旅と暮らし

スティングとの活動でよく知られる名ギタリストが
ECMからの2作目を携えて、バンドで来日。

2019.02.13

写真・図版 内本順一

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今年は1969年にドイツで誕生した名門レーベル「ECM」が創立50周年を迎える年。それを記念して、丸の内コットンクラブでは1月から<ECM Artist in concert 2019>と題されたライブ・シリーズが開催されている。初回はマルチン・ヴァシレフスキ・トリオが出演したが、その第2弾として行われるのがドミニク・ミラーの“THE ABSINTHE TOUR“だ。

2017年にECMに移籍しての第1弾作品『サイレント・ナイト』を発表したドミニク・ミラー。そのアルバムはエグベルト・ジスモンチ、パット・メセニー、バーデン・パウエル、バート・ヤンシュといったギタリストへのオマージュを表現したソロ・ギター中心のもので、“ECMならでは”と言える内容だったが、そこから約2年ぶりとなるECMでの第2弾作品が、31日にリリースされる『アブサン』。

コットンクラブでの公演は228日から33日までの4日間行なわれ、(CD派の人も228日にはフライングゲット可能と考えれば)まさに新作を聴くのと同タイミングでその実演版を体感できるのが嬉しいところだ。

改めて紹介しておくと、ドミニク・ミラーはアルゼンチン、ブエノスアイレス生まれのギタリスト。父親がアメリカ人、母親はアイルランド人で、ドミニクは10歳までアルゼンチンで過ごし、後にアメリカのウィスコンシン州、そしてイギリスはロンドンに移住した(現在は南フランス在住)

ギターは幼少の頃に姉から教わり、15歳から先生について本格的にクラシックギターを学ぶことに。そしてバークリー音楽大学へと進み、19歳の頃にはブラジルで名手セバスチャン・タパジョスからギターを学んだりもした。プロのギタリストとしてロンドンを拠点に仕事するようになったのは80年代に入ってからで、活動初期には筆者も大好きだったワールド・パーティー(奇才カール・ウォーリンガーのソロ的なプロジェクト。日本での知名度は低いものの熱心なファンが少なくない)のライブやレコーディングに参加。ジュリア・フォーダムの初来日公演でギターを弾いていたのも若きドミニクだった(ジュリアの初期代表作『ポースレイン(邦題:微笑にふれて)』はドミニクが多大に貢献。同作にはドラムのマヌ・カチェも参加)

80年代の終わりにはフィル・コリンズと出会い、大ヒット曲「アナザー・デイ・イン・パラダイス」でアコースティック・ギターを弾いたりも。そんなフィルとの仕事が評価され、それがきっかけでスティングのバンドでプレイするようになった。

ポール・サイモン、ティナ・ターナー、ブライアン・アダムス、レナード・コーエン、ザ・チーフタンズ、ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴなどなど、これまでジャンルを越えて数多くのアーティストと共演してきたドミニクだが、やはり最も重要かつ有名なのは91年作品『ソウル・ケージ』から始まったスティングとの活動だろう。

スティングの作品を聴いて、または来日公演を観て、ドミニク・ミラーのことを知った(注目した)人は圧倒的に多いはずだ。譬えスティングの音楽をあまり聴いてこなかったという人でも、映画『レオン』で流れた名曲「シェイプ・オブ・マイ・ハート」のイントロのギターリフは耳に残っているはず(後にNas、モニカ、マイケル・ジャクソンらがそのリフを自曲に用いた)。同曲の(スティングとの)共作者でもあるドミニクのそのギターリフは、言うなれば彼のシグネチャー・サウンド。要するにあのような繊細な音色を奏でるギタリストがドミニク・ミラーなのだ……と言えばわかりやすいだろう。

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2年ぶりの新作『アブサン』は
印象派への豊かなオマージュ

そんな彼の新作『アブサン』は通算12枚目。約1年前にフランスで、3日間で録音されたアルバムだ。レーベルからの資料にはドミニクのこんな言葉が載っている。「禁断の酒、アブサン。強いアルコール、激しい二日酔い、そして南フランスの強い日差しと強い風。それらは多くの印象派アーティストたちを狂気へと駆り立てたに違いない……」。

つまりこれは、印象派アーティストたちへのオマージュというわけだ。この作品に限ったことじゃないが、確かにドミニクは音で絵を描いているよう。それは静謐で、繊細で、例えば水彩画のようにも感じられたりするが、しかし静けさのなかにもダイナミックに絵筆が走っているような瞬間があったりするし、美しいだけじゃなく危険なタッチになったりもする。そしてまさしく印象派の絵画のように、空間と時間による光の変化が音に表われ、ときに斬新なアングルからの切り込みが見えたりもする。

このアルバムにはドミニクの旧知の仲でスティングのバンドでも共に長く演奏してきたドラムのマヌ・カチェ、前回の来日公演でも評判の高かったベースのニコラス・フィッツマン、レベル42のキーボード奏者マイク・リンダップ、それにバンドネオン奏者のサンティアゴ・アリアス(フォルクローレのデュオ、アリアス・カストロのひとり)が参加。バンドサウンドならではの有機性だったりスリルだったりも感じられ、引き込まれずにはいられない。

このアルバムを携えての今回のコットンクラブ公演には、レコーディングに参加したマイク・リンダップ、ニコラス・フィッツマン、サンティアゴ・アリアスがそのまま同行。ドラムだけはマヌ・カチェじゃなくイスラエルのジブ・ラヴィッツだが、5人が一体となって恐らく新作『アブサン』の色彩豊かな世界をそのままに近い形で立ち現せてくれるはずだ。わけてもドミニクのギターとサンティアゴ・アリアスのバンドネオンの掛け合い・重なり合いは心に強く響くものとなるだろう。今からとても楽しみだ。

プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。Note(ノート) でライブ日記などを更新中。

公演情報
DOMINIC MILLER “THE ABSINTHE TOUR”
ドミニク・ミラー “ジ・アブサン・ツアー”

公演日/2019年2月28日(木)~3月3日(日)
会場/COTTON CLUB
所在地/〒100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2階
問/03-3215-1555

その他詳細についてはオフィシャルウェブサイトにて

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