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スーツの着こなしをグッと格上げする基礎知識
歴史やルールを知って洒脱に着こなす。

2023.06.09(最終更新:2023.09.20)

スーツの着こなしをグッと格上げする基礎知識<br>歴史やルールを知って洒脱に着こなす。

スーツはビジネスマンに欠かせない仕事着です。この記事では、ビジネスシーンに主眼を置き、スーツの基礎知識や着こなしのポイントなどを解説します。

目次
  1. メンズスーツの基礎知識を知る
    1. スーツの歴史
  2. スーツの着こなしの前に知っておくべきマナー
    1. スーツの着こなしマナー① スーツの色の基本はグレーかネイビー
    2. スーツの着こなしマナー② ジャケットのボタンの留め方ルール
    3. スーツの着こなしマナー③ スーツの袖丈のルール
    4. スーツの着こなしマナー④ ポケットに物は入れない
    5. スーツの着こなしマナー⑤ パンツのクリースをしっかりつける
    6. スーツのディテールの名称
    7. ノッチドラペル
    8. ピークドラペル
  3. スーツの種類と着こなしのポイントを知る
    1. シングルスーツとダブルスーツ
    2. 2つボタンと3つボタン
    3. ツーピーススーツとスリーピーススーツ
  4. スーツの着こなしポイント。好印象を与えるためには?~ジャケット編~
    1. スーツジャケットの着こなしの基本ポイント① ジャケットは肩で着ると心得る
    2. スーツジャケットの着こなしの基本ポイント② 背中のフィット感をチェック
    3. スーツジャケットの着こなしの基本ポイント③ 胸回りは動きやすさがポイント
    4. スーツジャケットの着こなしの基本ポイント④ 着丈は「長すぎず短すぎず」がマスト
  5. スーツの着こなしポイント。好印象を与えるためには?~パンツ編~
    1. スーツパンツの着こなしの基本ポイント① ジャケット同様にパンツもジャストフィット
    2. スーツパンツの着こなしの基本ポイント② パンツの丈は長すぎず短すぎず、がマスト
    3. スーツパンツの着こなしの基本ポイント③ ベルトも着こなしにおいては重要
  6. スーツの色を知る
    1. ネイビー
    2. グレー
    3. ブラック
    4. ブラウン
  7. ストライプの種類を知る
    1. チョークトストライプ
    2. ピンストライプ
    3. ペンシルストライプ
    4. オルタネートストライプ
  8. ワンランク上の印象を与えるスーツの着こなしテクニック3選
    1. ワンランク上のスーツの着こなしテクニック① 無地感覚のスーツがおしゃれを演出しやすい
    2. ワンランク上のスーツの着こなしテクニック② 基本的に柄や異なる色は二つまでと心得る
    3. ワンランク上のスーツの着こなしテクニック③ 小物のアクセント使いをマスターする
  9. スーツのブランドを知る
    1. dunhill(ダンヒル)
    2. BARNEYS NEW YORK(バーニーズ ニューヨーク)
    3. Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)
    4. 五大陸
    5. TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)
  10. 小物選びでスーツスタイルの表情がランクアップ
    1. ポケットチーフ
    2. カフス
    3. ネクタイピン
  11. メンズスーツを正しくおしゃれに着こなす5つのルール
    1. スーツの襟幅は8.5㎝が基準
    2. ジャケットは着丈、袖丈を厳密に決める
    3. シャツの襟はジャケットの襟と沿うバランス
    4. センスよりもルールに従う
    5. 「着る」も仕事のうちと心得る
  12. これ以外にもルールはある

スーツをおしゃれに着こなすためには、スーツが現在の形になった起源や、一着一着の個性にもつながるディテールの種類を知っておくといいでしょう。そこでまずは、これらのメンズスーツの基礎知識から解説していきます。

スーツの起源は、18世紀に誕生したフロックコートだといわれています。その後モーニングコートや燕尾服へと派生しましたが、いずれも屋外での着用を目的とした衣服でした。そのため、のちに室内用として裾を短くカットしたジャケットスタイルが誕生したのです。

