調べ・見立て(見立て)
夏のボーナスで買いたいのは「スーツ」という回答を、どう読み解く!?
編集長の「見立て」。#34
2020.08.12
新型コロナウイルス禍の影響が、経済にも影を投げかけています。アエラスタイルマガジンWEBの「調べ」アンケートで、「夏のボーナスは出ますか?」と尋ねてみました。「出る(昨年より増えそう)」と回答した人は39%で、「出る(昨年より減りそう)」の37%をわずかに上回っています。これは、多くの企業が、新型コロナウイルス禍の深刻な影響を受ける前の春の時点で夏のボーナス額を決めていたことに起因しているでしょう。現在の経済活動の状況を鑑みると、冬のボーナスはもっと深刻な状況になることが予想されます。
2番目に掲載したグラフは、昨年の同時期に同じアンケートを投げかけたときの結果です。2019年の夏は、「出る(昨年より増えそう)」が53%と、「出る(昨年より減りそう)」29%を大きく上回る結果となっています。これと比較すると、やはり今年の夏のボーナスが厳しい状況であったことは否めません。経団連がホームページに公開した「2020年夏ボーナスの妥結状況(第一次集計)」を見ても、回答した86社の平均妥結額は2019年に比較して6%減となっています。このマイナス幅は、リーマンショック直後であった2009年夏に前年比19.4%減となって以来の大きな落ち込みです。改めて1番目のグラフを見ると、今年の夏のボーナスは「不景気なので出ない」と回答した人が、18%にも上ります。
そんな厳しい状況のなかで、「ボーナスで買うなら何を買いますか?」という質問に対する回答を見てみましょう。左のグラフが今年の回答、右のグラフが2019年夏の回答です。意外なことに、「スーツ」を買うという回答が、昨年の19%から今年は27%と大きく数字を伸ばしています。リモート勤務などによるカジュアル化が進んでいるといわれるなかで、このデータはどのように分析すればいいのでしょうか。
アエラスタイルマガジンでは、「働き方改革は装い改革でもある」と申し上げてきました。オフィス環境の変化、ITの進化、ワークライフバランスへの注目などの影響があって、ビジネスウエアはいま大きく変化しています。スーツの素材、形、着こなしのルールを改めて考え直すタイミングであるという意味が、先の提言にはこめられていました。それが、新型コロナウイルス禍によるリモートワークの浸透もあり、さらに拍車がかかっているのです。
それを敏感に察知したビジネスマン読者の皆さんが、「スーツを買い替えなければ」と考えていることを反映したアンケート結果であると読み取ることができるでしょう。2005年にスタートしたクールビズは、夏のビジネスマンの装いを大きく変えました。あれから15年、2020年は、通年で着用する「ビジネスウエアの改革元年」となりそうです。最近では、「スーツはなくなりますか?」という質問をされることもあります。そうしたときには、私は「会社に行く日がハレの日となるので、それにふさわしいスーツを選ぶべきである」と回答します。そして、「仮にスーツの頻度が少なくなったとしても、人が仕事をしていく以上、ビジネスウエアはなくならない」とも必ず申し上げます。新しい時代の新しい着こなし。今後もアエラスタイルマガジンはビジネスマンのリアルなニーズに応えて、どんな素材、どんな形のビジネスウエアを、どう着こなすのがいいのかを、具体的に提案していきたいと思います。
プロフィル
山本晃弘(やまもと・てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE
WEB編集長 兼 エグゼクティブエディター
「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年に編集長として「アエラスタイルマガジン」を創刊。ファッションやライフスタイルに関するコラムを執筆する傍ら、幅広いブランドのカタログや動画コンテンツを制作している。トークイベントで、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。2019年4月にヤマモトカンパニーを設立し、現職に就任。執筆書籍に、「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」がある。