美しい時計

心地よい音色の解析と特許取得機構で実現したオーデマ ピゲの革新的なミニッツリピーター

2017.08.29

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ミニッツリピーターは懐中時計の頃に考案され、腕時計にも搭載されるようになったが、ケースが小さく防水性のために音が外に出にくい構造だった。この問題を完全に解消したのがオーデマ ピゲの「スーパーソヌリ」だ。右端がこの機構を搭載した「ジュール オーデマ ミニッツリピーター・スーパーソヌリ」。

ミニッツリピーターは、2つの音色を組み合わせて時間を知らせてくれる複雑機構だ。夜間の明かりが乏しい時代に考案され、懐中時計を経て腕時計にも搭載されるようになった。ところが腕時計はケースが小さく、防水のため密閉性も高いため、音が響きにくい。こうした問題から完全にブレークスルーしたのがオーデマ ピゲの「スーパーソヌリ」だ。
この革新的な機構開発に携わった2人がスイスのオーデマ ピゲ本社から来日。「ジュール オーデマ・ミニッツリピーター・スーパーソヌリ」の音色を聴かせてくれた。

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左は「スーパーソヌリ」を開発したオーデマ ピゲ・ルノー エ パピのディレクター、ジュリオ・パピ氏。右はオーデマ ピゲのグローバル ブランド アンバサダーを務めるクローディオ・カヴァリエール氏。プロダクトを通してオーデマ ピゲの理念やメッセージなどを広報する役割だ。

普通ならば時計に耳を近づけたくなるのだが、確かに美しい音色が濁りなく明瞭に豊かに響く。その秘密は時計の裏側にあった。ミニッツリピーターの音は、時計内部に組み付けられたリング状のゴングをハンマーがたたくことで発生するのだが、これをムーブメントから完全独立させてサウンドボード=音響板に配置。さらに内部に空洞と開口部を持つ裏蓋がつけられており、いわばアコースティックギターのような構造を実現しているのだ。

また、「濁りなく明瞭に」も重要な課題だった。ミニッツリピーターにはゴングをたたくハンマーの速度を一定にするガバナーと呼ばれる調速装置がある。これがジーという微小なノイズを発生させるのだが、ほぼ完全に消音してしまった。前述した音響構造と、このガバナーの消音機構で特許を取得済みといえば、その革新性がわかるはずだ。

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ゴングを叩くハンマーを調速するガバナーのノイズを完全に消音した新機構の拡大模型。特許を取得している。

それだけでなく、このミニッツリピーターは「心地よい音の追求から始まったのです」と、オーデマ ピゲ・ルノー エ パピのディレクター、ジュリオ・パピ氏は語る。
「昔は娯楽が豊富ではなかったので、バイオリンなどの楽器演奏を趣味にする時計師も多く、ミニッツリピーターの音色にも敏感でした。けれども現代は音楽以外の娯楽も多く、当時の時計師ほど絶対音感を持った時計師は限られています。そこで、ローザンヌ工科大学と共同で自社製ミニッツリピーターや楽器など、耳に心地よい音色を追究。それをコンピュータで解析しました。これによって熟練した時計師がゴングのどの位置を調整すれば求める音色に近づけていけるかが判断しやすくなり、チューニングの際のサポートとなりました」

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「スーパーソヌリ」搭載モデルのミドルケースを拡大した模型(左手)。音響系の部分を底部にまとめるだけでなく、音を大きく響かせるサウンドボード(右手)も追加している。

これまでミニッツリピーターはケースの素材によって音色が異なるといわれてきた。たとえばチタンとピンクゴールドで反響が違うのは容易に納得できるだろう。だが、「スーパーソヌリ」は音響系の部分を時計底部にまとめ、さらにサウンドボードを追加したことで、ケースの素材を問わず、ほぼ均質の音色を実現できるようになった。パピ氏によれば「素材による影響は1割程度」という。それとゴングの調整部分をガイドするソフト開発によって、音色に関しても個別のバラツキを解消したといえるだろう。ちなみに、オーデマ ピゲ・ルノー エ パピは数多くの超絶的な複雑機構を手がけてきた研究開発・製造の工房だ。

パピ氏と同席したクローディオ・カヴァリエール氏は、オーデマ ピゲ スイス本社のグローバル ブランド アンバサダー。同社のメッセージとアイデンティティーを世界に発信する役割を担っている。
「ミニッツリピーターは夜の暗闇のなかで時間を知るために誕生しました。それ以前にも時計台の鐘が告知していたので、時間と音は密接な関係があるのです。夜でも明かりがあふれている現代では実用性に乏しいと思われるかもしれませんが、むしろ現代人にとって時間を音で知ることは心を豊かにする貴重な体験になるのではないでしょうか。心地よい音色で時間を優雅に知ることができれば、追い立てられるような殺伐とした感覚から救われます。超高級な複雑機構なのでプレステージ性も高いのですが、ごく単純に“音で感動できる時計”としてご理解いただきたいですね」

text: Keiji Kasaki

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