代表的なのが喫煙時にはおるスモーキングジャケットで、タキシードの原形です。そしてこのタキシードがスーツの直接の起源とされています。その後、1920年代の経済成長でビジネスマンの影響力が増したことや、1960年代にアイビー・リーグの学生がヤングファッションとしてスーツを採り入れたことなど、時代とともにそのスタイルは変化してきました。

スーツの着こなしの前に知っておくべきマナー

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着こなしとはマナーです。自分を主張し、相手を尊重するために欠かせません。基本をわきまえることでいいビジネスの結果が残せます。

知っておきたい世界で恥をかく日本ルールの着こなしとは?

ビジネススーツの基本色はネイビーとグレー。特にネイビーは若々しく、20代なら必ずワードローブに揃えておきたいカラーです。

また深みのある青は日本人の肌の色とマッチしやすく、誠実さをアピールするのにぴったりですから、年齢を問わずに活躍します。もうひとつのグレーは地味な印象があるかも知れませんが、その分落着きを感じさせます。シャツやネクタイの色を選ばないのも重宝する理由。ビジネスシーンではハードルを感じさせるチェックも取り入れやすいでしょう。

避けておきたいのは黒。冠婚葬祭用のカラーで、仕事では不向きです。モード系のものもありますが、基本的にオンビジネスでは避けてください。

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「定番と言われるのにはもちろん理由がある!

ネイビースーツの魅力と着こなし方法を覚えよう」はこちら

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スーツはオフィシャルな制服ですが、機動性もポイントです。通常のスーツであれば、留めるボタンは上のみ。

主流の3つボタン段返りのタイプでは、最初のボタンは飾りになるので真ん中だけ留めます。いちばん下のボタンも同様で、ここは動きやすさも考慮して外しておきましょう。また座った姿勢の際に留めたままだとシワが入るので、着席時には外すことをお勧めします。

ただスリーピースではベストのボタンを留めているので、ジャケットのボタンはすべて外しても無作法ではないうえ、このほうがすっきりしてきれいに見えます。

【関連記事】
「スリーピーススーツを着こなす注意点(スーツの基本 第6回)」はこちら
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スーツの袖丈は長すぎ、短すぎ双方共にNGです。手を下ろした状態でシャツの袖が1~2cm見える長さがベスト。既成品は長めに作られていることが多く、購入時にお直しが必要です。ただ左右の手の長さがまったく同じ人は少なく、たいていは利き腕のほうが長いため、袖口の高さが同じになるように丈を調整してください。

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ジャケットのポケットは飾りと考えましょう。中に入れた形が見えてしまうほどふくらむのはNG。ジャケットのようなパッチポケット(本体の生地の上に縫い付けられたもの)であれば多少マチがありますが、通常だと裏地に一体になっているため、入れたものの重みで引っ張られてシルエットが崩れてしまいます。

左右の下側のポケットについたフラップ(蓋)は雨の浸水を防ぐためのもの。すなわちアウトドアに由来するディテールです。そのため、屋内に入ったときはフラップを折って中に入れるのがマナー。
ただ現状でその習慣はあまり重視されておらず、そのままにしておいても問題ありません、また、最近はこの部分は縫付けられていることが多く、糸を外さないままにすること多いようです。

パンツのセンターに入った折り目はクリースと呼ばれるプレスラインです。フォーマルなだけでなく、足をきれいに長く見せてくれる効果があります。雨や汗で消えてしまった場合はプレス機にかけるか、クリーニング店に依頼しましょう。

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ジャケットの上襟をカラー、下襟をラペルと呼び、ラペルは主にノッチドラペルとピークドラペルの2種類があります。

ノッチドラペル

上襟と下襟の縫い合わせ部分をゴージラインといい、下襟の先がこのゴージラインに続いて真っすぐで、菱型の襟になっているのがノッチドラペルです。市販されているほとんどのスーツがこのタイプです。

