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『Mr.&Mrs.スミス』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #85

2024.11.14

『Mr.&Mrs.スミス』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #85

2005年にブラッド・ピッド、アンジェリーナ・ジョリーのW主演&初共演が話題となり、大ヒットを飛ばした『Mr.Mrs.スミス』がドラマになって登場。

映画版とは設定も、キャラクターも、ストーリーも、全くの別物だが、夫婦そろって秘密組織のエージェントという設定は同じ。ハリウッド版では、華やかで派手なアクションシーンが満載だったのに対し、組織で活動しながら夫婦関係を続けていくことの難儀さ、実態がつかめない秘密組織の脅威、激しくバイオレンスな夫婦喧嘩などなど、二人の関係性を綿密に描きつつ、かなりシュールでブラックユーモア満載のスパイアクション・コメディードラマだ。

AI面接によって選ばれた、元軍人のジョンと元CIAのジェーン。面識もない二人は、用意された家に住み、夫婦として秘密組織の任務を遂行する。二人に与えられた家は、設備の整った豪邸で、報酬も桁外れ。ジョンとジェーンはもちろん偽名で、毎回チャットアプリに任務内容が届き、それらを二人で協力し、遂行しなければならない。

任務内容は、「小包を盗め」「〇〇を誘拐し、運べ」など、理由は追求しない決まりで、すべき内容だけがテキストで送られてくる仕組みだ。しかし、3度任務に失敗したら、組織から追い出され、何をされることやら……

仕事内容についてはお互い想像の範囲内だが、偽装結婚とはいえ、生活を共にしなければならない。ジョンは社交性もあり、お互いのことを知るためにコミュニケーションを図ろうとするが、ジェーンは適度な距離感を望み、マイペースなタイプ。ジェーンはやたらと詮索してくるジョンに、最初は戸惑っていたが、任務をこなしていくうちに、二人はひかれ合っていった――しかし!?

性格や、生き方が、まるで正反対な二人。これがつり橋効果というものなのか、危険な場面を共に乗り越えていくうちに、恋愛関係になってしまったのだ。お互いを知り合うはじめの段階では、とてもうまくいっていたが、子どもを持つ?”“仕事はいつまで続ける?”“上司に気に入られている”“尊重してほしいなど、仕事の上では不満が、夫婦のことでは意見の相違が次第に目立ちはじめ、言い争いが絶えなくなってしまう。

それはまるで恋愛リアリティ番組のように生々しく、「職場恋愛」にありがちな悩みを、秘密組織のエージェントが抱えているのがなんとも滑稽で、申し訳ないが面白い。絶妙なのは、どちらかが一方的に悪いわけではなく、どちらにも感情移入できてしまうところだ。立場、実力、環境、様々な状況を加味して、どちらの目線で見るかは意見が分かれるところだろう。

映画版と設定は違えど、印象深かったカップルセラピーのシーンはドラマでも取り入れられており、本作の見どころのひとつとなっている。そのほかにも、似たシチュエーションは多数登場するので、本作を観終わった後、ぜひ観返してみてほしい。

ジョン役を演じたドナルド・クローヴァー(別名チャイルディッシュ・ガンビーノ)は、主演のほか、製作総指揮、脚本、監督も務めている。加えて『アトランタ』や『This is America』でタッグを組んだ映像作家ヒロ・ムライも製作総指揮&監督で参加しており、さすがとしか言いようがない素晴らしい作品に仕上がっている。

Mr.&Mrs.スミス』は、Amazon Prime Videoにて配信中。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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