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デイヴィッド・ローレンが語る
ラルフ・ローレン帝国の過去、現在、未来。

2018.12.12

デイヴィッド・ローレンが語る<br>ラルフ・ローレン帝国の過去、現在、未来。
courtesy of Lorenzo Bringheli

ブランド誕生、50周年。アメリカのファッション、いやメンズファッションは、ラルフ・ローレンによってつくられてきたと言っても過言ではない。息子であり、ブランドのエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるデイヴィッド・ローレン氏のロングインタビューをお届けしよう。

「ラルフ ローレン」と聞くと、誰しもが、何かを思い浮かべる。カラフルで、洗練されていて、楽しいデザイン。それは刺繍が入ったポロシャツかもしれないし、ケーブル編みのニットかもしれない。どんなアイテムであれ、なんらかのイメージが頭をよぎる。時代を超えて、世界中の人の心にイメージを焼き付ける。アメリカン・トラッドを確立した、「ラルフ ローレン」は、2018年に誕生50周年を迎えた。設立時はメンズ・ファッションのブランドとしてスタート。ポニーの刺繍が入ったポロシャツは言うまでもなく、テディベアがモチーフのニットなど、カジュアルなアメリカン・スタイルを築き上げ、数々のアイコニックなスタイルを生み出した。1971年に立ち上げたレディース・ラインによりさらにブランドとしての拡大を図る。以後、アメリカのファッションを牽引。ライフスタイルや、ホスピタリティーの分野にも活躍の幅を広げ、多彩な分野で活躍するファッションデザイナーから実業家、慈善活動家のみならず、果ては人道支援活動に至るまで、世界で最も有名なブランドとして、ファッション業界全体に、決して消えることのない足跡を残した。

そんなファッション界の重鎮の後継で、同社のエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるのが、デイヴィッド・ローレン氏だ。チーフイノベーションオフィサーとして、ウェブサイトやアプリの監修をしている。2018年9月にニューヨーク・ファッション・ウィークで開催された、セントラルパークでのブランド誕生50周年を祝う、盛大なファッションショーでも、その手腕を発揮した。ラルフ ローレン パープル レーベルと、ポロ ラルフ ローレンを軸とする2部構成で、メンズとレディース、キッズのラインを合わせた170以上のスタイルが登場。モデルは総勢150人以上で、フロントローには、そうそうたる面々が駆けつけた。このニュースは、世界中のメディアで報道された。本誌は、そんな興奮冷めやらぬなか、デイヴィッド氏に直撃インタビューした。


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編集部 ブランド誕生の50周年を迎えいちばん変化したことや発展したことは何ですか?

デイヴィッド ラルフ ローレンは、ファッションブランドがインデペンデントなブランドとして、リテールストアで、またインターネット販売で成功することを証明したパイオニアだ。私たちはラグジュアリーなプロダクトをインターネットで販売した最初のブランドである。世の中のほとんどの人々が、ヨーロッパのブランドに注目している時代に、アメリカンブランドは、自らのカルチャーを反映しているユニークな存在で、どのヨーロッパのブランドよりも成功するということを証明したのだ。私の父、ラルフはアメリカンクロージングを世界に注目させた先駆者であり、世界のファッションへの見方に革命をもたらし、50年前にはまったく普及していなかったスポーツウエアの魅力を浸透させた。彼はこの革命を主導した立役者だと思う。

編集部 なぜラルフ・ローレンだけが、実現できたのでしょう。

デイヴィッド 彼は、ファッションデザイナーというくくりだけでは収まらない存在だ。服を超えたものをクリエートするユニークな能力を持っていたからではないだろうか。彼はアメリカのカルチャーに精通し、消費者の趣向を熟知していた。よりパーソナルで、モダンな社会にフィットする、服作りというものを知っていたのだ。

世界各地で展開するレストラン事業

編集部 ラルフ ローレンはライフスタイルブランドとして、活躍の幅を広げています。将来的に日本で、ホスピタリティーのビジネスを展開する予定はありますか?

デイヴィッド 我が社は、パリやシカゴ、ニューヨークにレストランを展開している。日本と中国、アジア全体にもレストランをオープンしたい。日本には、コーヒーショップをオープンさせたいと考えている。ニューヨークのポロバーは、大変な人気を博し、時には4カ月待ちということもある。ポロバーを日本にもオープンできたらいいと思う。現在、ポロバーで提供している、ハンバーガーやステーキの肉は、コロラド州にある、ラルフ ローレンの牧場産の高品質のビーフを使用している。今年9月からはホットドッグの販売も始めた。ニューヨークで、レストランを展開する際にはニューヨーカーのことだけを考えないようにしている。ニューヨークはグローバルな街で、何万人という人が、レストランで食事を楽しむ。海外の人が来店するほど、グローバルに受け入れられていることの証明になる。そして、海外にもレストランを展開しようという流れにつながる。

編集部 ラルフ ローレンが成し遂げた革新について教えてください。

デイヴィッド 2016年に始めた「Create Your Own」は、色を選べ自分の好きなようにシャツをカスタマイズ可能なサービスだ。自分の名前や、テディベアの刺繍を入れることもできる。自分だけのラルフ ローレンがカスタマイズできるということ。名前やイニシャルを入れられるセーターさえある。これまでに他社ではセーターがカスタマイズできるようなサービスはなかった。これはラルフ ローレンの世界観を凝縮した、革新的なサービスなのだ。消費者自身がロゴを選んだり、マークを入れたりすることができる。個人に特化した、自分だけのラルフ ローレンをデザインすることが可能となった。


