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万年筆は男の武器。 その5
2017.08.18
万年筆は男の武器である――そう説いたのは、作家の池波正太郎。
万年筆は単なる筆記具にあらず。持ち主の人となりを雄弁に物語る“武器”なのだ。
また、万年筆でつづられた文章からは、書き手の姿も浮かび上がってくる。筆圧やかすれ、ちょっとした書き癖までもが、思いを伝える“武器”となる。
“書く”ことが、端末を“打つ”ことに取って代わられて久しい。そんな時代だからこそ、万年筆の意義を改めて見直してみたい。
いま、持つべき万年筆とは? 自分にふさわしい一本とは? 5回にわたるこの連載企画のなかで、きっとその答えが見つかるだろう。
最終回では、素材にこだわり、ため息を誘う完成度を誇るモデルを紹介する。
セーラー/有田焼万年筆 源右衛門窯 染付章魚唐草濃
260年余りの歴史を有する有田焼の名窯、源右衛門窯とコラボ。渋い色調の染付章魚(たこ)唐草文様が味わい深い。熟練の職人が仕上げた21Kのペン先が生み出す軽やかなタッチと滑らかな書き味は、手で書くことの楽しさを改めて実感できる。源右衛門窯製の筆休め(ペン置き)と、本場加賀白山紬の筆包みが付属。日本のものづくりの奥深さを感じさせる一本。¥250,000/セーラー(セーラー万年筆 ユーザーサービス 0120-191-167)
タシャ/サ・バン
台湾出身の女性ファッションデザイナー、シュー・ジェン・リンが、アメリカで立ち上げた筆記具ブランド、タシャ。ファッション感覚を取り入れたクリエイティブなモデルをラインアップ。『サ・バン』は、水牛の角を軸胴に採用。芽吹いた小枝をモチーフにしたフォルムと相まって、自然界の息吹を感じさせる。天然素材ならではのオーガニックな質感や、2つとして同じものがないパターンも堪能できる。¥50,000/タシャ(銀座・伊東屋 03-3561-8311)
モンブラン/パトロンシリーズ 2017 シピオーネ・ボルゲーゼ 4810
文化や芸術に功績のあった歴史上の人物を称(たた)え、毎年発表されるパトロンシリーズの2017年バージョン。16~17世紀の枢機卿で、芸術界のパトロン活動に取り組み、ボルゲーゼ美術館の設立者として知られるシピオーネ・ボルゲーゼをオマージュ。同美術館のフロアに着想を求めたグラナイト(花崗岩)のボディーを採用。限定4810本。¥276,000/モンブラン(モンブラン コンタクトセンター 0120-39-4810)
S.T. デュポン/ブラック・マザー・オブ・パール&パラディウム
1872年に高級革製品ブランドとして創業し、後にライターでも評価を高め、1973年から高級筆記具を手がけているS.T. デュポン。プレシャスな素材を用いた製品に定評があり、この万年筆では、パラディウムのボディーとキャップに、希少なブラック・マザー・オブ・パールがあしらわれた。独特なきらめきが、贅沢な雰囲気を醸し出している。¥250,000/エス・テー・デュポン(エス・テー・デュポン銀座ブティック 03-3575-0460)
カランダッシュ/バリアス エボニー
古くから家具や楽器などに用いられてきた、ダークな色調を特徴とするエボニーウッド(黒檀)を六角形の軸胴に採用。どこか懐かしく温もりのある自然な感触が心地よい。ローズゴールドのキャップやペン先とのコンビネーションもエレガントな雰囲気。¥125,000/カランダッシュ(カランダッシュ ジャパン 03-6804-3201)
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Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Text: Yasushi Matsuami