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長谷部誠、W杯ロシア大会を見据えて―

2017.09.27

写真・図版 一志治夫

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あのとき、長谷部誠の照準は完全に来たるべき「その日」、つまり8月31日に合わせられていたのだろう。

私たちが長谷部の取材撮影のためにドイツのフランクフルト入りしたのは、8月12日。この日の夜、長谷部は、約150キロ離れたエルンテブリュックで行われたカップ戦にフル出場し、無失点で勝利を収めていた。長谷部にとっては3月11日のリーグ戦で右膝を傷めて以来、実に5カ月ぶりの公式戦だった。

「2010年W杯南アフリカ大会はベスト16。2014年ブラジル大会はリーグ敗退。紙一重ではあると思うけれど、その違いはどこから生まれたのですか?」――。出場した2回のワールドカップに関してのこんな大雑把な質問に対して、長谷部は実に丁寧に考えを開陳してくれた。

「結果論だけで言えば、さまざまな変化を恐れず対応したのが2010年。2014年は逆に自分たちが積み上げてきたものを変えずに、そのまま大会に入って結果的に負けた。ただ、負けはしたけど、あれが間違いだったかというと、長い目で日本サッカー界を見たとき、すごく必要だったと思うんです。サッカーの世界は特に、結果論だけにこだわりすぎてしまうのが危ないし、結果が出なかったときに当事者から何か意見を発することができない雰囲気をつくってしまうのは危険だな、と思います。批判は当然あっていいのですが、きちんと議論して、変えていくものは変えていかないと、後退してしまう可能性もあると思うんです」

このインタビューの1週間後、長谷部は、ブンデスリーガの2017-2018シーズンの初戦を迎え、フル出場した。2試合続けてのフル出場となったわけだが、そこには、10シーズン目を迎えたドイツでの戦いを全うするというだけでなく、もうひとつの意味が込められていた。それは、日本代表復帰への狼煙(のろし)である。ハリルホジッチ日本代表監督がケガで休んでいた選手をすぐには登用しないことは明らかだった。だからこそ、ドイツでゲームに出て、ケガが完治したところを見せつけなければならなかった。

結局、長谷部がキャプテンを務めたオーストラリア戦は2-0で快勝し、長谷部にとっては3度目となるW杯への出場を決めた。ゲーム終了後、長谷部は、「この8月31日を目標に個人的にはリハビリをやってきた。その結果がこれでうれしい」と長かった5カ月を振り返った。

その1週間後に行われたサウジアラビア戦。長谷部は欠場。おそらくはオーストラリア戦でも右膝はギリギリの状態にあったのだろう。長谷部不在の日本代表は敗戦。チームのバランサーとして、長谷部誠がまだまだ必要であることを証明した最終予選だった。それはロシア大会においても変わらないはずだが、長谷部らしくこう戒めた。

「予選を戦ったからW杯に出られるという選手は誰もいないと思う。また新たな戦い、新しい競争が始まる」――。

今回ドイツでのロングインタビューを終えて感じたのは、チーム内やピッチでもそうであるように、長谷部選手はバランスの人なんだなということだった。もっとも、口調こそ穏やかだが、内には静かな闘志と熱情を誰よりも秘めているということも伝わってきた。クールで熱いのだ。その人間力はまさにリーダーに最適の人と言ってもいい。いずれにせよその丁寧で過不足ない話しっぷりは、インタビューアーにとってこの上なくありがたく、また好感がもてた。

長谷部誠選手の人生とサッカーに対する熱き思いは、ぜひ、9月23日発売のAERA STYLE MAGAZINE vol.36(www.amazon.co.jp/dp/B074BN8M2W)でお読みください。

プロフィル
一志治夫(いっし・はるお)
ノンフィクション作家。『狂気の左サイドバック』で第一回小学館ノンフィクション大賞を受賞。『足に魂こめました―カズが語った「三浦知良」』『たったひとりのワールドカップ―三浦知良、1700日の闘い』ほか、著書多数。

Text: Haruo Isshi
Photograph: Masaya Takagi
Styling: Masayuki Sakurai
Hair & Make-up: Miyuki Sato
Coordinate: Hideko Kawachi

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