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1周年を迎えたグッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ
日本の食文化に出合い新構築するイタリアン。

2022.10.31

1周年を迎えたグッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ<br>日本の食文化に出合い新構築するイタリアン。
「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」のレストラン専用エントランス

昨年グッチのフラッグシップショップ「グッチ並木」の最上階にオープンした「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」が、この10月28日に1周年を迎えた。「世界のベストレストラン50」で2度の1位となり、殿堂入りした重鎮、マッシモ・ボットゥーラ同郷の幼馴染であるグッチ 社長兼CEOのマルコ・ビッザーリとのコラボレーションとしてスタートしたコンテンポラリーなイタリアンレストラン。東京店は、フィレンツェ、ロサンゼルスに続く、栄えある3店目だ。ヘッドシェフは南イタリアカンパニア州出身のアントニオ・イアコヴィエッロ氏。南イタリア「ドン・アルフォンソ1890」やデンマーク「ノーマ」などで研鑽(けんさん)を積んだのち、フィレンツェの「オステリア フランチェスカーナ」のオーナーシェフであるボットゥーラ氏のもとで経験を深め、この大役を任された。オープン時から、日本の食材をリスペクトしたクリエイティビティにあふれたメニューを展開してきたが、1年を経て、確実にその料理は進化を遂げたように思う。その理由を、イアコヴィエッロ氏にインタビューした。

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アントニオ・イアコヴィエッロ氏

まず初めに尋ねたのが、初来日から約1年が経過し、料理がどのように変化したと思うか、ということだ。「私はいつも、家族と思い出の味などの記憶をもとに料理を組み立てているのですが、そこに日本のエッセンスがうまくかみ合ってきたように感じています。現在はできるだけ日本の食材を使うようにしています。例えば輸入されたブッラータ(生クリーム入りモッツアレラ)でイタリア料理を作ることには今はまったく興味がありません。それよりも日本だからこそある豆腐のような食材を、イタリア料理使っていきたいと考えています。それほど、日本の食材は魅力的です。具体的にはまず味見して、その後、記憶に変換して料理に落とし込みます。いわばイタリア料理の新構築ということです。東京でやるべきことは、まさにそれだとはっきりしました」との答えが返ってきた。

イアコヴィエッロ氏の日本の素材への興味は尽きず、まるでお菓子屋さんに連れてこられた子どものように、見る食材、触れる食材、どれもが楽しくて、わくわくしどおしだという。改めて食した料理はどれもイノベーティブでありながら、伝統に基づいたバックストーリーがあり、おいしさの軸足のしっかりした、印象的なものばかりだった。たとえば、「フィレット アル ペペ ヴェルデ似て非なるもの」というひと皿は、北イタリアの牛肉を使用した伝統料理にヒントを得て、スモークして炭火であぶったカツオに山椒、柚子胡椒、グリーンペッパーソースでアクセントをつけている。また、1周年を記念したひと皿「松茸とトリュフのリゾット」は、香りの王様同士を合わせると言う、なんともぜいたくな品だ。チーズの代わりに、燻製してクリーム状にした絹ごし豆腐を使用し、チーズのような濃厚さを表現している。イタリア料理の新構築と聞いて、なるほどと、頷ける。

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    “フィレット アル ペペ ヴェルデ” 似て非なるもの
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    松茸とトリュフのリゾット

また、日本の食材を扱ううえでは何より旬を大切にしているという。二十四節気のことも学び、野菜や果実の短い旬をとらえて、メニューに織り込んでいくという繊細な対応も素晴らしい。同時に、素材の持ち味を生かすためにも、エシカルな考え方からも、なるべくオーガニックのものを使用するというのも方針だという。

また、食からできる持続可能な取り組みについて考えオリジナルな料理の創作に反映させている。温暖化の影響で水温が上がり、亜熱帯に生息していた魚が対馬のほうまで上がってきている。そのなかには海藻を食べ尽くしてしまう、バリ(アイゴ)と呼ばれる未利用魚がいるということを知り、8月には対馬まで足を運んだそうだ。バリは値がつかないため、揚がっても漁師は廃棄してしまうという。そこで、どうにかして利用できないかと考え、マンテカート(本来、干しダラで作るペースト)にして、今ではアミューズとして供している。

「対馬から送ってもらうのは、わずかな量ですが、まずは知ってもらうことが大切。われわれが使うことで、バリの価値を発信できたらいいと思っています」と、トップレストランのシェフとしての役割をしっかりと心得ている。そうした姿勢は師であるボットゥーラ氏譲りのものとも言えるだろう。実は、「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」を訪れる顧客層こそ、そうした環境問題への意識が高い。とても親和性のある試行であると感心した。

最後に料理人としての夢や目標を聞いたところ、夢はかなわないこともあるものだから、持たない。今の自分には目標あるのみとの答えが返ってきた。日本の食文化と食材に出合い、やりたいことが次から次へと湧き上がってくるエネルギッシュなイアコヴィエッロ氏。今後も氏の料理から目が離せない。

  • 600_Terrace_4
    アペリティーヴォ・バーを提供する開放的なルーフトップテラス
  • 600_Room-of-Mirrors_1
    グッチ デコール コレクションのウォールペーパーと、ヨーロッパのアンティークミラーで装飾された個室「Room of Mirrors」

グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ
東京都中央区銀座6-6-12グッチ並木4階
03-6264-6606
ランチ11:30~14:30(日曜のみ~15:30)
アペリティーヴォ16:00~18:00(テラス席のみ、季節・天候によりクローズ)
ディナー18:00~23:00
バー18:00~23:00(テラス席のみ、季節・天候によりクローズ)
日曜はランチのみ、不定休

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