旅と暮らし

クリスマスシーズンに行くオランダの地方都市が面白い!
後編:リノベーション物件に感心したのち、
クリスマスモードを一気に上げる

2019.10.11

写真・図版 大石智子

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水道塔ホテルは近隣住民がうらやましくなる空間だった

オランダ南部を後にし、スケジュール後半は北部の都市へ。巡ったのは、ドルトレヒト、ゴーダ、ライデン。南部だけでも刺激的だったけれど、北部も期待を裏切らなかった。まずホテルが前編の元刑務所ホテルに劣らず面白い。ドルトレヒトでチェックインしたのは、元水道塔ホテル「Villa Augustus(ヴィラ アウグストゥス)」だ。

リノベーション建築大国オランダでは、利用されなくなった施設が次々とホテルに生まれ変わっている。刑務所や水道塔だけでなく、銀行、郵便局、新聞社etc.時代の変化とともに運営されなくなった場所である。例えば、オンラインで対処できることが増えたいま、銀行や郵便局の窓口はニーズが激減。金庫や私書箱を生かした個性豊かなホテルになっていたりする。

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塔最上部はスイートルーム!

さて、「Villa Augustus」は1800年代の水道塔をリノベしたホテル。いまとなってはなじみが薄いが、水道塔とは建物上部にタンクを設け、重力による水圧で各家庭に給水していた場所だ。そう聞いただけで、よほど屈強な建物だと想像していたところ、実物はちょっとメルヘンなレンガ造り。四角い塔の中には37の客室とレストラン、マーケットを備え、庭の美しさも評判である。

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    川に浮かぶ計8室の「The Floating Rooms」。
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    ぶら下がった電気のヒモの先には水鉄砲。オランダのインテリアは随所にユーモアがある。

さまざまなタイプの客室があるが、泊まったのは水上のボートハウス! 部屋に入ると、まさに船の上にいる気分となった。価格はボートハウスで1泊155ユーロからと手頃。塔のてっぺんにあるスイートルーム「The Lantern Room」でも1泊210ユーロからで、空いていればぜひお試しいただきたい。どの国でも地方都市のほうがホテルは安いが、オランダはそれが顕著である。

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    「The Lantern Room」は最上部のため部屋の屋根が円柱型になっていた。
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    「The Lantern Room」の階段を登ると、そこはドルトレヒトの街を一望する360度ガラスの部屋。

余談だが、オランダのホテルはメディアやインフルエンサーだからといってディスカウントするホテルがとても少なく、バーターを必要としていないらしい。それもまたオランダらしい好きなところ。“いいものは自然と人を呼ぶから、いいものを作ればいいだけじゃないか”といったスタンスを感じるのだ。そして、高級にせず利用者を増やし、結果、口コミで情報は広がっていく。私が言うのもなんだが、理にかなっている。

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レストランは朝7時から夜12時まで営業する街のオールデイダイニング!

かつてはポンプ室だった場所がいまはレストランになっている。料理には庭で採れた野菜を使い、肉や魚は薪オーブンで焼く。終日営業で席数が200と多いため、宿泊客に限らず街の老若男女でにぎわいとても楽なムードだ。かつ内装がとてもかわいらしく、席の種類も多いのでデートにもグループ飲みにも使える。ショップではかわいい雑貨のほかに採れたて野菜や焼きたてパンも並び、まさに地域に根付いた空間。

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    朝食ビュッフェで自家栽培の野菜を食べられるのがうれしい。パンも自分たちのベーカリーから。
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    マーケット内にはカフェもあり、地元の人がのんびりくつろぐ姿がよく見られた。
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    ショップではオリジナルの雑貨や本、ホテルが選んだアーティストによるグッズを販売。
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    焼きたてパンのほかに自家製ケーキやクッキーも並ぶ。

ドルトレヒトの素晴らしきカルチャー支援

「Villa Augustus」から徒歩10分ほどの場所に、もうひとつユニークなリノベーション物件があるのでそこにも足を延ばしてみよう。それは「Energiehuis(エナジーハウス)」という名の施設で元は1905年に建てられた発電所。2013年に改築を完了し、レストラン、劇場、ライブハウス、会議室、音楽の練習室、DJルームなどを備えるカルチャーセンターとしてよみがえった。

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大きなマシンを設置していた発電所だったため、天井高が非常に高い。

市が助成しているカルチャーセンターとあって、驚くのがその使用料の安さ。例えばバンドの練習部屋は1時間7.5ユーロ! 100名入れるライブハウスは照明も音響も自由に使えて、利用者も観客もなんと無料! ドリンク代のみを払えば気軽に楽しめるシステムになっているのだ。なぜなら、若者も多く利用する施設であり、彼らがお金の心配なしに音楽や芸術に打ち込めるようにするため。

「ここで練習して、そして有名になって戻ってライブをしてくれたらいいですね」とは施設関係者談。ちなみにオランダといえばEDM最強国。DJのトップランキングを見ても半数以上がオランダ出身者で、子どものときから音楽に親しみDJで遊ぶことのできる環境が要因とも言われている。

また、ここで興味深かった取り組みのひとつが、朝日と夕日がきれいに見える部屋の解放。朝夕それぞれ1組限定で1時間部屋を貸し、スマホの持ち込みは厳禁。利用者はその際の時間を文章に表し、ゆくゆくは1冊の本にまとめるとか。SNS全盛のこの時代に、すべて逆行するアイデアが面白い。

遊びも仕事もハイテク化が進むいまだからこそ、芸術支援にいっそう力を入れるオランダ。豊かな感性を財産と考え、それを育てるのは、地方都市の発展にとっても好循環だろう。

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    こちらが1時間7.5ユーロの練習部屋。HPから誰でも予約できるがオランダ語のみ。
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    各種ダンススクールも開かれ、この日はフランメンコのレッスンが行われていた。
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    ライブハウスの前に設置されていた冗談のようで真面目なポスト。WAPENS(武器)とDRUGS(薬物)の回収箱で、いたって健全なのだ。
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    1階にあるカフェ&レストラン。コーヒー1杯でも利用できる憩いの場所。

北部の街でクリスマスを見るなら、まずゴーダへ!

