お酒

スコットランドの蒸留所巡り
奥深いジンの魅力を探る 第3回

2020.05.22

小松宏子 小松宏子

スコットランドの蒸留所巡り<br>奥深いジンの魅力を探る 第3回

スコッチウィスキーの本場、スコットランドには多くの蒸留所がある。そのなかにはウィスキーも製造している蒸留所や、ジン専門の蒸留所も。2019年の秋、ジン専門店「バー コパン」のバーテンダーであるジェーニャさんと、日本で最多のジンをそろえる酒販店「グローバル ジン ギャラリー」のオーナー高山憲吾さんが本場の潮流を知るべく、かの地を巡り歩いた。

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なかでもAERA STYLE MAGAZINE読者が訪ねても十分に楽しめる、ウエルカムな蒸留所を、スコットランドで2軒とロンドンの街中で1軒を紹介してもらった。

アイル・オブ・ハリス蒸留所

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まずは、ジェーニャさんがアンバサダーを務める「アイル・オブ・ハリス蒸留所」だ。スコットランドの北西部に位置するハリス島に、2015年9月、島内初となる蒸留所として設立された。

ハリス島は人口2000人、島特産の織物ハリスツイードは世界的に有名だが、それ以外にはこれといった産業のない過疎の島。あるのは、手つかずの美しい自然だけ。そこで島の振興と若い人の雇用を作るために、島民が考えてつくった蒸留所で、ソーシャルディスティラリーというストーリーになっている。

同蒸留所が手掛ける、「アイル・オブ・ハリス ジン」は9つのボタニカルを使用しているが、なかでもキーボタニカルとなるのが、シュガーケルプとよばれる海藻。フレッシュでハーバル、バランスのよい飲み口が魅力だ。ほのかに磯の香り、海の風味が感じられるのはそのため。ボトルも島の周囲の海水の流れをイメージした美しいデザインが目を引く。

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蒸留所に事前にアポイントをとれば、丁寧に案内をしてもらえるし、ショップで購入も可能だ。しかしながら、アイル・オブ・ハリス蒸留所は小規模でインディペンデントな蒸留所なので、販路が限られている。

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蒸留所に事前にアポイントをとれば、丁寧に案内をしてもらえるし、ショップで購入も可能だ。しかしながら、アイル・オブ・ハリス蒸留所は小規模でインディペンデントな蒸留所なので、販路が限られている。

日本で楽しむには、アンバサダーの店である「バー コパン」で味わうのがベスト。購入できるのは、「グローバル ジン ギャラリー」のみなので、興味のある方は問い合わせてみよう。

アイル・オブ・ハリス蒸留所
グローバルジンギャラリー

ダネットベイ蒸留所

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陶器のボトルが印象的な「ロックローズ・ジン」は、スコットランドの北端で夫婦2人で営む小さな「ダネットベイ蒸留所」で造られる。

使用しているボタニカル9種はすべてローカルなもので、うち 5種類は地元の森や崖で手摘みされる。ロックローズの名前の由来は、ローカルボタニカルのひとつであるロディオラ・ロゼア(岩に咲くバラ)に由来する。グラスを近づけると、ジュニパーと松葉の香りのすぐあとに、柑橘香が広がり、続いてバラなどの花のアロマが感じられる。味わいは驚くほどスムーズで風味豊かだ。

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陶器のボトルはすべて手描きで、出荷前に年号、製造番号とサインを入れて仕上げる。英国では詰め替え用のパウチ入りのジンも販売するなど、エコロジーにも積極的だ。スタンダードのほかに、春夏秋冬、それぞれに採取されるボタニカルを使って蒸留する限定バージョンもある。

ダネットベイ蒸溜所

シティオブロンドン蒸溜所

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3つ目がロンドンの街中でジンを蒸留している、シティオブロンドン蒸溜所(City of London Distillery)だ。短い旅程のなかで、スコットランドまで足を延ばすことが難しくとも、ロンドンの中心地なら時間をやりくりすれば行けるに違いないと思い、ロンドン市内でも1軒選んでもらった。

1階がバーで地下に小さな蒸留所があり、そこで少量のこだわりのジンが造られている。ジン好き、酒好きの読者にはぜひ、訪ねてもらいたい。

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同蒸留所が市内に造られたのは2012年と近年のことであるが、実はこちらは200年以上の歴史を持つ老舗の蒸留所である。その歴史をひもとくと、18世紀「狂気のジン時代」といわれたロンドンにまでさかのぼれる。


往時は市内のすべての通りに蒸留所があるほどだった。50年後にようやく狂気のジン時代が収束したときには、市内に蒸留所は数軒しか残っていなかったとか。その後2012年に「シティオブロンドン蒸留所」が市の中心地に造られるまでは、1軒もなかったという。200年の間に、ロンドンではドライジンが全盛期となったが、「シティオブロンドン蒸留所」ができてからは、こだわりの少量生産のクラフトジンのムーブメントが起こった。

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スタンダードの「No.1シティ・オブ・ロンドン ジン」は、アンジェリカ、リコリスなど、クラシカルなボタニカルを使用した正統派。ジュニパー、柑橘、スパイスがバランスよく香る、爽やかで洗練されたドライな味わいが魅力。ほかに7種のフレーバードジンも造られている。

テイスティングつきの蒸留所ツアーコース£25
自分でオリジナルのジンを造ることができるコースは£125
シティオブロンドン蒸留所

<<第2回 「クラフトジン」ブームの台頭 はこちら

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Text: Hiroko Komatsu
写真提供:バー コパン

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