ピークドラペル

一方のピークドラペルは、下襟の先が上を向いていて剣のようにとがっているタイプで、フォーマルスーツによくみられます。また、ラペルに開いている穴はフラワーホールといい、立ち襟だったころの名残です。

さらに、ジャケットの肩のラインをショルダーライン、袖の付け根のラインをアームホールといいます。袖のことはスリーブと呼び、袖口には飾りボタンがついているのが一般的です。ボタンを整然と並べた「並べつけ」、重なるようにつけた「重ねつけ」のほか、実際に袖口が開く「本開き」というつけ方もあります。

ジャケットの正面を見ると、胸元から腰ポケットにかけて縫い目があることがわかります。これはフロントダーツといい、立体感だけでなくフィット感も出ます。ウエストラインの胴しぼりも、体のラインをきれいに見せる役割があります。その下にある腰ポケットはフラップつきポケットが最も一般的なタイプですが、それ以外にも種類が豊富です。

フォーマルウエアに多いのが玉縁ポケットです。フラップがなく、屋内での着用を前提としています。また、スラントポケットは手を入れやすいよう斜めについているのが特徴。さらに、外側に張りつけたパッチポケットという種類もあります。

そして、ジャケットの最も下、前裾カットの部分はフロントカットといいます。一方、ジャケットの背中を見たとき、真ん中にある縫い合わせ線がバックシーム、裾のスリットがベントです。

ベントには真ん中に切り込みがあるセンターベント、切り込みがないノーベント、両サイドに切り込みがあるサイドベンツ、ベントの上部がかぎ形(フック)に曲がったフックベントの4種類があります。

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ジャケットの裏地は通常、総裏(フルライニング)仕様か背中の裏地を省略した背抜き(ハーフライニング)仕様のどちらかです。スラックスのディテールは、ベルト位置の帯をウエストベルト、ベルトを通す穴をベルトループといい、ジッパーやボタンを隠す中央の比翼(ひよく)をフライといいます。また、スラックスには脇にサイドポケット、後ろにヒップポケットがついているのが一般的。そして、これらを含む股上の部分をライズと呼びます。

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正面には動きやすいようにつけられたプリーツと呼ばれるひだや、立体感を出すためにつけられたクリースという折り目があり、サイドにはサイドシームという縫い目があります。また、スラックスの裾の折り返しはかぶらと呼び、フォーマルウェアに多いのは折り返しがないシングルです。しかし、ビジネススーツでは折り返しのあるダブルの人気が高いようです。

スーツのディテールについて解説しましたが、スーツにはそれ以外にも「シングルスーツとダブルスーツ」「2つボタンと3つボタン」「ツーピーススーツとスリーピーススーツ」など、さまざまなスタイルがあります。TPOに合わせて上手に着こなすために、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

シングルスーツとは、ジャケットのボタンが1列になっているスーツで、ビジネスシーンにおいてポピュラーなスタイルです。

シングル2つボタン

ボタンの数は2つまたは3つであることが多く、日本では、Vゾーンが深く、頭を小さくスマートに見せてくれる2つボタンが人気です。また、シングルスーツの襟はノッチドラペルが多く、一般的にセンターベントである点も特徴。シングルスーツは着たときにやや余裕があるため、痩せ型の人でも貧弱に見えず着こなすことができます。

シングルスーツはスマートな印象になるため若者が着るイメージがありますが、年齢の制限はありません。同様に、着用シーンにも制限がなく、ビジネスはもちろん、フォーマルや普段着としても着られます。

一方、ジャケットのボタンが2列になっているダブルスーツは、4つボタンや6つボタンであることが多く、配列やかけるボタン数によって種類が分かれているのが特徴です。

ダブル4つボタン

また、ダブルスーツの襟はピークドラペルが多く、ベントはノーベントかセンターベントが一般的。ダブルスーツはボタンの配列上、前を大きく重ねることになるため、シングルスーツよりもフィット感があります。また、見た目にも重厚感があるので、以前は年配の人が着るものという印象がありましたが、近年はダブルスーツでもスタイリッシュなタイプが増え、若者にも人気。ダブルスーツもシングルスーツと同じく、シーンを選ばずに着用できます。

