週末の過ごし方

井桁弘恵さんと巡る、TOKYO写真探訪。
第1回 東京都写真美術館

2022.07.20

写真・図版

世界的なアート熱の高まりと共に、写真の魅力が改めて見直されています。パンデミックの脅威やウクライナ侵攻など、混沌とした社会情勢の中で、一瞬を切り取った写真表現とそこに内在するストーリー性は、鑑賞者の想像力をかきたてるだけでなく、時に不安な心に寄り添い、時に希望の明かりをともしてくれるものと言えるでしょう。今回、俳優・モデルとして活躍する井桁弘恵さんを案内人に迎え、都内の写真にまつわるスポットを巡りながらその奥深き世界を探ります。

連載第1回の舞台は、恵比寿ガーデンプレイス内にある東京都写真美術館。9月25日(日)まで開催中の「TOPコレクション メメント・モリと写真」展を訪れました。

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「最近だと、ポーラ美術館で開催されたロニ・ホーンの個展(『水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』)を観に行きました。その前は(香川県)直島にある地中美術館を訪れましたね」
バラエティー番組で見せる天真爛漫な姿に加え、学生時代はテニス部で部長を務めるなどアクティブなイメージが強い井桁さんですが、プライベートでは美術鑑賞に出掛けるアート好きな一面も。

ラテン語で“死を思え”を意味する“メメント・モリ”をタイトルに冠した本展。中世ヨーロッパで、人々がペストなどの伝染病や戦争、飢餓といった困難に直面するなか、「死の像」と呼ばれる版画作品に死生観を重ね合わせたように、国内外のさまざまな写真作品を通して、同じく閉塞感が漂う現代を生きる人たちに、人間と死の関係の再考を促す目的で企画されたものです。

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本展を企画した浜崎学芸員のガイドを聞きながら展示室を巡る井桁さんは、掲示された写真と対峙し、気になる作品があればのぞき込むように細部を注視するなど、じっくりと時間をかけて写真を鑑賞します。その興味の先は作品だけにとどまらず、展覧会開催にあたっての作家との手続きや、作家亡き後の作品の管理について、さらにキュレーションという仕事にまで及び、矢継ぎ早に質問を繰り返す姿が印象的です。

なかでも井桁さんの心に強く響いたのが、青森を撮り続けた小島一郎氏の作品《つがる市稲垣付近》。市井の人たちの暮らしを情感豊かに捉えた作風から、“写真界のミレー”とも称される小島氏が1960年に撮影したもので、雪道を並んで歩く農夫の後ろ姿を捉えたモノクロ作品です。歴史に残るセンセーショナルな作品や誰もが知る有名作が数多く並ぶなかでは、ともすれば見落としてしまいそうな地味な作品と思いきや……。
「観た瞬間に良くも悪くも心がざわつきました。明るい方向に向かっているのか暗闇に進んでいるのか、どちらにもとれるというか……希望のようなものが感じられるけど、その逆も想像できて、鑑賞するタイミングや、観る人によって捉え方自体が全く変わってくるような印象を受けました」

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作家のネームバリューや見た目の派手さにおもねらない独自の視点に、井桁さんを支える芯の強さが垣間見えた瞬間でした。同時にアートや写真というものが、決まった答えを導くものではなく、それぞれに示唆を与えるものであるとすれば、彼女が抱いた多面的な印象は主催者が意図するものなのかもしれません。井桁さんの感想を聞いた際、その場にいたスタッフの多くは“そういう見方もあったのか”と気付きを得たのがその証左であり、感情の赴くまま観ることの正しさを教えてくれました。

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〈井桁弘恵(いげた・ひろえ)〉
1997年2月3日生まれ。福岡県出身。結婚情報誌『ゼクシィ』の11代目CMガールに抜擢されると、その後、『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日)で本格的に俳優デビュー。現在、『MORE』(集英社)で専属モデルを務める一方、『おしゃれクリップ』『ヒルナンデス』(ともに日本テレビ)にレギュラー出演するなど、ファッション誌からバラエティーまで多岐にわたって活躍中。先月、放送終了したドラマ『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京)では主演を務めるなど、今後、俳優としてもさらなる活躍が期待されている。

〈訪れた美術館〉
東京都写真美術館
世界的にも数少ない「写真・映像」を専門とした公立美術館として、1995年1月に総合開館。3つの展示室では、希少な作品を含む3万6899点(2022年3月末現在)の収蔵作品のなかから、テーマに沿ってセレクトした収蔵展や国内外の優れた作品を独自の切り口で紹介する企画展など、年間約20本の展覧会を開催する。今回紹介した「TOPコレクション メメント・モリと写真」のほかに、1930年代〜40年代にかけて日本全国のアマチュア団体を中心に勃興した創作ムーブメントに焦点を当てた「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」が8月21日(日)まで開催中。

〈展覧会概要〉
「TOPコレクション メメント・モリと写真-死は何を照らし出すのか」
会期:開催中〜9月25日(日)まで
会場: 東京都写真美術館 2階展示室
東京都目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00~18:00(木、金曜日は 20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(ただし月曜が祝休日の場合は開館、翌平日休館)
入館料:一般 700円、学生 560円、中高校生・65歳以上 350円
※小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)は無料。
問/東京都写真美術館 03-3280-0099
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4278.html

〈出品作家〉
ハンス・ホルバイン(子)、マリオ・ジャコメッリ、ロバート・キャパ、澤田教一、セバスチャン・サルガド、ウォーカー・エヴァンズ、W. ユージン・スミス、リー・フリードランダー、ロバート・フランク、牛腸茂雄、ウィリアム・エグルストン、ダイアン・アーバス、荒木経惟、ウジェーヌ・アジェ、ヨゼフ・スデック、小島一郎、東松照明、藤原新也ほか

ブラウス¥20,900、スカート¥20,900/ともにルーニィ(ルーニィ 03-4578-3466)、イヤリング¥41,800/アナプノエ(フォーティーン ショールーム 03-5772-1304)、リング太¥15,400、リング細¥14,300/ともにオンブル ビジュー(フォーティーン ショールーム 03-5772-1304) 靴はスタイリスト私物。

掲載した商品はすべて税込み価格です。

Photograph:Satoru Tada(Rooster)
Styling:Mana Kogiso(io)
Hair & Make-up:Hitomi Kawasaki
Text:Tetsuya Sato

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