旬のおすすめ

この彼女(ひと)から、買いたい。
ビショップ 二子玉川店 中村早苗さん

2018.12.12

いであつし いであつし

この彼女(ひと)から、買いたい。<br>ビショップ 二子玉川店 中村早苗さん

いわゆる美魔女というのがどうにも好きになれない。よくテレビでやっている健康サプリか何かのCMで「この女性、何歳に見えます? ええ! 57歳!?」というのも大嫌い。

申し訳ないのだが、年相応に見られないことがそんなにもうれしいですかねぇ。筆者に言わせたら、せっせっとお金をかけて作り上げたまるでAIロボットの受付嬢みたいな人工的な容姿は、まったくもって魅力的でもなければ全然おしゃれにも見えない。

女性の美容トレンドに関してはまるでうとくて門外漢なのだが、どうもそういった若さだけをヨシとする幼稚な美意識は日本や韓国などアジアの女性たち特有のものに思える。もちろん、日本の女性にも女優の草笛光子さんやデザイナーの島田順子さんなどグレーヘアがすてきなおしゃれな人はいらっしゃいます。ただ、ニューヨークやパリやミラノなどの街を歩いていると、自然に年齢を重ねたおしゃれなマダムたちを普通に見かける。

例えば「アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー」という映画にもなった、NYセレブのアイリス・アプフェルさん。彼女は世界最高齢のファッションアイコンで、「シワがあるのがそんなにいけないことかしら。それは勲章のようなものよ」と、トレードマークのショートヘアに丸フレームのメガネでさらりと言ってのける、御年97歳になる実にチャーミングなNYマダムだ。

ほかにも、フランス人のジルダ・ロアエックさんと日本人の黒木理也さんが手掛けるフレンチアメリカンなスタイルが人気の「メゾンキツネ」。同ブランドがプロデュースしている青山や代官山にもある「カフェキツネ」のパリ店で、お店の看板マダムとして話題になっているのが石井庸子さんだ。フランス在住約45年の御年77歳。一人娘がメゾンキツネのジルダさんと結婚したことが縁で、カフェキツネで接客を任されて若いバリスタたちと一緒にお店に立って働いているのだそうだ。メゾンキツネをすてきに着こなしたグレーヘアと笑顔がチャーミングな彼女は、地元のパリジャンや観光客から大人気である。

実はここトーキョーにも、彼女たちに負けず劣らずのチャーミングでおしゃれですてきな女性がいる。二子玉川にある玉川タカシマヤの「ビショップ(Bshop)」の看板マダム、中村早苗さんだ。レディーに年齢を聞くのはなはだ失礼と思いながらもお尋ねすると、「全然平気。1950年生まれの今年で68歳よ」とさらりと言ってのける。いやはやなんとも格好いい。

早苗さんは週に3回、ビショップ 二子玉川店で接客をしている。ビショップの看板マダムの早苗さんが店頭にいる日は、近隣のおしゃれなニコタママダムたちや若いカップル客が彼女のファッションスタイルや丁寧な接客を目当てに、ひっきりなしに来店する。ショップの若いスタッフたちも、早苗さんからブランドの知識を教えてもらったり、こっそり着こなしを見てセンスを盗んだりしているとか。

400_TL_0623

ちなみにこの日の早苗さんの出勤スタイルは、グレーヘアを後ろでまとめたかわいいヘアスタイルに、手づくりの温かみのあるグリーンのフェルトのイヤリング。ビンテージのノルディックカーディガンにUSネイビーのミリタリーパンツを合わせて、首元には昔、パリのエミスフェールで買ったスカーフ。ビショップの黄色いソックスを合わせて履いている靴は、もう20年選手のウォークオーバーだ。

「とにかく洋服が大好きなの。古着屋さんを見て歩くのも大好き」と言う早苗さん。その着こなしのセンスやファッションに関する豊富な知識から、業界でかなりのすごいキャリアの持ち主かと思えば、意外にもそうではない。なんとビショップ玉川店で働く前までは、ずっと主婦だったのだ。