先に少し触れたように、シングルスーツには2つボタンタイプと3つボタンタイプがあります。2つボタンはスーツの主流ともいえるタイプで、多くの人が着用しています。ビジネスにもフォーマルにも使いやすいタイプ。上のボタンだけを留め、下のボタンは外しておくのが正しい着こなし方です。

一方、3つボタンタイプはVゾーンが浅く、クラシックな印象が特徴です。ただし、ネクタイの露出面積が狭いためシャツとのバランスをとるのが難しく、コーディネートする際は注意が必要。2つボタンよりもカッチリとした印象になり、2ボタンが主流となっているいまは個性が際立つスタイルです。着用時は上の2つのボタンだけを留め、いちばん下は飾りボタンとして外すのがルールです。

シングル3つボタン

3つボタンタイプには「段返り」と呼ばれるタイプもあります。これは、3つボタンのうちいちばん上のボタンがラペル裏に隠れているタイプです。一見すると2つボタンのようですが、よく見るとラペルにボタンを通す穴があるのがわかります。2つボタンタイプと同じくVゾーンが深いため、3つボタンでもスタイリッシュな印象に。いちばん上のラペルに隠れたボタンは飾りのため、真ん中のボタンだけを留め、いちばん下のボタンは外して着こなします。

シングル3つボタン段返り

ツーピーススーツとは、ジャケットとスラックスで構成されるスーツのことです。一般的なビジネスマンが着ているのはこのタイプでしょう。幅広いシーンに向いています。

一方のスリーピーススーツは、同じ生地でできたジャケット、ベスト、スラックスを組み合わせたスタイル。クラシックな印象になりますが、着こなしにはさまざまなマナーがあるので気をつけましょう。

例えば、スリーピーススーツの場合、サスペンダーやベルトはベストで隠さなければなりません。また、ネクタイの長さはベストより長くなってしまうとNGで、ベストの裾からシャツが見えているのもマナー違反です。さらに、シャツの襟の剣先はベストの下に隠したほうがいいので、一緒に着るシャツの種類にも気を配る必要があります。

スリーピーススーツを着ていると、ジャケットを脱いでシャツとベストだけで過ごしたくなることもあるでしょう。しかし、本来スリーピーススーツのベストはシャツを隠すためのものであり、あまり見せるものではありません。カジュアルなシーンを除き、ジャケットは常に着用しましょう。

ベストには尾錠がついており、胴まわりの大きさを調節できるようになっています。しかし、大きめのベストを尾錠で締めるとしわが寄ることがあるため、これに頼りすぎず自分に合うサイズのベストを選ぶことが大切です。また、ベストのボタンはいちばん下を開けておくのがマナー。ただし、裾が大きく開いているタイプなら全部留めても問題ありません。

スーツの種類についてはこちら>>

スーツの着こなしポイント。好印象を与えるためには?~ジャケット編~

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素材やトレンド感以上にいいスーツの条件は、着る人の体に合っていること。試着は必須ですが、どこを基準にすればいいかわからない人も多いのでは。ここではチェック項目を解説します。

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しっかりと肩に載ったジャケットは着こなしの基本。肩からずれたオーバーシルエットはもちろんのこと、肩がしっかり入っていない小さめサイズも論外です。一般的に、私たちの肩は欧米人に比べて前傾気味と言われます。輸入物を購入する場合は特に注意しましょう。

肩はリフォームで特に修正が難しい箇所です。ここがフィットしていることがスーツ選びの基本にして要となります。

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肩回りの次に全体的なフィット感をチェック。背中に突っ張りやたるみがないことをチェックしましょう。縦方向に入るシワはサイズが大きすぎる目安です。また襟の高さはシャツが1~1.5cm程度出ているのがベストバランス。

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胸回りの基準はフィット感と共に動きやすさも重視したいところ。前ボタンを留めた状態で、ラペルの下にこぶしが一つ入る程度の余裕がジャストです。

