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『FLEABAG/フリーバッグ』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #15

2022.03.03

『FLEABAG/フリーバッグ』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #15

問題と向き合うことで見えたものとは?

周囲のクセが強すぎる人たちを巻き込んだり、巻き込まれたり、彼女の少し変わった日常を赤裸々に描いたシュールで辛辣(しんらつ)なブラックコメディー……、だけではない。ある衝撃的な事実を知り、彼女の抱えている問題に気づかされるのだ。

滅多に人を信用しない彼女でも、心ひかれる出会いがあり、経験したことのない新しい価値観を知り、徐々に自分を疑いはじめる。人と関わらなかった分、自問自答を避けてきたのだ。

大切な人を失ったり、傷つけたり、前に進むことができなくなったとき、自分の問題と“向き合うこと”をしなくてはならない。他人を寄せ付けず、ある程度距離を取って傷つくことから自分を守ってきた彼女も、あることをきっかけに、変わらなければならないときが来たのだ。

物語が進むにつれ、彼女の不安と孤独が明るみになっていき、友人のように思っていた彼女に共感してしまうだろう。主人公の気性のように笑えたり、泣けたり、とにかく忙しい作品だ。

英国独特のジョークもあり、ブラックすぎるユーモア、シュールさから、もしかしたら万人受けはしない作品なのかもしれない。しかし音楽におけるグラミー賞に相当するドラマ界で最も権威のあるエミー賞を、これだけ受賞した作品ということは、観て納得せざるを得ないだろう。

現在Amazon prime videoで配信中の本作は、1話約30分。時間を忘れるほど痛快に進んでいくため、再生ボタンを止めることができず、一気見してしまうに違いない。彼女の人生を、ずっと友人として見届けたい気持ちのまま、残念ながらシーズン1、2合わせて12話ほどで終わってしまう。

傷つきながらもユーモアを忘れず、前向きに生きてゆく彼女に、きっと元気づけられることだろう。弱さを見せられなくなってしまった大人には、心にグサグサと刺さってしまうので、注意が必要……。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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