腕時計
腕時計を着ける男、本を読む男。
2024.03.26
世の中には、ふたつのタイプの男が存在する。腕時計を着ける男と、着けない男。腕時計を着けない男は、スマホで時刻を確認しているらしい。時刻に限らず、ニュースも為替の相場も、仕事のメールも、自分の健康状態さえも。世の中のすべてとは、スマホでつながっている。
あくまでも個人的な見解ではあるが、私はそういう人を信用しない。スマホの充電が切れた途端に、閉店ガラガラ。世の中が、仕事が、健康が、スマホの機嫌次第というのは、どうもいただけない。
腕時計を着けている男からは、自分自身で事に当たろうとする意志を感じる。スマホ頼み、ひと頼み、会社頼みではなく。時間をコントロールして、人との約束を守り、自分の価値基準で世の中を把握する。そんな人を「男前」だと、私は感じる。
スーツに似合う腕時計を語るとき、これまでであれば「視認性のよい3針」「エレガントな革ストラップか機能的なメタルストラップ」といった条件を挙げてきた。いま、働き方も大きく変わり、それに伴ってスーツの着こなしも自由になった。その日の仕事内容や働く場所によって、タイドアップでもストールでもニットでもはばかられることはない。であれば、腕時計選びも自由でいい。ピンクの文字盤も、スポーティーなクロノグラフ計も、ツートーンのリボンストラップもスーツに着けるのを解禁していいだろう。
ここに並んだ腕時計の共通点は、機械式であること。意志ある男の腕元には、ゼンマイの力で駆動する機械式時計がよく似合う。いま、機械と呼ばれるもののほとんどは電気の力で動いている。もちろん、スマホもそのひとつ。機械式時計は、ゼンマイを巻けば動く。しかも正確に。このシンプルな仕掛けは、男たちの相棒と呼ぶに値する。
もうひとつ言うならば、世の中にはふたつのタイプの男が存在する。本を読む男と、読まない男。自分だけの見識に頼らず、先達の知恵に学ぶ。そんな、本を読む男を私は信用している。
Photograph:Masanori Akao(whiteSTOUT)
Styling:Masayuki Sakurai
Hair & Make-up:Shotaro(SENSE OF HUMOUR)
Edit & Text:Kenji Washio