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流行にも左右されますが、ビジネススーツでのジャケットの着丈はお尻がギリギリ隠れるくらいが標準です。ただしジャケット単体の場合はさほど厳密ではないようです。

スーツの着こなしポイント。好印象を与えるためには?~パンツ編~

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気温の変化やシチュエーションに応じて脱げるジャケットにくらべ、パンツは帰宅まで履き続けているもの。体の動きも生地への負担もより大きいですから、ジャケット以上にサイズ感にこだわりたいところです。

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パンツを後ろから見たとき、ヒップのカーブが自然にフィットしていることを確認しましょう。ヒップ下にたるみがないか、太腿周辺がピチピチ、または逆に余計なたるみがないかを確認しましょう。

またウエストは合っていても、より立体的なヒップは見落としがち。小さいと左右に生地が張ってしまい、大きいとヒップの上に余計なシワが出ます

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裾がもたつく長さではシルエットが台無しです。立った状態で靴下が見えないギリギリの長さ、あるいは靴で少し前がたわむハーフクッションが限度。試着の際には必ず靴を履いて丈の長さを決めたいもの。またパンツのシルエットとも関連します。最近復活傾向のゆとりのあるタイプなどは比較的長めにすることが多いようです。

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ベルトの穴は通常五か所。真ん中の穴にピンを通すのがベストバランスです。ひとつでも左右にずれるとおさまりが悪く見えます。また革小物は色を統一するのがセオリー。靴の色と合わせるようにしてください。

スーツは色によっても印象が大きく異なります。おしゃれに着こなす以前に、そもそもビジネスに向いていない色もあるため、シーンに応じて使い分けることが大切です。

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ネイビーはビジネススーツのなかで最も基本的な色です。濃いネイビーは堅実で真面目な印象、明るいネイビーは華やかな印象と、トーンによって雰囲気が変わるのが特徴。ワイシャツはホワイト系やブルー系、ピンク系、ネクタイはネイビー系やブラウン系、ワイン系が好相性です

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グレーもネイビーに並んでスーツにおける王道カラー。基本的には柔らかく落ち着いた印象になりますが、ライトグレーやダークグレーなど、トーンによっても変わります。深めのチャコールグレーなら、ビジネスだけでなくフォーマルにも向いています。

ビジネスで着用する場合は、シャツはホワイト系かブルー系だと間違いなし。ピンク系のシャツと合わせると華やかな印象に、ブラックのシャツと合わせるとグラマラスな印象になります。ネクタイはブラックやネイビー系、グレー系が無理なくフィットします。シューズはブラックよりもブラウン系がおすすめ。ライトグレーのスーツにライトブラウンのシューズを合わせると全体的に華やかな印象になります。

日本ではビジネスシーンでブラックスーツを着ている人もいますが、欧米ではまずあり得ません。ブラックスーツはそもそも冠婚葬祭用に日本で誕生したスーツだからです。

光沢のない生地のスーツにホワイトのシャツ、ブラックのネクタイとシューズを合わせたスタイルはブラックフォーマルとも呼ばれます。結婚式などのパーティーに着ていくなら、ツヤや光沢感のある生地を選び、黒以外にシルバー系やホワイト系のネクタイを合わせてもよいでしょう。

ブラウンは温かみがあり、安心感を与える色。秋冬用のスリーピーススーツに多く見られるのが特徴です。

シャツはホワイト系が最適ですが、ブルー系を選ぶことで爽やかな印象になり、春夏でも着やすくなります。また、ボルドー系のネクタイと合わせると情熱的な印象に、ブルー系のネクタイと合わせると聡明な印象になります。

ただし、ブラウンのスーツはくだけた印象になり、同時に日本人の黒髪となじみにくいため、着る人を選ぶ色といえるでしょう。

スーツの定番の柄といえば、ストライプではないでしょうか。ビジネスシーンにもふさわしく、無地に次いで人気があります。そんなストライプにはさまざまな種類があるため、以下で印象の違いを解説します。

