カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ92
トレンドに復活したムートンの着こなしのポイントは
クラシックな柄パンツで上品コーディネートに!
2021.01.26
冬の防寒アウターというと、まずはダウンを選ぶ方がほとんどではないでしょうか。もともとはウインタースポーツや登山といったときに使われていたものでしたが、街なかでも着られるデザインのものが出はじめた途端に冬の防寒アウターの主役となりました。
ただ、今季はその座を揺るがすダークホースが出てきました。ムートンと呼ばれる羊の毛がついたレザーアウターです。実は、50歳以上方には聞き覚えのあるもので、90年代のアメカジブームのときにムートのブルゾン「B-3(ビースリー)」が大流行。このブルゾンはもともとアメリカ空軍のパイロット用の防寒ウエアだったもので、暖かさは半端なかったのですが、タフな作りで重かったため長時間着こなすには屈強な肉体かヤセ我慢が必要でした。
その後、日本ではムートンについてはそのときのネガティブな印象が根強く残ってしまいました。そこに、暖かく軽量で女性も着られるヨーロッパ系のダウンアウターの大ブームが長く続いたため、ムートンがスポットを浴びることはありませんでした。ところがこのアイテムが最近ファッションの表舞台に帰ってきたのです。
このジェントルマンはいち早くそれを採り入れていたミラノのファッションブロガー。ブラックのムートンブルゾンからは男気オーラとラグジュアリー感が半端なく出ているように見えませんか? ここがナイロン系生地のダウンアウターにはなかなか出せないところ。それに、最近のイタリア製のムートンブルゾンは昔のものに比べると超軽量になっています。
色もブラックなのでモードな雰囲気がプラスされていますね。昔流行したブラウン系のムートンがカントリー風だったのとは真逆。
全身はこんな感じです。モード系が好きなミラノの人たちは、冬になるとブラックやグレーを使ったモノトーンコーディネートが多くなりますが、このジェントルマンはひとひねりしています。
決め手は、パンツ。ベースはクリーム色で大きな格子柄の入ったものをチョイス。これは、イギリスのクラシックなパターンをアレンジしたもので、こうすることでモード感をやや弱め、イギリス的な品のよさを全体に漂わせています。
ここを、ブラックかブルーのジーンズにしても悪くはありませんが、ワイルドな感じが強く出てしまうため、このジェントルマンのような、モードな感じにほんのり優しさをプラスすることはできません。
今回の再現スタイリングは、スナップのポイントを押さえつつ色の使い方を変えてみました。パンツは、スコットランドの伝統柄のタータンチェックを使っています。ここがダークな色になったので、セーターを白にして全体にメリハリをつけ上品な雰囲気を出しました。スナップのジェントルマンのような目立つ柄パンツはトライできないな……という方向きのコーディネートです。
寒波はまだまだ居座ったままですが、百貨店やセレクトショップはすでに冬物セールが始まっていますので、高価なムートンを手に入れるにはいい時期ではないでしょうか。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに
通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こな
しを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi