旅と暮らし

“乾杯することの意味”を実感できるオトナのココロに
深く染み入る川村結花の歌を聴きに横浜へ

2017.11.22

内本順一 内本順一

400_川村さん

40代の半ばを過ぎたころからだろうか。古くからの友人たちと久しぶりに集まっていつものようにくだらない話でひとしきり盛り上がったあと、家に帰ってひと息つきながら「生きているうちにあと何回、こうしてみんなで集まれるかな」なんてことを考えたりするようになったのは。いつも必ず飲み会に来てはうるさいくらいにしゃべり倒したやつがあるときから来なくなり、誰かに聞いたら、どうやら仕事がうまくいかなくなったらしい……とか。家族のことで事情があって遠くに引っ越したらしい……とか。なんなら病気して亡くなった……なんてことだって、この年になればそう珍しくもなくなってくる。そうなると、あれだ。久々に顔が見られたってだけで、なんかよかったと思えたりする。経済も世相もいまの仕事もいろいろリアルに大変だけど、オレたち私たちはどうにかこうにか自分の場所で自分なりにやっていて、それでまたこうして会えているんだから、もうそのこと自体に乾杯したくなってくる。なんの保証もない世の中でどうにかなんとかやってきたことに。それでこうしてまたここで会えていることに。まずはそれに乾杯しようぜ、という気持ちになる。乾杯ってそういうことなんだなと、その意味がわかったのは、そういうことを考えるようになってからだ。

この感じをうまく言い表した歌があればいいのにと思っていたら、あった。川村結花の「乾杯のうた」。11月8日に発売されたニューアルバム『ハレルヤ』に収められた一曲だ。

改めて紹介するまでもないが、川村結花はSMAPの「夜空ノムコウ」(作曲)をはじめ、鈴木雅之、松たか子、中 孝介、藤井フミヤ、坂本冬美ら名だたるアーティストに楽曲を提供してもいるシンガーソングライター。『ハレルヤ』は2年ぶりのスタジオ録音盤で、キーボーディストのDr.kyOnとギタリストの佐橋佳幸が演奏とプロデュースを手がけている(ふたりはインストユニット、Darjeelingとしても活動)。

先日、川村結花さんに会って話を聞く機会があったのだが、昨年からマンスリーライブを始め、その最初の月に「来てくれた方々に、“いろいろ忙しいのによく来てくださって”という気持ちを込めて書いた」のが「乾杯のうた」なのだそうだ。また、その歌詞のメッセージはアルバムタイトル『ハレルヤ』にもつながっていて、彼女はこんなふうにも話していた。

「友達とも最近よく話すんですよ。“これからはもう、ちっちゃい幸せを積み重ねて生きていたいよね”って。“そんなに大きなことがなくても、今日また会えたっていうだけで既に幸せやんなぁ、うちら。ハレルヤやんなぁ”って(笑)。だんだん年を取っていくと、そういう気持ちになっていって」

「乾杯のうた」は佐橋佳幸のアコースティックギターの音色がなんとも美しくて懐かしく、めげそうになるときにふと口ずさみたくなるようなフォーキーバラード。我々の世代にとってグッとこないわけにはいかない一曲だが、アルバム『ハレルヤ』にはほかにもそのように日々の暮らしのなかから生まれた曲がいくつもある。それを聴く自分自身の背景や物語や思いにピタッと重なる曲、あるいは寄り添うような曲がいくつもある。“お隣のコロッケのにおい”“角のおふろやさん”など、なくなってしまったものへの思いや郷愁がジワっと表出する「カワムラ鉄工所」、戦うことはもうやめて、ゆるらりと、なされるままに生きていこうというメッセージが甘くジャジーに歌われる昭和歌謡チックな「夜の調べ」などなどなど。ピアノ、アコギ、アコーディオンなど各楽器の音色も実に豊かで美しく、つまりはオトナの音楽好きの心に深く染み入る全8曲のアルバムだ。

このアルバムを携えた川村結花の弾き語りツアーが2018年1月から始まるが、2月4日にはモーション・ブルー・ヨコハマに登場。この日はゲストで『ハレルヤ』にも参加している田中邦和(サックス、ヴォーカル)と柴草 玲(ヴォーカル)も出演する。日曜日の横浜、自分にとって大事な何かを思いながら、彼女の音楽に聴き入るのはステキなことだろう。

プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。ブログ「怒るくらいなら泣いてやる」(http://ameblo.jp/junjunpa)でライブ日記を更新中。

川村結花
ツアー2018「独奏」-ハレルヤ-

公演日/ 2018 年2月4日(日)
所在地/ 〒231-0001 横浜市中区新港一丁目1番2号 横浜赤レンガ倉庫2号館3F
料金/ 自由席5,000円 BOX席20,000円+シート・チャージ5,000円
※BOX席は4名様まで、予約はインターネットのみ。
問い合わせ/ 045-226-1919(11:00~21:00)

その他詳細についてはオフィシャルウェブサイトにて
http://www.motionblue.co.jp/artists/kawamura_yuka/

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