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チョークトストライプとは、チョークで引いたように輪郭がかすれたストライプのことです。ブラックやネイビー、グレーなどの生地に白い線で引かれているのが一般的。秋冬用のフランネルスーツに多く用いられています。

線が太く、間隔も広いため、相手に強い印象を残せるのが特徴。なかでも、濃いネイビーに白いチョークトストライプが入ったスーツは、ロンドンやニューヨークの金融関係者が好んで着ることから、バンカーストライプと呼ばれており、信頼感を演出できるとされています。ストライプの存在感が強いため、着こなすときはシャツやネクタイをシンプルにまとめるといいでしょう。

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ピンストライプは、針で穴を開けたように小さな点を連ねて構成されたストライプのこと。線の細さに加えて、ストライプの間隔も狭く、スマートな印象を与えます。

ストライプのなかでは最も控えめで、遠目からでは無地に見える場合もあります。それほど主張が強くないので、ビジネスシーンにもマッチ。明るい色から暗い色まで、どんなトーンにも合います。

イギリスにおいては、ネイビーに白いピンストライプが入ったスーツがビジネスに最もふさわしいといわれています。一方、グレーの生地に白いピンストライプが入ったスーツは、少しカジュアルな印象です。

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鉛筆で線を引いたような細いストライプのことをペンシルストライプといいます。ピンストライプよりは線がはっきりしていますが、どちらかといえば控えめなストライプで、スタイリッシュな印象に。ストライプスーツのなかで最も普及しているのがこのタイプです。

また、ピンクやパープルなど、ストライプの色にもバリエーションがあります。グレーの生地にライトグレーのストライプ、ネイビーの生地に白いストライプなどの組み合わせが多いです。渋めの色の生地をベースにシャツやネクタイの色をまとめると上手に着こなせます。

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オルタネートとは「交互の」という意味。オルタネートストライプはその名のとおり、色や太さの違う線が交互に配置されているストライプです。

異なる色が使用されているため、華やかな印象に。スーツに限らずドレスシャツにも採用されているデザインです。

ビジネスシーンで着用する場合は、ネイビーやグレーなどの濃いめの生地を選ぶと比較的落ち着いた印象になってなじみます。また、白いラインにピンクやブルーなどのカラーをアクセントにすると華やかな雰囲気になるでしょう。ビジネスシーンだけでなく日常使いもできるストライプです。

ワンランク上の印象を与えるスーツの着こなしテクニック3選

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まったくの無地ではフォーマル感が強いため、意外に合わせづらいもの。むしろ、目立たない柄物のほうがコーディネートしやすいでしょう。ストライプ、チェックでも同系色で線が細いシャドータイプを選ぶと便利です。

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スーツスタイルはスーツ、シャツ、ネクタイの三位一体で完成します。すっきりとまとめるコツは、柄を使うアイテムはふたつまでにすること、つまり、スーツとタイが柄ものであればシャツは無地、スーツとシャツに柄が入っていればソリッドタイに。全部に柄が入るとトゥーマッチな印象となります。

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ポケットチーフやカフス、タイバーなどの小物は、スーツスタイルに許された数少ない装飾品。視界に入りやすい胸元にポイントを置いたり、何気に目につく手元にアクセントを配したりと、好印象を与えるのに格好のアイテムです、上手に活用して、大人な着こなしを楽しみましょう。

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スーツをおしゃれに着こなしたいなら、ブランドにもこだわるべき。ここからは、世界的に有名なスーツブランドや、人気が高い国内ブランドなどを紹介します。

dunhillはイギリスの老舗ブランドです。もともとは馬具用品の会社でしたが、のちに衣類や小物などへと事業を拡大し、現在は男性向けのファッションアイテムを中心に扱っています。

そんなdunhillのスーツは、上品さと男らしさを兼ね備えているところが特徴。シンプルかつモダンなシルエットが多く、大人の男性ならではの余裕が感じられます。また、サッカー日本代表のオフィシャルスーツを手がけていることでも知られています。

