カジュアルウェア
ステンカラーコートの絶対名品と称されるグレンフェルのスリム キャンベル。
長く愛される理由は?
ファッショントレンドスナップ186
2023.06.06
服やモノを長く使いつづけることは、エコライフやSDGsの目線で見てもとても大切な考え方。そのため、定番デザインやロングセラー商品といったものが再注目されはじめています。
今回は、ステンカラーコートの名品を取り上げ、長く愛されている理由を探ってみようと思います。
今回のジェントルマンは、ベージュのステンカラーコートをはおってオフィスからランチに出かけるところをスナップさせていただきました。
「いま着ているのは、イギリスのアウターブランドのグレンフェルのステンカラーコートです。いまでも生地から縫製まで一貫して自社工場で行っている気骨あるブランドです。サイズ感がほどよく、シンプルなデザインなので、スーツからカジュアルスタイルまで幅広く使えて重宝しています」と話を切り出していただいたのは、会社員の福寿和也さん。実はこのコートを輸入している会社にお勤めの方だったので、いきなりうんちくが飛び出しました。
「このステンカラーコートは、イギリスでロングセラーになっているキャンベルを全体的にスリムにしたモデル。ラグランスリーブならではの、肩のラインに沿って流れるように落ちるカーブと、全体がきれいなAラインになるのがポイントです。名作と称されるコートも、時代感を少しだけプラスすることで、生き残っていけるのだと思います」と福寿さんのコート愛が感じられる解説。
グレンフェルのコートの人気が衰えない理由は、定番デザインのサイズ感を絶妙にアレンジしていたからだったのです。この微調整は実はかなり難しく、やり過ぎはNG。そこのあんばいが上手なブランドだけが、生き残っているともいえます。
ステンカラーコートを長く使いつづけていくうえで、シンプルデザインであることと、もうひとつ大切な要素が素材。長く使うことを前提にして作られていない生地を使うと、どうしても数年で限界が出てきます。
「グレンフェルは1923年の創業ですが、元々は生地メーカーとしてスタートしていました。当時に開発されたのが、今も作りつづけられているグレンフェル クロス。高密度に織られたギャバジン生地で、独特の張りがあり、長く着込むほどに独特の風合いが生まれ愛着が湧いてきます」とヘビーユーザーである福寿さんならではのコメント。
デザインがシンプルなコートは、素材やパターンのよしあしでイメージがガラっと変わってしまいます。グレンフェルの生地は、100年以上前に開発されたものではありますが、現代のハイテク生地には出せない独特のつや感が特徴。
ぜひ、長く愛用しビンテージデニムのようにエイジングを楽しんでみてはいかがでしょうか。
Photograph & Text:Yoichi Onishi