週末の過ごし方
俳優・町田啓太と考える、装う美学。
人生の相棒と「神無月」に出合う。
2023.10.27
日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。
本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」としてつづっていく。
英国王室御用達ブランドで、
"良縁"をつないでいく。
10月の和風月名、神無月(かんなづき)の由来は、「無」が「の」にあたる連体助詞であり、つまりは「神の月」、神を祭る月であるというのが有力だ。この月に日本各地におわす八百万(やおよろず=数がきわめて多いという意味)の神が出雲大社に集うため、諸国に神が不在となることから「かみなしづき」と読む説もある。そしてそれに対し、出雲国(現在の島根県)では「神在月、神有月(かみありづき)」と呼ぶ風習が残るのも興味深い。
「万物に神が宿るという日本的な考えが自然と根付いているからか、自分は幼いころからモノを長く大切に使うほうだと思う。もちろん、洋服についてもしかりで、特に状態が良ければ友人や年下の役者仲間に無償で譲りつないでいくことも多い」
そう語る町田啓太に、ただただ猛烈なスピードで消費されるだけのモノではなく、大切にすることで長く自身の人生に寄り添い、時には次の所有者へとつなげられるものを――。そんな思いを込め、今回われわれが用意したのは英国王室御用達ブランド「バブアー」のルック。ブランドのアイコンであるワックスジャケットは、人生の相棒として長く着用することを想定し堅固に仕立てられており、メンテナンスのノウハウもきちんと確立されている。丁寧な着用とメンテナンスを心がければ、20~30年は優に着られるだろう。
加えて、今回のジャケットは英国の名門アウターブランド「バラクータ」とのコラボで、シャツとパンツはパリや東京の感性が息づく「メゾン キツネ」とのコラボにより完成したアイテムであることもキモだ。英国らしい「質実剛健」さを保ちながらも、ステレオタイプな「クラシック」に捉われない現代的で多様な感性が光るスタイリングは、町田の紳士的で、自身の仕事に対する誠実で柔軟な姿勢と重なる。
「世界的に見て、今という時代はいろいろな価値観の転換期にあるのかもしれない。そんななかで、日本古来の考え方にはいいところがたくさんあり、変えてはいけないところも多い。今の時代をしっかりと呼吸し、それらをちゃんと見定めたい」
ところで、八百万の神は神無月に出雲に集い、何をしているのか――? 調べると、「縁結び」の会議をしているということがすぐわかる。当然それは、いわゆる「色恋沙汰」のことだけに限らず、仕事や天候、農作物の収穫などなど、それこそ八百万だ。
町田とファッション、そしてわれわれをつなぐ「良縁」が、これからもさらに広く強固につながることを切に祈る。
FROM EDITOR
髪を結んだ姿で写真に収まった町田さんを見て、「これはこれで良し!」と思ったのは僕だけではないでしょう。「町田史上、最も長髪」(ご本人談)の記録は、まだまだ更新されそうです。神有月の出雲での会議では、町田さんの役者としての「縁」が間違いなく良い方向に結ばれたことでしょう。もちろん、アエラスタイルマガジンとのご縁も……。11/7(火)に発売される雑誌や、これからの本連載にご注目ください!
アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)、『フィクサー』(WOWOW連続ドラマW)など話題作に多数出演。来年には大河ドラマ『光る君へ』の出演が控える。
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)