旅と暮らし

仕事帰りに、落語のススメ。【後編】

2019.07.19

仕事帰りに、落語のススメ。【後編】

今、落語がブームである。ある人は、寄席は仕事帰りのビジネスマンのユートピアと言う。ある人は、寄席が心のオアシスとも評する。働く大人を魅了する、大人のたしなみ。いざ、毎日が楽しくなる落語の世界へ。

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【二十時三十分】
いよいよトリの柳家花緑師匠の登場だ。昼夜それぞれの部の最後を飾るのがトリ(主任)の落語家。このトリをお目当てに入場する客が多いので「待ってました」の掛け声がかかる。ホールなどの独演会に通うファンも、寄席のトリで贔屓(ひいき)の落語家の噺を聴くのは格別の楽しみ。寄席の木戸にはトリの花緑の名前を染め抜いた幟(のぼり)が興行中の10日間はためく。市で仕入れた汚い太鼓が殿に買いあげられるまでの夫婦のドタバタを描く『火焔太鼓』で客席は大爆笑だ。

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柳家花緑師匠
スピード感あふれる歯切れのいい語り口が人気で、古典落語はもとより、劇作家などによる新作落語にも意欲的に取り組んでいる。着物と座布団という古典落語の伝統を守りつつも、近年では新作落語や47都道府県落語を洋服と椅子という現代スタイルで公演する『同時代落語』に取り組んでおり、落語の新しい未来を切り開く旗手として注目の存在。
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【二十一時五分】
たっぷりと『火焔太鼓』を聴いて夜の部は御開き。追い出しの太鼓と「ありがとーうございましたぁ」という前座さんたちの声に背中を押されて外へ出ると、すごい人の列。このあと9時半から始まる「ロケット団」という人気漫才コンビの公演だ。このほかにも土曜恒例の二つ目の若手落語家たちが奮闘する料金1000円の「深夜寄席」は人気で毎週長蛇の列が。終演は11時。寄席は今やすっかりナイトライフスポットのひとつでもある。

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スーツ¥55,000、シャツ¥11,000、タイ¥12,000、チーフ¥4,500/すべて五大陸(オンワード樫山 お客様相談室 03-5476-5811)、眼鏡¥50,000/アイヴァン 7285(アイヴァン7285 トウキョウ 03-3409-7285)、シューズ¥76,000/クロケット & ジョーンズ(エストネーション 0120-503-971)、バッグ¥57,000/エルゴポック(キヨモト NC事業部 03-5843-9011)、時計¥290,000 / タグ・ホイヤー(LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー 03-5635-7054

自分好みの落語家を見つける

人気と実力でチケットがすぐに完売となる落語家は多い。寄席には出演しない立川志の輔、談春、志らく。三遊亭兼好。古典・新作の両刀で絶大な人気を誇る柳家喬太郎など。まずは若手人気実力派の面々から聴きはじめるのがオススメだ。

【単独公演はソールドアウト。注目の真打3人】

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    桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)/1968年、鹿児島県生まれ。92年、五街道雲助に入門。前座名はたご。95年、喜助で二つ目、2005年3代桃月庵白酒を襲名し真打。落語協会所属。
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    柳家三三(やなぎやさんざ)/1974年、神奈川県小田原市生まれ。93年、柳家小三治に入門。前座名小多け、96年、三三で二つ目。2006年真打に昇進。落語協会所属。写真/橘 蓮二
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    春風亭一之輔(しゅんぷうていいちのすけ)/1978年、千葉県野田市生まれ。2001年、春風亭一朝に入門、朝佐久。04年、一之輔で二つ目。12年真打に。落語協会所属。写真/キッチンミノル

【毒を盛られた端正な古典落語】
(左)桃月庵白酒
演芸評論家・広瀬和生氏の「羊の皮をかぶった狼のような落語」という高座評が有名だが、確かで端正な古典落語のなかに強烈な皮肉や現代的ギャグが盛り込まれ大爆笑させられる。登場人物をやゆする毒のある独特の表現にはまるが、あくまでも語り口は美しい古典口調だ。

【本寸法落語のトップランナー】
(中)柳家三三
師匠の人国宝・柳家小三治譲りの本格的古典落語を聴かせる“若手”トップ。爆笑落語から怪談噺、芝居噺まで本寸法の落語という古典芸能を堪能させてくれる力量には往年の落語ファンまで詰めかける。落語が耳で楽しむ小説でもあることを実感させてくれる高座だ。

【日々進化していく古典落語】
(右)春風亭一之輔
正統な古典落語に痛烈なギャグや毒を盛り込み、現代の笑いに進化させていく落語に老若男女のファンが魅了されている。刮目(かつもく)すべきは、同じ古典演目が投入してくるギャグなどで日々進化していくことで、追っかけのファンまで毎回うならせている。

【見逃せない注目二つ目落語家3人】

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    瀧川鯉八(たきがわこいはち)/1981年、鹿児島県生まれ。2006年、瀧川鯉昇に入門。前座名鯉八。10年、二つ目に昇進。20年5月真打昇進予定。落語芸術協会所属。写真/武藤奈緒美
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    三遊亭わん丈(さんゆうていわんじょう)/1982年、滋賀県大津市生まれ。2011年、三遊亭円丈に入門、前座名わん丈。16年、二つ目に昇進。落語協会所属。写真/橘 蓮二
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    桂宮治(かつらみやじ)/1976年、東京都品川区生まれ。セールスなどの社会人体験を経て2008年、桂伸治に入門、前座名宮治。12年、二つ目に昇進。落語芸術協会所属。

【摩訶不思議ワールド落語】
(左)瀧川鯉八
古典の名手として人気の高い瀧川鯉昇を師匠にもちながら、新作落語で独自のユニークな世界観を築いている。落語そのものに苦手意識がある人にはぜひお薦めしたい。ぶっ飛んだアブノーマルでシュールな爆笑落語は、落語という話芸の懐と底力を見せてくれる。

【古典・新作両輪のパワフル落語】
(中)三遊亭わん丈
新作落語界の重鎮にしてレジェンドである三遊亭円丈に入門し鍛えられた新作落語の創作力が、古典に磨きと拍車をかけている。エンターテイナーとしての意識が高いエネルギッシュな高座は、特に落語初心者に人気が高い。新作にも古典にも全力投球する姿がいい。

【令和の爆笑王となる落語】
(右)桂宮治
令和の爆笑王の異名をとるのはこの人で間違いない。元超人気のセールスマンからの転身らしく、人をそらせないサービス精神に尋常でない明るさとにぎやかさ。老人が涙を拭きながら笑い転げる隣で子どもも腹を抱える。落ち込んでいる人も“宮治落語”が直してくれる。

「アエラスタイルマガジンVOL.43 SUMMER 2019」より転載

Photograph:Kentaro Kase
Styling:Akihiro Mizumoto
Hair&Make-up:Masakazu Igarashi(Aster)
Text:Komi Morita

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