紳士の雑学
ジャケットを構築するディテールを知る
[ポケット、カフ]
2017.10.04
ウエストシェイプが導くシルエットの妙。伝統的なあしらいに込められたTPOとの相関関係。手の込んだ仕立て業が生み出す軽快な着心地…。それらの差異に目を向ければ、スーツスタイルは実に楽しい。「神は細部に宿る」とは近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエの言葉。それは、大人の男の装いにもあてはまる。
Pocket of Jacket ジャケットのポケット
フラップポケット
ほこりや雨の侵入を防ぐためのふたがついたポケット。上着のフロントポケットとして多用される最もオーソドックスなスタイル。パッチポケット
外側から別布を貼りつけた形状のポケット。スポーティなジャケットによく見られる仕様で、カジュアルな印象を与える。パッチ&フラップポケット
文字どおり、パッチポケットにフラップ(ふた)がついたポケットの仕様。封筒に見えるところから、エンベロープポケットと呼ばれることも。
スラントポケット
スラントとは「傾く」の意で、斜めにカットされた切り込みポケットをいう。英国の乗馬用ジャケットに使われた仕様が出自。チェンジポケット
フロントポケットの上についた小ぶりのポケット。フラップつきが一般的。チェンジ(つり銭)を入れたことからこう呼ばれる。両玉縁ポケット
共地の細布でポケットの端をくるんで処理したものを玉縁と呼ぶ。これを切り込みの両側に施したものが両玉縁ポケット。
ウエルトポケット
上着の胸ポケットの典型的な装飾で、切り込みポケットに縁飾りの口布(ウエルト)を帯状につけた形状のものをいう。バルカポケット
バルカ(小舟)の船底のようなカーブを描く胸ポケット。ナポリ仕立ての特徴で、胸部のシルエットにフィットする。
背と袖の裏地

背と袖で裏地を変えるのは、ロンドンのあるテーラーが他店と差別化を図ったのが始まり。組み合わせをいかに…、しゃれ者の悩みどころだ。
Cuff カフ
開き見せ
ボタンやボタンホールが施され、一見開きそうに見えるのだが、実際には開かない袖口の仕様。装飾的な役割を果たす。本切羽
「ほんせっぱ」と読む。実際にボタンの開閉ができる仕様の袖口で、本開き(ほんあき)と呼ぶことも多い。オーダーメイドならではの仕様。キッシングボタン
袖口のボタンを、間隔を狭めて重なるようにつける仕様。重ねつけともいう。クラシコイタリア調のスーツに多く見られる。
本切羽の着こなしテク

ビジネスシーンにはお勧めしないが、TPOさえ許すならば本切羽のボタンを1つ2つはずすのも一興。着こなしに“抜け感”が生まれる。
出典:永久保存版「スーツ」着こなし事典(朝日新聞出版)