旅と暮らし

デビュー20周年を記念して、オールタイム・ベストで魅了する夜。
「20年はあっという間。でも密度は濃かった」。birdインタビュー。

2019.10.21

内本順一 内本順一

デビュー20周年を記念して、オールタイム・ベストで魅了する夜。<br> 「20年はあっという間。でも密度は濃かった」。birdインタビュー。

デビュー20周年を迎えたbirdのスペシャル・ライブが間近に迫ってきた。東京は10月30日(水)、Billboard Live TOKYO。大阪は11月11日(月)、Billboard Live OSAKA。birdは今年の4月にもBillboard Liveで〈bird “波形” Live !〉と題した公演を行っていて、それは11作目『波形』の曲をアルバムの順番どおりに演奏するというものだったが、今回は7月にリリースされた20周年記念のオールタイム・ベストアルバム『bird 20th Anniversary Best』を携えてのもの。つまりみんなの聴きたい名曲・代表曲ばかりで構成されたライブになるはずで、しばらくbirdのライブを観ていなかったという人にも「ぜひ」とおすすめしたい。

デビュー20周年ということで、ここで改めてこれまでの道のりを振り返っておこう。京都出身のbirdがデビューしたのは、1999年3月。大沢伸一がソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ内に立ちあげたレーベル「RealEyes」からシングル「SOULS」をリリースしたのがキャリアの始まりだった。

「大沢さんと初めてお会いしたのは、大学を卒業して大阪の飲食店で歌っていたときでした。私はその前に3カ月くらいニューヨークに行っていて、それまでは洋楽のいろんな楽曲をカバーして歌っていたんですけど、自分の言葉で歌わなくちゃダメだという気持ちになって帰ってきたんです。大沢さんも当時、日本語の楽曲をプロデュースしたいということを言っていて、そこでお互いのやりたいことが合ったのが始まりでしたね。で、初めて自分で作詞したものを大沢さんに聴いていただいたら、“形にはなってないけど、ええやん”と言ってもらえて。それで、“よし、自分で詞を書いてやってみよう”ってハッキリと思えたんです」

「大学のときは70年代のソウルやポップスが好きで、アレサ・フランクリンとかジャニス・ジョプリンとかキャロル・キングといった人たちのスタイルや歌い回しをコピーしながら練習していたんです。だけど大沢さんから、“これからは日本語で歌っていくんだから、一度そういう自分の癖みたいなものをフラットにしてください”と言われて。あのときにそうする努力をしたことで、その後いろんな方たちと音作りをするときに柔軟でいられるようになった。最初に大沢さんにそう言ってもらえたのは、いま思い返してみてもすごくありがたかったですね」

そんななかで生まれたデビュー曲の「SOULS」は、いまでもライブで歌われることの多いbirdの代表曲のひとつだ。

「“SOULS”を歌うと、みなさんが一緒に歌ってくださるので、20年前の曲ですけど、ずっと生きつづけているなって感じるんです。それに歌っても歌っても先があるというか、どんどん違う姿を見せてくれる曲でもあるんですよ」

その「SOULS」や、やはりライブで歌われることの多い2ndシングル「BEATS」を収録した1stアルバム『bird』は、70万枚以上のセールスを記録。birdは次々にシングルを発表し、初めてのツアーを行い、休むことなく2000年11月には2ndアルバム『MINDTRAVEL』を発表した。

「最もめまぐるしい時期でしたね。1stアルバムは1年くらいかけて作ったんですけど、2ndアルバムは短い時間で詰めて制作して。大沢さんもMONDO GROSSOの作品を制作しながらだったし、いろんなことが同時進行で動いていくなか、ギリギリで完成させたんです。でもそういう意味での勢いも感じられるアルバムかもしれない」

そして2002年3月に発表した3rdアルバム『極上ハイブリッド』では、大沢伸一とレーベル「RealEyes」からの“巣立ち”をし、初めて自身でトータル・プロデュース。山崎まさよし、ピアニカ前田、ツアー・メンバーでもあった田中義人やGENTAらとコラボレーションしながら、脱クラブミュージック的な作品を作り上げて世界を広げた。

「せっかく音楽をやっているからには、もっといろんな人と一緒にやってみたい。そういう純粋な気持ちから大沢さんと離れて、曲ごとにいろんな方とやってみたんです。だから、ワクワク感と不安が入り交じったアルバムでしたね。1枚目と2枚目は大沢さんがトータルでプロデュースしてくれたので、私は歌うことに集中すればよかったんですけど、このアルバムで初めて歌のジャッジをして、どのテイクがいいのか自分で決めることをした。自分に問うということをたくさんしたアルバムでした。それはすごく大きな経験だったし、それだけに忘れられない作品でもありますね」

「時代に合った音楽かどうかはあまり考えてないんです。
自分のペースで、やってみたいことをやってきただけ」

2003年10月発表の4thアルバム『DOUBLE CHANCE』では、ジェシー・ハリス、イヴァン・リンス、永積タカシ、川口大輔ほか、3作目よりもさらに多彩な作家陣を招き、プロデュースを田島貴男(オリジナル・ラブ)が担当。バラエティーに富んだ楽曲で、ボーカリストとしての才能を明確に示してみせた。そして2004年9月発売の5thアルバムは、初のトータル・コンセプト作品となった『vacation』。架空のリゾート・プラネットで過ごす一日をテーマに作ったことで、歌詞もそれ以前と比べて景色が浮かんでくるものになった。より具体的な描写をするようになったのだ。