早苗さんのファッションキャリアのスタートは、「VAN」。20代のころはアイビーボーイにも負けないほどのアイビーガールでVANの服が大好きだったという。

「でもほら、私って小さいでしょ。だから当時はVANボーイズを着ていたの」

アイビーファッションが大好きで大好きで、早苗さんはVANヂャケットの採用試験を受ける。まだ当時はメンズショップに女性の販売員などいない時代。それでもVANの仕事をしたくて、できたばかりの青山の本社でお茶くみ係でもいいからと入社したのだ。

そしてここで出会ったのが、ご主人の中村隆一さんである。服好き、ショップ好きな方ならば、この名前をご存じかと思う。そう、VANヂャケット→ハリウッドランチマーケット→スーパーボール→エミスフェール→ル・グローブ→アナトミカと名だたる名店の創生期に店頭に立ってきたショップ界のレジェンドである。80年代に中村さんから接客を受けている筆者のような世代にとっては、いまでもメンズスタイルのアイドル的存在であります。

「ありがとう(笑)。中村はいまもすてきで格好いいわよ。私ね、日本の40~50代って男性の方がまだ男を捨ててないと思う。女性のほうが女を捨てている人が多いわよね。年を取ったらラクに逃げたらダメよ。お客さんにお店で服を薦めるときも、着るときは着にくいかもしれないけれども見た目はそのほうが絶対いいっていつも言うの」

ちなみに、早苗さんの理想の男性のファショッンスタイルは「幾つになっても、ツバを曲げてかぶるアメリカ製のベースボールキャップが似合う人」。それって、ご主人の中村隆一さんじゃないですか。ごちそうさま♡

400_TL_0529

「今年は大きめのサイズを着たほうがかわいいわよね」。お手本は映画「愛の狩人」のジャック・ニコルソンの着こなし。オーシバルのダッフルコート レディース¥49,000、メンズ¥53,000

400_TL_0534

「女性はビックサイズで着るのがお薦めかしら」。通常のサイズのほかにも今年はビッグサイズも取りそろえているビショップの定番アイテム。ル トリコチュールのガンジーニット 34・36(レディース)¥19,800、38・40・42(メンズ)¥19,800、48・50(ユニセックス)¥21,800

400_TL_0545

「今日も履いてるけど、きれいな色のソックスはおしゃれには大事」。冬の着こなしのアクセントにもなる。カプリコーンモヘアソックスのソックス各¥2,300

掲載した商品はすべて税抜き価格です。

【その他のアイテムはコチラからご覧いただけます】

プロフィル
いであつし(いで・あつし)
数々の雑誌や広告で活躍するコラムニスト。綿谷画伯とのコンビによる共著『“ナウ”のトリセツ いであつし&綿谷画伯の勝手な流行事典 長い?短い?“イマどき”の賞味期限』(世界文化社)などで、業界関係者にファンが多い。

>>この彼女(ひと)から買いたい。[第2回] ナイジェル・ケーボン ウーマンはこちら

Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Atsushi Ide

買えるアエラスタイルマガジン
AERA STYLE MARKET

装いアイテム

おすすめアイテム

あなたへのおすすめ

トレンド記事

  1. 華麗なる町田啓太。<br>アジアの次世代スポット「インスパイア」で、非日常を遊ぶ。

    華麗なる町田啓太。
    アジアの次世代スポット「インスパイア」で、非日常を遊ぶ。

    特別インタビュー

    2024.03.18

  2. ジーユーのスーツ<br>ビジネスからセレモニーまで。<br>アンダー3万円で探すコスパ抜群なスーツ

    ジーユーのスーツ
    ビジネスからセレモニーまで。
    アンダー3万円で探すコスパ抜群なスーツ

    スーツ

    2024.03.11

  3. 町田啓太さんの掲載カット先行公開第二弾!<br>アエラスタイルマガジン春夏号は3月25日(月)発売!

    町田啓太さんの掲載カット先行公開第二弾!
    アエラスタイルマガジン春夏号は3月25日(月)発売!

    週末の過ごし方

    2024.03.11

  4. スノーピークのおすすめ。<br>今年のお花見が劇的に充実する、便利ギア&グッズ4選。

    スノーピークのおすすめ。
    今年のお花見が劇的に充実する、便利ギア&グッズ4選。

    週末の過ごし方

    2024.03.06

  5. ZENITH(ゼニス)<br>【男前な、腕時計とスーツ。】

    ZENITH(ゼニス)
    【男前な、腕時計とスーツ。】

    腕時計

    2024.03.12

紳士の雑学