BARNEYS NEW YORKは1923年にマンハッタンで誕生したセレクトショップ。1960年代後半に海外の高級ブランドを扱うようになったことで、一気に人気が高まりました。セレクトショップなのでさまざまなブランドのスーツを取りそろえていますが、オリジナルのスーツも販売しています。

BARNEYS NEW YORKのスーツは、海外の高級服地メーカーの生地を中心に使用して作られているので、高級感漂うルックスでありながら、着心地も快適。アメリカのブランドですが、日本人の体形に合う作りで美しいフォルムが立ち上がり、全体的にモダンな印象になります。

1975年、イタリアで誕生した高級ブランドがGiorgio Armani。素材の品質とシルエットの美しさ、着心地のよさを追求したコレクションで高い評価を受け、1980年にはリチャード・ギア主演の映画『アメリカン・ジゴロ』の衣装も担当しています。

完璧主義者といわれるほどデザインのセンスが高く、ダークカラーを基調にしながらエレガントで気品あふれるスーツがそろいます。世界中のビジネスシーンで愛されつづけているブランドです。

「日本発世界服」というキャッチコピーのもと、イギリスの伝統、フランスの華やぎ、イタリアの粋、アメリカの合理性に日本の繊細さを加えて誕生したブランドが五大陸。

世界中の優れた素材を使用した上質さと、日本の引き算の美学を意識したシンプルなデザインが特徴。また、水洗いができるスーツや土にかえるスーツなど、サステナブルの観点を採り入れた商品も多数開発しています。

デザイナーの菊池武夫が1984年に立ち上げたブランド、TAKEO KIKUCHI。色気と遊び心を意識したデザインが特徴です。スーツの生地は95%がオリジナルで、リクルート、ビジネス、パーティーなどのシーンに応じて最適な生地を生み出しています。

メンズスーツとしては珍しく、98%が曲線のパターンを使用し、機能性も抜群。スタンダードモデルの「BRITISH」のほか、丸みのある「LOUNGE」、タイトでスタイリッシュな「NARROW」、機能性とスタイリッシュさを両立した「COMFORT」の4つのモデルがあります。

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スーツの表情は合わせる小物でガラッと変わります。小物にこだわることで、ワンランク上の着こなしが楽しめます。

結婚式などのフォーマルシーンでポケットチーフを挿すことはあっても、ビジネスシーンでは利用していないという人が多いでしょう。しかし、本来はポケットチーフを挿した状態がスーツスタイルの正解。ただし、ビジネスシーンでは華美なデザインのものは避けましょう。

ホワイトの無地でリネン素材のものが最適。長方形に折りたたみ、胸ポケットと並行に少し見えるように挿すTVホールドという挿し方ならビジネスシーンにも向いています。

ポケットチーフについて詳しくはこちら>>

カフスはシャツの袖口を留めるためのアイテムです。ただし、袖口のボタンがついている側とボタンを通す側の両方にボタンホールがあるシャツでなければ使用できません。また、カフス自体も留め具の形式によってさまざまな種類があります。

一般的に普及しているのは、留め具がバネになっているスウィブル式。装着するときは、生地の裏と裏を合わせるように留めましょう。ビジネスシーンでは、シルバーでシンプルなデザインのカフスがおすすめです。

カフスについて詳しくはこちら>>

ネクタイピンはネクタイを固定するアイテムです。バネの力で挟むタイクリップや、金属そのものの力で挟むタイバーなど、いくつかの種類があります。ビジネスシーンでは飾りのないシンプルなものを選ぶといいでしょう。

ジャケットを着ているときは、ジャケットのいちばん上のボタンから少し上の位置で留めるとさりげないアクセントになります。また、シャツだけのときはシャツの第4ボタンと第5ボタンの間で留めるとスマートです。

これまでも紹介してきたように、スーツの着こなしにはさまざまなルールがあります。ここでは参考として、スーツをおしゃれに着こなし、相手にいい印象を与えるために大切な5つのルールを紹介します。