「“vacation”を作っているときに田島さんからアドバイスを受けたんです。このアルバムは仮想の島で一日を過ごすというテーマだったので、“それだったらもう一歩踏み込んで、歌詞の描写をもっと具体的にしてみれば?”って。あのアルバム作りから自分の歌詞のアプローチの仕方が変わったし、いろんな温度感で書けるようになった。田島さんのあのアドバイスは大きかったですね」

続く6枚目のアルバムは2006年10月リリースの『BREATH』。新たなサウンドのパートナーとして冨田恵一(冨田ラボ)を迎え、キリンジの堀込泰行、COILの岡本定義らが作家として関わったこのアルバムは、birdが出産を経験してからの初めての作品でもあった。

「妊娠期間中に体形が変わって、それによって出る声の感じも変わったので、カラダって楽器みたいだなと実感した時期でした。自分の声の変化がすごく興味深かったんです」

子育ての期間を経て、2011年5月にはスタジオ録音とライブ録音を混ぜ合わせた意欲作『NEW BASIC』をリリース。この年には、ギタリストの樋口直彦と身軽に全国のいろんな場所へ出向いて歌う「そうだ○〇、行こう。」というアコースティック・ライブもスタートさせた。それはbirdの歌手人生において、とりわけ大きなことだったと言う。

「デビューしてからある時期までは、シングルやアルバムを作って、プロモーションをして、ツアーをやって、少し休んだらまた作るというサイクルで動いていたわけですけど、“そうだシリーズ”を始めたことでそれが変わった。年中どっかに行ってライブをやっていて、その合間に作品を作るというサイクルになったんです。そうするとライブと日々の生活がより密着していく。得られるものがすごく多いんですよ」

2013年3月にはアコースティック・セットによるセルフ・カバー・アルバム『HOME』を発表したが、それも「そうだ○〇、行こう。」シリーズで得たことのひとつの成果だったのかもしれない。そして同年9月には9作目『9』をリリース。当時のライブにおけるバンド、The N.B.4 (田中義人、Genta、金子雄太、澤田浩史)と共に録音し、ライブの躍動感がそのまま伝わってくるような作品となった。

2015年11月リリースの10作目『Lush』は、birdの新章突入を印象付けたアルバムだった。プロデュースは冨田ラボ。冨田とbirdが組むのは『極上ハイブリッド』『BREATH』に続いてこれが3度目だったが、『Lush』は全曲の作詞をbird、作曲と演奏とエンジニアリングを冨田が担当して完全に2人だけで作りあげたトータリティーの高いもの。リズムにおいてはアメリカの現代ジャズ~ネオソウルとシンクロする先鋭性を持たせながら、音数をそぎ落して言葉と歌を際立たせ、それによってまったく新しい日本のポップス作品になっていたのだ。そしてその『Lush』の試みと成果を発展させ、江﨑文武(WONK)、角田隆太(ものんくる)ら新進気鋭のミュージシャンも交えながら、より言葉とリズムを研ぎ澄まして作り上げたのが、今年3月にリリースされた最新オリジナル作『波形』だった。

「“波形”に関してはまずリズム、グルーブというのが大きなものとしてあって、それに対してどういうふうに言葉を選んで歌っていくか。そこは、20年間自分がやってきたことをフルに使って挑んだという感覚がありますね」

「でも、それがいまの時代に合った音楽かとか、そういうことはあまり考えてないんです。合ってたらそれはそれでうれしいけど、私は自分のペースで興味のあること、やってみたいこと、やったことのないことをやっているだけなので。そんな感じで気がつけば20年経ってたなと。あっという間ですけど、密度は濃かったなと思いますね」

そう、それがbirdの進み方であり、この20年であり、これからもずっとそうやって聴く人に寄り添うようなポップスを歌い続けていくのだろうと、そう思う。

なお、今回の公演のバンドは前回公演と変わり、ゲンタ(ドラムス)、澤田浩史(ベース)、樋口直彦(ギター)、渡辺貴浩(キーボード)、Meg(バックグランドボーカル)、Hanah Spring(バックグランドボーカル)という6人編成。そのグルーブと歌に身を委ねながら、みんなでbirdの20周年をお祝いしたい。

プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。Note(ノート) https://note.mu/junjunpaでライブ日記などを更新中。

公演情報
bird"20th Anniversary Best"Live !

【東京公演】
公演日/2019年10月30日(水)
    1st Stage Open 17:30 Start 18:30
    2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
料金/サービスエリア 7500円 カジュアルエリア 6500円
問/03-3405-1133
所在地/東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガーデンテラス4階

【大阪公演】
公演日/2019年11月11日(月)
    1st Stage Open 17:30 Start 18:30
    2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
料金/サービスエリア 7500円 カジュアルエリア 6500円
問/06-6342-7722
所在地/大阪府大阪市北区梅田2-2-22 ハービスPLAZA ENT 地下2階

その他詳細は下記よりご確認ください
http://billboard-live.com/

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