紳士の雑学

イギリス製(ブリティッシュ)スーツの特徴とは?(スーツの基本 第9回)

2019.07.23

現代のスーツには大きく分けて3つの潮流がありますが、なかでも英国式のスーツに注目が集まっています。そもそもイギリスはスーツ発祥国としても知られ、クラシコイタリア、アメリカントラッドといった他の基本形にも大きな影響を与えてきました。そこで今回は、スーツの源流ともいうべきブリティッシュスタイルについて学んでいきましょう。

<<スーツ基本のき 第1回はこちら

ブリティッシュスタイルの魅力とは

「英国紳士」という言葉があるように、世界中の大人にとって英国のスーツスタイルは手本となる存在。パターン、シルエットのほか、細かなディテールによってクラシカルで格式高いイメージがもたらされます。そんな特有のダンディズムを体現するブリティッシュスタイルですが、「クラシック回帰」のトレンドもあって若い世代からも支持を集めるように。古臭いというイメージを一掃しつつ、以下のような特徴をうまく取り入れた一着は、まさに大人の勝負服となり得るでしょう。

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<特徴①立体感のあるデザイン>
鎧のようなスーツ。ブリティッシュスタイルを表現する際に頻出するフレーズです。つまりは、立体的で構築的なパターン&シルエットのジャケットを重厚な鎧に例えたもの。しっかりとパッドが入った肩は袖山の出たラインを描き、これは「コンケープショルダー」と呼ばれます。

ウエストにはシェイプを入れ、メリハリのきいたビジュアルに。肩から胸、背にかけて布のたるみが見られ、それが優雅なドレープを描くのもポイント。ところどころに取り入れられた凹凸のあるデザインが、着用者のダンディズムを高めてくれます。

<特徴②ジャストフィットの精神>
身体のラインを強調したかのようなシルエットが威厳たっぷりのブリティッシュスタイルですが、サイズはすべてジャストが基本となります。身体にしっかりフィットさせつつ、特有のデザインで立体的な美しいビジュアルを形作っていくのです。逆に言えば、サイズが合っていないスーツではせっかくの計算し尽くされたシルエットが崩れ、野暮な印象になってしまうのです。

さらに言えば、イギリス国内ではスーツは本来オーダーメイド前提のアイテムですから、サイズが合っていないスーツは論外となります。これはパンツも同様で、だからこそベルトレスのパンツが主流。いずれにせよ、スーツ発祥の国のジャストフィットの精神は今も確実に根付いているのです。

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<特徴③ディテールで感じる乗馬の名残>
全体のパターンやシルエットバランスだけでなく、要所に散りばめられた実用的なディテールも、ブリティッシュスタイルを表現するアイコンとなっています。例えばジャケットのポケット。写真のようにまっすぐではなく斜めにカットされた切り込みポケットは「スラントポケット」と呼ばれますが、実は乗馬がルーツ。前傾姿勢で馬に乗る際も中の物が落ちにくく設計されているのです。英国において、乗馬は古くから紳士のたしなみ。紳士服たるスーツにその名残を残すのは、いたって自然な流れと言えます。

また、スーツの後ろ姿を決定づけるベントも、その誕生は乗馬から。馬に跨りやすいようセンターベントが生まれ、その後、馬上で剣を佩きやすいようサイドベンツに派生したと言われています。こと現在のブリティッシュスタイルでは、エレガントなサイドベンツが多く見られるようです。

生地からもわかる重厚感

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先述した「鎧のようなスーツ」という言葉には、固くて重厚感があることも含まれます。その大きな要因となるのが、英国ならではの生地です。寒い日の多い英国ならではの生地は、総じて厚め。ハリやコシが強いためシワになりにくく、堅牢なものが多く見られます。

スーツ発祥国だけあり老舗ミルが多いのも特徴で、彼らの作る暖かな生地は秋冬用のスーツ素材として一級品です。例えば写真左のようなフランネルは、1772年創業のフォックスブラザーズが名門として知られています。写真右はツイード。こちらはハリスツイードなどが有名です。いずれにせよ、シックな色合いと独特な重厚感を持つ英国の生地は、ブリティッシュスタイルを形成するうえで必須の存在と言えるでしょう。

まとめ

①クラシックなブリティッシュスタイルがスーツの源流。

②構築的なディテールを備え、シルエットは立体的。

③暑くて固い生地も特徴で、ゆえに”鎧のようなスーツ”と称される。

イタリアンスタイルのスーツの特徴とは?

Edit:Naoki Masuyama,Masashi Takamura
Text:Naoki Masuyama

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