特別インタビュー
伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴 スタイリスト 髙橋健志さん
この人から買いたい、この一品。
2020.01.31

「クラシック靴の担当ですが、
じつはナイキ エアフォース1の収集家なんです」
小学生のとき、誕生日プレゼントにナイキの「エアフォース1」が欲しくて、親にねだったんですが小学5年生に1万円を超える靴なんて買ってくれませんでした。そこから靴への興味が尽きなくて。中学校でバスケ部に入って、エアフォース1も無事に買ってもらいました。それからバッシュにハマって、アディダスもコンバースもひと通り履きました。高校生になるとバイトしてスニーカーを買い集めたり。進学するとき、もっとスニーカーのことが知りたくて、靴の専門学校へ進んだのですが、そこで革靴の奥深さを知ってしまったんです。学校では実際に靴の制作も学んだので、素材と仕立てについても知識があります。ええ、実際に革靴を作ったこともありますので。
伊勢丹に入社して最初の配属が地下1階靴売り場、しかもハイエンドなブランドが並ぶ部門だったのは本当に幸せでした。もともとおしゃべり好きなもので、お客さまと会話するのが主な仕事で、大好きな靴に囲まれている職場って天職だと思っています。ここに来て、靴だけでなく服にも興味が出てきて、5階のインポートブランドは常にチェックしています。今日のスーツですか? タリアトーレです。ワイドラペルがきゃしゃな身体を隠してくれるので、いま気に入ってるんです。
現在は革靴が専門ですが、スニーカーはいまでも大好きです。特に僕が靴にハマるきっかけになった「エアフォース1」は、オールホワイトばかり歴代のモデルを所有しています。時代ごとにラストやディテール、素材の変遷が違うので追いかけているんです。じつはシューレースに取り付けられているチャームロゴ、あのメタルプレートを集めているんです。ずっと収集していたものは、引っ越しのとき行方不明にしてしまって。いまは四角いプレートになってますが、初期は丸いんですよ。そんなところに注目してる人、そんなにいませんよね(笑)。

髙橋健志さんおすすめの一品
三陽山長のストレートチップ「友二郎」
日本が誇る紳士靴ブランド、三陽山長の傑作靴「友二郎」。ストレートチップの名品としての呼び声高いモデルです。ストイックでシンプルなストレートチップのラストは、ラウンドトウのR2010。小ぶりなヒールカップと絞り込んだ土踏まずに、低く抑えた二の甲がしっかりとしたホールド感を有するのが特長です。素材は履き込めば履き込むほどエイジングしますし、磨けば磨くほどに光沢を増す、きめ細やかな革が使われています。ドメスティックブランドならではの木型は日本人に合いやすいフォルムが研究されているので、インポートの靴が合わない方にこそおすすめしたいですし、リピーターも非常に多い一足です。日本の靴ブランドって、つくりが非常に丁寧なので、真面目すぎるというか、とても端正な印象なのですが、この靴には不思議な色気が宿っているように思います。
問/伊勢丹新宿店 03-3352-1111
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
Text:Yasuyuki Ikeda