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『マーダーズ・イン・ビルディング』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #69

2024.04.04

『マーダーズ・イン・ビルディング』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #69

一度は訪れてみたい憧れの街、ニューヨーク。経済、アート、ファッション、多様性、あらゆる分野で世界をリードしているがゆえに、この街を舞台としたドラマは多く、『セックス・アンド・ザ・シティ』『SUIT』『フレンズ』『ホワイトカラー』『アグリーベティ』『ゴシップガール』など……と、スタイリッシュな大ヒット作品が勢ぞろいだ。

『マーダーズ・イン・ビルディング』は、ジョン・レノンが住んでいたダコタ・ハウスや、シアターが並ぶリンカーンセンターなどがあり、高級住宅地として知られるアッパーウエストサイドが舞台のミステリーコメディドラマ。メインキャストには、コメディ界のレジェンドであるスティーブ・マーティン、マーティン・ショート、歌手・女優として活躍するセレーナ・ゴメスとかなり豪華!

ダウンタウンの喧騒から離れた閑静な住宅街にたたずむアパート「アルコニア」。そこには、若いころに人気ドラマの主人公を演じ一躍人気者となったが、現在はセミリタイヤしている俳優チャールズと、アパートの管理費を滞納しギリギリな生活を送っている劇作家のオリバー、叔母の所有している部屋の改装を頼まれたというメイベルらが住んでいた。

ある日、アルコニアにて緊急避難のサイレンが鳴り、事態を把握するまで住民たちは外に締め出された。避難した住民でごった返す近所のレストランで、仕方なく相席になった3人は、お互いが同じポットキャストの実録犯罪番組のファンであることを知り、意気投合する。

ほとぼりが冷めたころかとアパートに戻ると、なんと住人のひとりであるティム・コノが自殺したという。しかしどうもおかしい、偶然にも1時間前、同じエレベーターに乗っていた3人は、彼が自殺をするような様子には見えなかったのだ。実録犯罪番組のファンである3人は、どうしても好奇心を抑えることができず、独自に捜査し、ポットキャスト番組を始めることに。

コメディ色が強いなかにも、ミステリーとしての見ごたえもたっぷりある素晴らしい脚本。アパートに住む住民すべてが疑わしく思えるほどクセの強い住民ばかりで、視聴者をたびたび混乱させてくれる。そのなかに、なんとスティングがスティングとして出演しているのだから、驚きを通り越して笑ってしまう。そして、3人の中にも疑わしい者まで出てきてしまうのだから、まったく結末の予想がつかない……。

2人のかみ合わない老人コンビと、「Fワード」を連発する現代人メイベル。犯罪マニア以外共通点はあまりないように見えるが、この大都会ニューヨークで、過去にとらわれ孤独に暮らしているということが、大きくこの3人の絆を深める要素になっている。

事件を追うごとに、家族のような、友人のような、お互いを支え合う奇妙な関係になってゆく姿に心温まる。

スティングに加え、メリル・ストリープ(なんと演技がヘタな役者⁉)や、カーラ・デルヴィーニュ(セリーナと恋仲に⁉)、ポール・ラッド(いけ好かないスーパースター⁉)など、豪華すぎ、かつユーモアに富んだキャスティングをしているのも本作の魅力。

ミュージカルシーンでは『ラ・ラ・ランド』や『ヘアスプレー』の音楽スタッフがオリジナル楽曲を担当しているというのだから、まさにニューヨーク! 世界のトップレベルぞろいだ。すでにシーズン4の制作も決まっており、次回作のキャスティングにも期待に胸が躍る。

日本語吹き替え版では、チャールズ役に羽佐間道夫、オリバー役に山寺宏一、メイベル役に林原めぐみと、こちらも豪華キャスト! 字幕版も、吹き替え版も、こんなに豪華キャストが勢ぞろいするドラマは、なかなかないだろう。

『マーダーズ・イン・ビルディング』は、ディズニープラスにて配信中。本作こそ、いま最もぜいたくなドラマなのかもしれない。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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