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西島秀俊、凛々(りり)しく優しい男の肖像。

2017.11.15

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美しい仕立てのスーツに身を包み、約束の時間よりも少し早く、静かに撮影スタジオに現れた西島秀俊。凛(りん)とした空気を醸しつつ、ときに浮かべる優しい笑顔に思わず場の空気も和む。

そんな日本一〝引っ張りだこ〞な俳優の、魅力の秘密に迫る――。

いまやテレビで西島秀俊の姿を見ない日はない。ドラマはもちろん、CMへの出演がまた圧倒的に多いのだ。保険、家電、自動車、食品などさまざまなジャンルのCMに出演している。

それぐらい、西島にはある種の普遍性があり、好感度が高く、つい登用したくなる俳優なのだ。事実、目の前に現れた西島は、静謐(せいひつ)で、真摯(しんし)で、知的で、さらに間違いなく華も備えていた。

そんな空気を醸す46歳の男にダークスーツが似合わないはずはない。普段からスーツ好きだという西島は、今回初めて、ジョルジオ アルマーニの「メイド トゥ メジャー」でスーツを仕立てた。

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そのときの印象をこう言う。

「初めてスーツを仕立てたんですけど、もう全然違いますね。結構、長時間着ると疲れるかなと思っていたんですけど、ジャストサイズのスーツを着ると全然逆で、ちょっと考え方が変わりました。特にジャケットは肩だけで支えるのではなく、自分の背中の丸み全体で着る感じで動きやすくて、本当に着心地がよかったです」

今回、ジョルジオ・アルマーニ本人ともイタリアで対面した。

「ものすごいエネルギーをもった方だな、というのが第一印象。いまもコレクションでは、直前までご本人がチェックして出しているということですしね。彼のデザインは、服だけじゃなくて、生活全般じゃないですか。ホテルも泊まらせていただいたんですが、シャワーから何から全部アルマーニさんの美意識でつくられていた。僕がアルマーニさんを好きなのは、何かを付け足すのではなく、控えめでシンプルであるということ。日本文化もすごくリスペクトされているし、とにかく、統一された美意識が素晴らしいと思う」

これまで、西島はおびただしい数のドラマや映画に出演し、さまざまな役柄に挑んできた。

その西島が今回、映画『ラストレシピ 〜麒麟の舌の記憶〜』で天才料理人の山形直太朗役を演じた。1930年代の満州国で究極のフルコースを開発する山形は、一度食べた味を記憶してしまう絶対味覚をもつ男だ。

西島自身は、それまで実生活で本格的に料理をつくったことはなかったという。

「今回の映画では先生について、鮎料理、カツレツ、チャーハン、鶏の解体の仕方とかをイチから教えていただきまして。そして、その日使った食材を渡されて、もう一回家でつくるということを繰り返しました。実際にやってみると、いかにプロの料理人がすごいかも改めてわかりました。フレンチでいちばんシンプルなソースを教わったのですが、これすら大変で。しかもそれをタイミングに合わせてお客さんに次々と出すのは、魔法使いとしか言いようがないと思いました」

中華やイタリアン、フランス料理店を訪ね、厨房を見学し、料理人たちの息づかいも直に感じた。

「戦場のような厨房を見て驚いていたら、『今日は穏やかなほうです』なんて言われて。料理人とは、すさまじい才能の人で、信念や覚悟をもって鍛錬と研究をしている人なんだと改めて感じました」

西島は、そうした料理人たちのエキスを見事に身体に吸収し、山形直太朗を演じ切った。厨房に立つ西島は、まごうことなき第一級の天才料理人になりきっていた。

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デビューからまる25年、西島は、こんなふうにそのときどきの役柄に全力で向き合い、演じてきた。ではその四半世紀に及ぶ俳優人生のなかで、最大のターニングポイントはどこだったのか。

「北野武監督とお会いできたことがいちばん大きかったです。この世界に入る前からビートたけしさんのファンでしたけど、俳優になってからは北野武さんの映画にとにかく出たいと思っていて、まさか、実現するとは思ってなかったんですけどね。それがうれしかったのと、実際にお会いして、なぜこの人が日本の芸能史に間違いなく名を残す人なのかということもわかった気がしたんですね」

西島が北野武に会ったのは、2002年公開の映画『Dolls 』。西島は、この北野映画で主役に大抜擢された。北野武のすごさとは何だったのだろう。

「北野監督は、まわりの人にいろんなことを与えつづけてきた人。その量がものすごくて、僕も人生を変えてもらったひとりですし、たぶん、何千人という人が人生を変えてもらったと思うんです。表に出てない部分も多くて、いま受けている評価よりさらにもっとすごい人だと感じてます。お会いして圧倒されたし、その存在感は同じ人間とは思えない人でした」

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西島はこれまで、仕事の幅を狭めないよう細心の注意を払ってきた。インディペンデント系からメジャー作まで、多様な作品とジャンルへの出演を意識的に心がけてきたのだ。

「やりたいことだけをやっていたら、どんどん仕事は狭まっていくと思っています。仕事の選択は、自分だけでは客観視できないので、マネージャーに委ねます。そうやって依頼された仕事を実際にやってみると、必ず何か発見がある。で、なるほど、じゃあ次はこうしてみようというのがまた出てきて、やればやるほど自分のモチベーションが上がってくる。だいたい僕は、スローで、相当不器用なんです。だから、まだまだこれからやらなきゃいけない仕事は残っている、と思っています」

そんな西島の高いモチベーションは、CM出演にも向けられる。

「コマーシャルに呼んでいただいている監督は、結構、映画的な感覚の方が多いです。家族構成、趣味、職業、好きな食べ物など、役の設定がペラで2枚ぐらいびっちり書いてあるようなCMだったりします。映画とまったく同じレベルの役づくり、労力、アプローチで、かなり厳密に準備してくださっています」

西島には、歴史や紀行などドキュメンタリー番組のナレーションの仕事も少なくない。

「僕がそのテーマに対して造詣(ぞうけい)が深いというよりは、そのことを学ばせてもらっているという感じです。視聴者の方と一緒に勉強して、深く考えてみたいというスタンスでお邪魔している。それは本当に勉強になることばかりだし、非常にやりがいもあります」

この日のインタビューで、西島がたびたび発したのは、「学び」「勉強」という言葉。北野武から、映画の現場から、そしてナレーションからさえ西島は常に何かを得、自身の糧にしようとしている。静謐で、真摯で、知的な匂いは、そんな西島秀俊の内側から否応なくにじみ出てくるものなのである。

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スーツ¥343,000、ベスト¥98,000/ともにジョルジオ アルマーニ メイド トゥ オーダー、シャツ¥67,000、タイ¥24,000/ともにジョルジオ アルマーニ(すべてジョルジオ アルマーニ)、その他はすべてスタイリスト私物。

<西島秀俊(にしじま・ひでとし)>
1971年3月29日、東京都出身。『MOZU』『とと姉ちゃん』『CRISIS公安機動捜査隊特捜班』など出演作は多数。2017年は、ジョルジオ アルマーニの最高峰ライン「メイド トゥ メジャー」の広告キャラクターとしても活躍。同ブランドのラインとして初の日本人起用は、国内外で大きな注目を集めた。ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(NTV、水曜22時~)に出演中。

掲載された商品はすべて税抜き価格です。

Photograph: Masaya Takagi
Styling: Takafumi Kawasaki(MILD)
Hair & Make-up: Masa Kameda(The VOICE)
Text: Haruo Isshi
Cooperation: EASE,
BACKGROUNDS FACTORY

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