腕時計
バーゼルワールド2018 レポート
ブレゲ
2018.08.21
年明け1月のSIHH(ジュネーブサロン)に続いて、バーゼルワールドがスイスで3月22日〜27日に開催された。1917年から始まった商品見本市をルーツとして、昨年に100周年を迎えた国際的な時計と宝飾の展示会。多彩な新作が数多く披露された。今年のトレンドは最後にまとめるとして、日本でも人気の高い有力ブランドから注目のモデルをピックアップしていく。
ブレゲの遺産にインスパイアされた「マリーン」の新世代が充実
アブラアン=ルイ・ブレゲは、「時計の歴史を200年早めた」とも評される希代の天才時計師だが、1815年からフランス王国海軍御用達のマリン・クロノメーター(航海用精密時計)製作者という名誉ある称号も得ている。そんなブレゲが築き上げた比類ない遺産から着想したコレクションが「マリーン」であり、昨年はモダンで大胆にリフレッシュされたデザインの超複雑時計で話題となった。
今年も、このスタイリングを継承する3タイプの新作が登場。どのタイプもケースは18Kホワイトゴールド、18Kローズゴールド、それにコレクションでは初となるチタンケースがそろっており、海への憧れを誘う魅力的なラインナップが拡充された。
「マリーン 5517」はシンプルなセンター3針モデルだが、それだけに新世代とも表現できる「マリーン」の特徴がよくわかる。まず目を引くのは、鮮やかなブルーのダイヤルと、その中央部に施された手彫りギヨシェ装飾による波模様。これだけで十分に大海原をイメージさせるが、ローマ数字とインデックス、ブレゲ針に蓄光塗料を塗布。夜間などでの視認性が高いというだけでなく、独特の雰囲気を醸し出している。
秒針のエンドには、海洋信号旗の「B」のフラッグをブレゲの頭文字としてアレンジしてデザイン。ベルトとの接合部であるラグもケースとの一体構造にリニューアルされており、快適な装着感を実現している。「マリーン」では初となるチタンモデルだけは、スレートグレーのダイヤルに放射状の光を放つサンバースト仕上げとなっており、メタリックなイメージ。いずれも100m防水であり、シリコン製ひげゼンマイを導入したムーブメントなので耐磁性も高い(キャリバー「777A」)。実用性に優れた高級スポーツモデルだ。
ケース径が42.3㎜の「マリーン クロノグラフ 5527」もシルバーダイヤルに手彫りギヨシェの波模様が美しい。2つの積算計(30分、12時間計)とスモールセコンド(9時位置)の内側にも同じ彫りが丁寧に施されていることにも感心させられる。クロノ秒針のエンドには「マリーン 5517」と同じく「B」のシンボル。
新世代の「マリーン」はスポーツタイプだけでなく、ブレゲらしい技巧を凝らしたコンプリケーションも追加されている。それが「マリーン アラーム ミュージカル5547」。ネーミングにあるようにアラーム機構を備えており、3時位置に独立した大きなサブダイヤルで設定する(4時位置のリュウズで回す)。アラームがオン状態のときは、12時位置のロゴ下の小さな窓にベルのマークが見える。そのパワーリザーブ表示も9時~12時位置にかけて針のみで目立たないように配置。さらに9時位置には24時間計の第2時間帯表示も備えている。ローマ数字や時分針などに蓄光塗料も塗布しており、海外旅行などで頼りにできる利便性の高いモデルだ。
問/ブレゲ ブティック銀座 03-6254-7211
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。