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また会いたい、と思わず惹かれるひと
[篠原涼子インタビュー]

2018.12.10

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幼い娘がプールで溺れ意識不明に。回復の見込みがないと告げられた母・薫子は奇跡を信じ、眠り続ける娘との生活を最先端の技術を用いることで続けようとする。それは愛なのか狂気なのか……。公開中の映画『人魚の眠る家』(原作・東野圭吾、監督・堤幸彦)で、娘を思うあまり次第に常軌を逸していく薫子を演じた篠原涼子。自身も2児の小学生の母。朝6時半に起きて朝食を作り、7時半に送り出す毎日を送っている。

「この話をいただいたとき『どうしよう』と迷いました。もし、自分にも同じようなことが起きたら……と考え込んでしまって。でも、主人(俳優の市村正親氏)が『これは絶対に演じるべき』と背中を押してくれて決意しました。実際に撮影するにあたっては、〝篠原涼子〞が入るのは余計だと思い、『もし自分だったら』とはまったく考えませんでしたね。『これは薫子の人生だ』と切り替えて、逆に〝薫子〞を自宅に持って帰るような器用なことはできませんでした。主人も子どもも、撮影から帰ると『仕事をしてきた顔をしてる』と言っていたので、どこかで引きずっていたのかもしれないけれど、私としては囚(とら)われの身になったとは思ってません。〝女優〞としてやりがいのある仕事でしたね」

なぜか「女優」と言うときに照れた様子を見せた。映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』舞台『アンナ・クリスティ』と主演作が続いている。だが、「それは運がよかったから」「1番は運。努力は2番目」と謙遜する。過去のインタビューにおいても「私は器用ではない」という発言をたびたびしている。これだけのキャリアを築いたのは。運だけではないはず。

「それ! 『そんなことないですよ〜』っていう言葉を待ってるんですよ(笑)。本当にそう思っていたら仕事なんてできません……っていうのは冗談ですけど。ただ、一生懸命やることは嫌いじゃないですね。なんでも一生懸命楽しくして人を喜ばせる、それがモットー。だから人の評価はものすごく意識しています。日常でもそう。家族やお友達が来たときにご飯をつくったら、喜んでくれるとうれしい。自分はずっと台所に立って食べなくていいくらい。自己満足なのかもしれないですけど、それが結果的に自分に響いてくるというか、自分が喜びたいために人を喜ばせているというか。その一方で、最近、仕事においてはお客さまに感動していただくだけでなく自分も満足できる作品を届けたいと思うようになりました。そういう作品に出合うのではなく、そういう作品に自分がしていきたい。そういう力を持ちたい。まだ自分のことを〝女優〞だと感じられないので、自分にも他人にも認められるようになりたいですね」

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ネットでは「年を重ねるごとに美しくなる」と評される代表格。

「そう言っていただけるのはうれしいです。普段はズボラでメイクもしないのでヒドイもんですよ。でも、周りにいつまでもエネルギッシュな先輩が多いので、年を重ねることは怖くはないかな。私の場合は、子どもの存在と仕事がエネルギー源。その2つに常に刺激を与えてもらっていることが大きいですね。どんな刺激も吸収したいんです。自分が刺激を受けていないと、人に刺激を与えられないような気がするから。だからいろいろと冒険して蓄えたい。この秋は少し時間ができたので、映画や舞台、コンサート、さまざまな作品を見ました。忙しくたくさんの仕事をさせていただいて、自分が浄化されたような気持ちになったので、ほかの方の作品を見ることで一体化して、そのテンションを維持したいと思ったんです」

作品を見ていたら「この作品、私に演じさせてくれればいいのに」と思うこともあるのでは? と質問すると「それはないです。人を恨みながら見たくない」と即答。話を聞けば聞くほど、〝運の人〞ではないことが露わになっていくが、「そう言わせる術(すべ)です」と笑う。最後に、男性のどんなところに魅力を感じるかと尋ねた。

「腕が好きですね。筋っぽいところ。それから、喉仏とかすね毛やヒゲ、そういう女性にないところを見ちゃいます」

場を和ませながら気を配りながら「女優」としての思いを語る。「また会いたい」と思わせる魅力を備えた女性である。

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篠原涼子(しのはら・りょうこ)
1973年、群馬県出身。90年、東京パフォーマンスドールでデビュー。94年「恋しさとせつなさと心強さと」が大ヒットを記録。女優としてはドラマ『anego〜アネゴ〜』『ハケンの品格』『アンフェア』シリーズなどさまざまなヒット作で主演を務める。

シャツ、スカート、ブーツ/すべてスタイリスト私物

Photograph: Tetsuya Niikura (SIGNO)
Styling: Keiko Miyazawa(WHITNEY)
Hair & Make-up: Aya Maeda
Text: Yukiko Anraku

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