紳士の雑学

世界最大の靴の見本市「ミカム」で見る、2018年秋冬のトレンド[後編]

2018.04.17

2月に開催された「MICAM(ミカム)」には、イタリア以外のシューメーカーも数多く出展しています。

そのうちのひとつ、イギリスのノーサンプトンで1886年に創業した「ジョセフ チーニー」も、ここ10年「ミカム」に出展する常連です。

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マネージング・ディレクターのジョナサンさん。

「ジョセフ チーニーは、グッドイヤー・ウェルト製法が特徴。アッパーとソールがそれぞれ縫い付けられ、ソールの張り替えが可能だから、10年、20年と履きつづけることができます。ノーサンプトンには伝統的な工場が残っていて、そういう構造的に優れた靴が多く作られています。今回のミカムもイギリスから5社出展していますが、イギリス伝統のいい靴を見ていただきたい、という思いで出展しているんです。ミカムはヨーロッパのお客さまに会うことができ、関係を築いていくためにも重要なイベントです」とマネージング・ディレクターのジョナサンさん。

商品の約9割が定番的なクラシックシューズ。ある程度一貫したデザインのなかで、毎年少しずつデザインを変化させて提案しているのだという。

「イギリスの人は好みがぶれないから、イタリアやフランスと比べて、トレンドに乗ったシューズは少ないですね。少しずつワーロドーブを増やしていくのが、イギリスのファションの楽しみ方。そんななかでは、この秋冬はカントリールックが強いと思っています。特に提案していきたいのは、縫い目が見えないようにひと手間、ふた手間かけたクラシックシューズ。その分、少し高くはなりますが、ヨーロッパのなめしの、いい革を使用しています」

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    縫い目の見えないアウトソール。内側には品番、サイズ、木型が手書きされていて、修理や張り替えをしてもらえる。当然、アッパーにも気品があふれる。
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また、この秋冬は茶色がトレンド。「バーニッシュ(クリームをつけて強く磨く)すると、熱で焼けたような風合いになりますが、それが注目されているのではないでしょうか。スーツにも合うし、カジュアルにも履けます」

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人気の黒はもちろん、バーニッシュの茶色にも注目したい。

「ジョセフ チーニーの工場には120人の職人がいて、みんなそれぞれ違う工程を担当。革を切る、検査する、デザインするなど、工程がわかれていて分業されています。だからこそ技術が高い。ステッチを見ると、その違いが分かります。手作業ですが、ピッチが安定していて、真っすぐかつ平行に走っています。非常にハイクオリティーなんです」

「イギリスの靴は丸いフォルムのトウを想像する方が多いと思いますが、そういうイギリスらしい靴をジョセフ チーニーは得意としています。足の甲の幅と高さで、足に合うかどうかが決まるので、トウの部分はデザインなんですね。ジョセフ チーニーは甲の幅を数種類作っていて、お客さまの足にきちっと合う作りになっているのも魅力なんです」と、長く「ジョセフ チーニー」を日本に紹介している渡辺産業代表取締役の渡辺鮮彦さん。

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デザインの美しさは、職人の技術があってこそ。

今後は、上記で紹介したコレクション以上に手間をかけて作られている“インペリアルコレクション”を提案していきたい、とジョナサンさんは話す。

「土踏まずの部分が盛り上がっているので、履き心地もよく、足のフィッティングもよくなります。トウ周りのデザインは飾りなのですが、技術の積み重ねがないとできないもの。イギリスでも昔は職人を抱える工場が100近くあったのですが、いまでも続けているところは10社程度まで減ってしまい、材料も手に入りづらくなってきています。ミカムのようなこういう場で職人技を伝え、販売につなげることで、職人技が残っていくと思います。実際の消費者に対しては直営店で、品質やものづくりがわかるようなティスプレーをして、直接語りかけることが大切。それがクラフトマンシップを伝えるのに、すごく重要な役割を担っているんです」

イタリアのファクトリーブランド「VITTORIO SPERNANZONI(ヴィットリオ スペルナンツォーニ)」もまた、1965年に創業した当初から、グッドイヤー・ウェルト製法を行うファクトリーブランドです。

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社長のロビーさん。

「ヴィットリオ スペルナンツォーニは、縫製、ペイントもすべて職人が行っています。グッドイヤー・ウェルトとハンドソーン製法が特徴。そのうえにアンティーク加工を施すことで、自分たちらしさを表現しています」と社長のロビー・スペルナンツォーニさん。

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アンティーク加工による色のグラデーションが自慢。

「イタリアでもグッドイヤー・ウェルト製法を採用するメーカーは増えていると思います。うちはイギリスのメーカーの生産もしてきたので、グッドイヤー・ウェルトを採用したのはイタリアでも最初のほうだと思います。クラシックな定番のレザーシューズは、基本的に毎年同じものを提案しています。日本では、英国テイストで少しカジュアルなものが好まれるので、まだあまり付き合いがないのが残念なところ。トランクショーなどはしたりしていますが、今後が期待できる重要なマーケットだと思っています」

常連企業が多いなか、今回の「ミカム」で新たな取り組みとして行われたのが、国際的なイベントでは初めてだという「Emerging Designer」エリア。デザイナーやファッションスタイリスト、フォトグラファーなど、ファッション界のエキスパートたちが選んだ、イタリア国内外の12のブランドが紹介されました。

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フランスのブランド「Soloviere」。トップブランドでキャリアを積み、アレクシア・オーベールが2014年にスタートしたブランド。シックなデザインが魅力。
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NYを拠点にブランドを展開する「They New York」のデザーナー、ジャック・リンさん。シンプルなデザインのユニセックスなシューズは、日本人にも人気が出そう。

そのほか、比較的クローズドなスペースで展示するブースが多いなか、メインステージの周りで展示ブースをもっていたのが、「サルヴァトーレ フェラガモ」や「エルメネジルド ゼニア」などのイタリアブランド。新作商品を華やかに紹介していました。

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「サルヴァトーレ フェラガモ」のブースは、オープンなスペースで展示。
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昨年からミカムに復活した「エルメネジルド ゼニア」のブース。

会場では、雑貨や革小物など幅広く展示する「mipel(ミペル)」も同時開催。巨大な会場に出展する、世界中から集まった1300以上の企業からセレクト、バイイングをするバイヤーの仕事はかなり大変なものなのでは?

「確かに、一見するとたくさんに見えるのですが、お店がもつお客さま、価格、スタイル、デザイン、品質……と順番に見ていけば、最終的に自分がお付き合いしたいクライアント、工場がかなり絞られてくると思います」と、「ジョセフ チーニー」でお話を伺った渡辺産業の渡辺さんは言います。

さまざまな思いで企業が集まり、バイヤーはその思いを受け取り、お互いに関係性を深めたり、新たな商品やブランドを発掘する。「ミカム」のような展示会があるからこそ、人と人との関わりが生まれ、私たちが海外の商品を手にすることができるのです。

>>そのほかのブースの写真やおすすめのアイテムはこちら。

Photograph & Text:Mayumi Akagi

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