次の都市ゴーダでは、これからの季節の本題であるクリスマスのお楽しみを紹介。オランダ北部で有名なクリスマスイベントといえば、“Gouda by Candlelight”というイベント。言わずと知れたゴーダチーズの名産地は、12月に華やかな盛り上がりを見せる場所でもあるのだ。

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中央広場に飾られたクリスマスツリーと、キャンドルがともる市庁舎。市庁舎は15世紀中旬に建てられたゴシック様式。

今年のハイライトは12月13日に中央広場にて行われる。通常つけられている電灯が消され、代わりに広場を囲む建物の窓際にキャンドルがともされる。そして市長のあいさつのあと、中央に置かれた巨大クリスマスツリーのライトを点灯。そんな幻想的な光のなか、聖歌隊がクリスマスキャロルを歌い、続いて人気歌手のライブも開催。キャンドルはゴーダの特産品でもあるため、光の美しさにはことさらこだわりがあるのだ。

キャンドルライトは19時以降なので、それまでは聖ヤン教会の中のクリスマスマーケットを訪問するのが定番だ。

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16世紀に完成した聖ヤン教会はオランダ最大規模の広さを誇る教会。

荘厳な柱が並びステンドグラスが美しい教会の奥行きは123mと国内最長。そこに100軒近い出店が並び、クリスマスグッズや食品、日用品を売る。イートインスペースもあるので、街歩きで冷えた身体をホットワインやスープで温めることもできる。

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    外が寒いので雑貨店では毛糸のマフラーや手袋、帽子がよく売れている。
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    大盛況でどんどん野菜を入れ足すスープ屋。

そして、イベントの前後にやっぱり行きたいのはゴーダチーズ専門店。「’t Kaaswinkeltje(ヘット・カースウィンケルチェ)」は旧市街にあるチーズ屋で、ゴーダ近郊の農家が伝統製法により作ったチーズが豊富にそろう店。店に入るとずらり並ぶ巨大なゴーダチーズにテンションが上がる。

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量り売りするチーズは試食も充実。

お菓子でおすすめのゴーダ土産は、ストロープワッフル専門店「Kamphuisen Stroopwafel(カンプハウゼン・ストロープワーフル)」。ゴーダ発祥のストロープワッフルは甘い生地の間にシロップを挟んだもので、これがコーヒーのお供に最高なのだ。ホットコーヒーのカップの上にワッフルをのせ、シロップを溶かしてから味わうのが通例。

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個人的にはこのままサクサクのワッフルを食べるのが好き。

いくつか食べたなかでもダントツでおいしかったのが、「Kamphuisen Stroopwafel」であり、さすがは1810年から続く老舗。ワッフル工場の見学もできてカフェも併設するので、ここで1時間は過ごせる。たまにコーヒーを飲むと思い出すほど気に入り、誰か日本に仕入れてくれないかなと思うが賞味期限が早いので難しいだろう。そんな賞味期限の早さもまたおいしさの理由。

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    ランチを食べた「LF Gouda」は内装が面白いレストランのひとつで12月は完全クリスマス仕様となる。料理はカフェ的。
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    ゴーダはアムステルダムの水路の玄関口となる水路が作られた街で、中世からビールの名産地としても知られる。

旅の締めはライデンのクリスマスマーケット!

最後にライデンのクリスマスマーケットを紹介。ライデンはアムステルダムから鉄道で約30分の所に位置し、海に近く88もの運河が流れているため“水の都”と呼ばれている。また、オランダ最古の大学もある学問の都市で、シーボルトが住んでいた街でもあり、さらに2000以上の史跡が点在。そのせいか知的で落ち着いたムードが漂うライデンは、もしもアムステルダム勤務だとしても、ライデンに住みたいと想像してしまうほどほっとできる街だ。

そんなライデンのクリスマスマーケットは、運河の上に設置される。

あまりに広く安定感があるので水の上だということを忘れてしまうが、端に行けば1歩先は運河という不思議な世界。そして大都会に近づいているからかいまどきな若者の姿もちらほら見られ、サンタのコスプレをしたインスタグラマーにも遭遇。

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    美女サンタの装いも三者三様!
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    『ブリジット・ジョーンズの日記』でコリン・ファースが着ていたようなセーターがたくさん売られている。
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    全般的にライデンのクリスマスマーケットの露天はノリがよい。
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    クリスマスらしい音楽を演奏するライブがスタート!

そうして日帰りでライデンを楽しみアムステルダムから出国。今回はリノベーション建築とクリスマスが主なテーマだったけれど、その旅のなかで想像外の発見があったのも収穫だ。ざっくり言うと、オランダの社会のシステムにはまってしまった。

旅をするだけでも具体例は伝わってくるのもので、リノベーション建築にしてもかつての美しい建物を継承し、現代のコミュニティに生かすセンスが秀逸。また、環境保護や動物愛護の先進国でもあるので、そういった点でもはっとさせられることは多く、もっと知りたいと思う。例えばKLMの環境保護への取り組みはとても具体的で大胆なものだ(気になる人はぜひHPをチェック)。

というわけで、今年の年末に再訪を検討中。再びクリスマスのムードを感じながら、効率的でちょっとユーモアの利いたオランダの暮らしを垣間見たいと考えている。

オランダ政府観光局
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プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。SDエイバルファン。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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