをする人”を意味し、革靴が黒のブーツしかなかった時代に由来します。そんな靴文化の長い歴史をもつ海外に打って出るため、ピッティ・ウォモに出展。ブースではカウンターを備え、来場者の靴をその場で磨くサービスも好評で、多くの靴愛好家でにぎわいます。
「昔ながらの靴墨から、趣味で楽しむシューケアアイテムとして世界観のあるブランドとして育てたいという思いから出展を続けています。やはりファッションの先進地で得られる最新の情報や文化の違いは学ぶことが多いですね。派遣するメンバーも毎年替え、現地の空気を体験させるようにしています。それが刺激になり、帰国後はブランドをさらに活性化しています」とコロンブスの取締役、服部暁人さん(写真左)は言います。それはまるで“サーキットは走る実験場”と位置づけ、F1参戦を続けたホンダを思わせます。
今年初めてブースに立つ高橋大祐さんは、通常はショップスタッフとして顧客と向き合う靴磨き職人(カラリスト)です。
「普段は販売の現場からニーズを引き出し、商品企画につなげていますが、こうして世界中の来場者の靴に直接触れることはとても勉強になります。実際に靴を磨き、手で得た情報が豊富な商品バリエーションにつながり、ソフトの提案になります。そうしたこだわりはやはり日本ならではでしょうね」
靴磨きにもトレンドがあり、最近は全体を磨き上げるのではなく、しっとりとした革の風合いを残しつつ、自然に仕上げるのだとか。踏み入れたくなる新たな靴の世界の楽しみです。
プロフィル
柴田 充(しばた・みつる)
フリーライター。コピーライターを経て、出版社で編集経験を積む。現在は広告のほか、男性誌で時計、クルマ、ファッション、デザインなど趣味モノを中心に執筆中。その鋭くユーモラスな視点には、業界でもファンが多い。
Photograph:Mitsuya T-Max Sada
text:Mitsuru Shibata