旅と暮らし

フランスの映画祭で最優秀アジア賞を受賞!
俳優の実話を基に描かれた、心打たれるヒューマンストーリー

2018.03.14

写真・図版
(C)2017「かぞくへ」製作委員会

“家族”とは、逃れられないことで苦しみ、そこにいると感じることで安心し、思い出を拠り所にして生きていけるもの。この物語に出てくる人たちはみんな、都会の片隅でそんなかぞくを思いながら必死に生きている。真っすぐで、不器用で、みんなが優しくて、だから孤独だ。


結婚を目前に控えた、家族を知らない男が、あるきっかけから親友を詐欺被害に遭わせてしまう。唯一のかぞくである親友への罪悪感と、これからかぞくになる婚約者とのあいだで揺れながら、優しさゆえに思いを言葉にすることができず、いつの間にかみんながすれ違っていく――。

写真・図版
(C)2017「かぞくへ」製作委員会

主人公の旭を演じた俳優・松浦慎一郎の実話を基に、映画初監督となる春本雄二郎が丹念に取材をし、練り上げた脚本。作品の根幹となるエピソードのいくつかは松浦自身が体験したことでもあり、そのリアリティーにこだわった演出は、無名の俳優、初監督、オリジナル脚本にもかかわらず、東京国際映画祭に正式出品され、フランスの映画祭では最優秀アジア映画賞を受賞した。

低予算で作られ、大きな宣伝もされないこの映画が、それでもこうして誰かに伝えたい作品である理由は、緻密な脚本と俳優たちの演技にある。同じ施設で育った親友同士を演じる松浦慎一郎と梅田誠弘。この二人のたたずまいが、映画そのものなのだ。ドキュメンタリーを見ているのかと思うほど、彼らの言葉の一端、表情、沈黙にまで感情移入し、心を揺さぶられる。自分が経験したことを演じるがゆえ、あまりにも真っすぐで不器用な旭(松浦)のまなざしに息が詰まりそうになるとき、いつも一定の距離で、でも確実にそこにいてくれる洋人(梅田)の存在に、観ているこちらが何度も救われた。

「かぞくやけん」という幸福な諦め。あの橋の上、五島列島の方言でつぶやかれたそのどこまでも強く優しい言葉を、今後どんなにたくさんの映画を観ても忘れることはないと思う。

『かぞくへ』
監督/春本雄二郎
出演/松浦慎一郎 梅田誠弘 遠藤祐美 森本のぶ ほか
上映時間/117分
製作国/日本
HP/http://kazokue-movie.com
渋谷ユーロスペースほか、全国順次ロードショー

Text:Asako Saimura

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