特別インタビュー

パタゴニア日本支社 支社長
マーティ・ポンフレー インタビュー[後編]
[ニッポンの社長、イマを斬る。]

2022.12.01

写真・図版

アウトドア企業のパタゴニアは先ごろ全株式を環境系のNPOと信託会社に譲渡すると発表した。ビジネスと地球、両輪のバランスを取る方法について、また、自社の未来についてマーティ・ポンフレー日本支社長に語ってもらった。

<<インタビュー前編はこちらから

「買っては捨てる」のビジネスモデルを変革したい

キャッチコピーは「新品よりもずっといい」──。製品のリペアを当初から行ってきたパタゴニアは2013年から衣類を長く着るためのプラットフォーム『ウォーンウエア』をスタート。米国に続き、日本でも限定イベントなどで展開しているが、今年1月には日本独自のサーキュラリティ(循環性)部門を新設し、ビジネスを加速する構えを見せている。

「昨年、渋谷ストアで限定イベントを開催したときは在庫が足りなくなりそうな勢いだった。中古品は新品のサプライチェーンとサイクルが異なる。買い取った製品をクリーニングし、しっかりと再販売できるような状態へと持っていく必要がある。われわれはまだ学びの最中ではあるけれど、予想以上の手ごたえは感じているね」

『ウォーンウエア』は「買っては捨てる」という悪しきビジネスモデルへの問いかけでもある。製品の寿命を長くし、「必要なものを大切に使う」メッセージをも送る。また、中古品事業は価格帯が抑えられるため、若いファンに訴求しやすい。ターゲットの若返りはアパレルによくある話だが、未来の地球を担う層だけに『パタゴニア』ではより深い意味を持つのだ。

「パタゴニアはブランドとしてストーリーテリングを大事にしてきた。新しい製品でも環境保護の活動でも『なぜ、それをするのか?』の背景を伝えてきた。日本市場での展開は30年以上を経ていてブランドの歴史やストーリーが根付いていると感じる。マーケットが大きすぎないからこそ動きやすいし、さまざまな調整も利きやすい。

『ウォーンウエア』のビジネスと食とエネルギーの事業を強化したいのもそんな国だからこそだ」

同社は10年ほど前からオーガニックフードの『パタゴニア プロビジョンズ』をスタートしている。当初は「アパレルが食品を?」との声も上がったが、公式サイトの記載を見れば納得するだろう。

「新しいジャケットは5年か10年に一度しか買わない人も、一日三度の食事をする。われわれが本気で地球を守りたいのなら、それを始めるのは食べ物だ」──。

『プロビジョンズ』は農業形態を見直すことで環境保護を考える。多年生穀物を使ったクラフトビール、天然の窒素を土に与える豆のスープ、農薬や化学肥料をまったく使わないラインアップで構成する。パタゴニアは千葉にソーラーシェアリングの施設を所有しているが、電気を自分たちのストアに供給するだけではなく、パネルの下で農作物を育ててもいる。21年にはそこで収穫した米を用い、日本酒を発売した。マーティは続ける。

「農業は排出物に関する土壌汚染などの問題があるが、アパレルで試行錯誤してきたように、新しい在り様を模索できると考えている。規模としてはまだ小さいけれど、拡張可能な解決策だし、つなげていけば着実に前に進む力になる。僕らがやっていることを大きな企業や団体がさらに広げる日がきっと来る。そんな流れを期待しているんだ」

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