誕生50周年記念のコレクションの発表と、時を同じくして、ラルフ ローレンのファンとつながる、究極のモバイル用アプリケーション「POLO」を立ち上げた。通常のコレクションに加え、限定品や、アーカイブ・ピース、エクスクルーシブなコンテンツが含まれるプラットホームとなっている。ネクタイの結び方から、ラルフ・ローレンのインタビュー記事なども掲載。ビンテージ・コレクターが自身のコレクションを紹介する動画など充実した内容となっている。またカレンダー機能を搭載し、新商品の発売日には通知が受け取れるシステムだ。この画期的なサービスは、実は日本のファンをモデルケースにしているという。


デイヴィッド 日本には、多くのコレクターが存在します。ビンテージのギターや、リーバイスのジーンズなど、アメリカンテイストなアイテムが大好き。 以前来日した際に、たまたまとある東京のお店に足運ぶと、かなりレアなビンテージのラルフ ローレンが店頭に並んでいて驚くと同時に、ここまで数多くのファンがいることを誇りに思った。この経験にヒントを得て、アプリケーションの「POLO」を開発した。アメリカではもう使えるようになっていて、日本でも1年後にはサービスを開始する予定だ。新しい商品に加えコレクタブルなビンテージのアイテムを買える、グローバルなサイトになる予定だ。このアプリの開発にあたっては日本のファンが大変大きな役割を果たした。

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すべての世代を視野に入れたモノづくり

編集部 ミレニアル世代の購買層を獲得するための、特別なプランはありますか?

デイヴィッド 我々独自の調査では、ミレニアルズに私たちの商品は非常に人気があることがわかった。我が社は、古き良きアメリカを体現しているから、若い世代に人気はないのではないかと考える人もいるが、どの競合他社のブランドよりも、ミレニアルズに人気があることがわかっている。現在の課題は、若い世代のユニフォームとも位置付けられるデニムラインをより充実させることだ。そして我が社のすばらしい点は、クロスジェネレーションに対応していることだ。子ども服が人気な一方で50年間ひいきにしてくれている購買層もいる。ファンの世代は多岐にわたりとてもユニークなものだ。ミレニアルズだけではなく、すべての世代に浸透するようなモノづくりを心がけたい。

編集部 日本人は、アメリカ人よりも、アメリカンファッションが好きだと言われていますが、それはどうしてだと思いますか?

デイヴィッド 日本の消費者は、とても洗練されている。センスが良く趣味の良さでは世界でいちばん進んだ国だろう。テクスチャーや色のコーディネーションがうまいので、アメリカのファッションをナチュラルに着こなし、採り入れているのだと思う。 私たちのブランドが日本に浸透していることを本当に誇りに感じる。私が初めて日本を訪れたのは12歳のときで、父と一緒だった。ファッションショーのための来日だったが、父が行くところには人だかりができ、父はまるでビートルズのメンバーのようだった。父の人気ぶりには驚いたが、さらに驚いたことは、人々がとても親切だったことだ。そしていつも父が作るものを愛してくれた。そのときの印象が、あまりにも鮮明なので、日本にはいつも特別な感情を抱いている。

編集部 今後のビジョンについて教えてください。

デイヴィッド 50周年のお祝いをしたばかりだが、この節目となる年に何ができるのかを考え、また過去を振り返るというプロセスはエキサイティングだった。ラルフ・ローレンのデザインはタイムレスだ。美しいプロダクトやスタイルは、すべてのジェネレーションに響く。これからも、すべての世代に受け入れられることを願っている。つい最近、ベースボールジャケットを発売した。50年前の商品を現代風にアップデートしたようなデザインのこの商品はたった1日で完売した。若い世代から熱烈な支持を受けたのだ。これには本当に驚いた。デザインの哲学、つまり野球や高品質のレザーに対する情熱は年配の世代にも若者世代にも共有されているということだ。みんな野球、アメリカ、そして何より高品質のプロダクトが大好きなのだ。我々は、そんな人々の思いを大切にするブランドでありたい。今後もこうした哲学を信じて、すべての人の心に届くプロダクトを提供していきたい。

デイヴィッド氏の自信作の「POLO」を早速ダウンロードしてみる。そこではブロンクス区で育ったラルフ・ローレンの幼いころや20代のころの写真を観ることができる。またスキーなど、アウトドア向けの商品の品ぞろえも豊富だ。いつの時代も、ラルフ・ローレンは、世界の向こう側を感じさせてくれる存在なのだろう。果てしない海や空、そしてファッションというものを通じて、世界に訴えかけるパワフルな姿勢がそこにはある。50周年という節目を迎えたラルフ ローレンにさらなる飛躍を期待したい。

DAVID LAUREN(デイヴィッド・ローレン)
1971年、ニューヨーク生まれ。ラルフ・ローレンの次男。2016年にチーフイノベーションオフィサーに就任。同社のウェブサイトの設立など、重要な役割を果たす。社内28ブランドのグローバルなキャンペーンを監修する。

RALPH LAUREN(ラルフ・ローレン)
1939年、ニューヨーク生まれ。1968年に自身の名を冠したブランドを設立。メンズに加え、1971年にはレディース・ラインも開始。1986年にはパリ路面店をオープンする。以後「ポロ スポーツ」や「RRL」など、多くのラインを発表する。

Text: Azumi Hasegawa

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