スーツの下襟の幅は、最も太いところで8~9㎝が標準です。ただし、下襟はスーツの印象を大きく左右する部分なので、時代や流行によって人気の幅も変わります。かつてはナローラペルという5㎝くらいの細い襟や、ワイドラペルという10㎝以上の太い襟が流行したこともありました。

ナローラペルはモードな印象になるため、クリエイティブ系の仕事をしている人に向いているといわれています。また、ワイドラペルはクラシックな印象になるため、公務員や管理職など、威厳が求められる職業の人に向いているといわれています。しかし、あくまでも主流は8.5㎝程度です。ビジネスシーンで着用するなら下襟の幅は標準的な太さがいいでしょう。

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スーツを美しく着こなすために重要な要素のひとつがサイズです。特にジャケットの着丈と袖丈には気を配りましょう。着丈はそのときの流行によって長さが変わりますが、基準は身長のちょうど真ん中から1㎝短くした長さです。

ヒップの曲線がちょうど隠れるくらいと覚えておくといいでしょう。また、袖丈は指先からの長さで決める方法もありますが、手首に合わせておけば十分。ただし、右腕と左腕の長さが違う人も多いので、きちんと採寸し、それぞれの腕の長さに合わせて袖丈を調節してもらうことをおすすめします。

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ジャケットの襟からのぞくシャツとネクタイ、通称Vゾーンは、着る人の印象を決定する重要なポイントです。そして、このVゾーンにおいてまず大切なのがシャツの襟です。ジャケットを着たとき、シャツの襟の外側のラインとジャケットの襟の内側のラインがぴったり合っているのが理想的

。シャツの襟型のなかで最も一般的なレギュラーカラーは多くの人が着用していますが、襟先の開きの角度が70~90度で、ジャケットの襟との間に隙間ができてしまうことがあります。その場合は、襟先が90~100度に開いているセミワイドスプレットカラーを選ぶといいでしょう。

シャツについて詳しくはこちら>>

普通の洋服と同じように、スーツにも流行があります。しかし、忙しいビジネスマンにはファッション雑誌を読んで常に最新のスタイルを採り入れている時間はないでしょう。そのため、スーツはセンスではなくルールに従って選ぶことが大切。正しいサイズのスーツを着用する重要性や、ビジネスシーンにふさわしい色や柄、着こなしのマナーなどを理解しておくだけで確実に着こなし上手になるでしょう。

ただし、ファッションの流行ほど頻繁でないとはいえ、ルールも時代に応じて変化していきます。一度覚えたからといって満足せず、情報をアップデートしていくことも大切です。

スピーディーかつ質の高い仕事をしていれば、ファッションがだらしなくても問題ないという考え方は過去のものです。ビジネスマンなら、身だしなみにも気を使うべきです。

スーツの着こなしは自己認識能力と自己管理能力を表します。ビジネスシーンに合わないスーツを着ていると、自分が相手にどのような印象を与えるのかを客観的に理解できない人だと思われてしまうでしょう。また、ヨレヨレのスーツを着ていればだらしない人間だと思われてしまい、相手からの信用を失います。

もちろん仕事において大切なのはその仕事ぶりですが、周囲の人に自分が優秀な人間だと伝えることも仕事のうち。そのためには、スーツを正しく着こなすことが大切だといえます。

スーツをおしゃれに着こなすためには、サイズの合うスーツであることや、ビジネスシーンにふさわしいデザインのものであること、着こなしのマナーを守ることなどのルールを理解しておく必要があります。しかし、上記で紹介した5つのルールはあくまでも一部。

さらに詳しくルールを知りたい方は、書籍「スーツの正しい!ルール55」をぜひ読んでみてください。

スーツに合うアウターについてはこちら>>

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  5. ZENITH(ゼニス)<br>【男前な、腕時計とスーツ。】

    ZENITH(ゼニス)
    【男前な、腕時計とスーツ。】

    腕時計

    2024.03.12

紳士の雑学