週末の過ごし方
“カルト的人気”のワインを求め、
いざ、南イタリア・プーリアへ。
2024.11.20
以前からピッティやミラノコレクションの取材期間中、同業の諸先輩方から「プーリア(ブーツに例えられるイタリアの〝かかと〟のあたり)は行ったほうがいい」とよく言われてきた。確かにタリアトーレ、イーヴォ、チルコロ 1901など、同地に本拠を置くファッションブランドは多く、彼らの提案は日本のマーケットでも人気で、「プーリア勢」と呼べるような勢いを感じていた。その生産背景、クリエーションの源には興味がある。その旨を、とある大先輩に伝えると、「それも素晴らしい。でも、注目すべきは食文化と風土」。そして、「日本で言うと、〝宮崎〟だ」とも。宮崎……? わかるような気もするが、なんとなくモヤモヤしつつ、数年が過ぎた──。
「プーリアに来ませんか?」という、願ってもない提案をしてくれたのは、「サン・マルツァーノ」というワインブランドだった。同ブランドは、1962年よりプーリア州のプリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア(保護原産地呼称)エリアの中心に位置する小さな町で、クオリティーの高いワインを造ることで知られる。
その歴史のわりに(欧州におけるワインの歴史は気が遠くなるほど長い!)、品評会での受賞歴は多く、その希少性も相まって、ある種の「カルト的人気」を有している。そんなブランドからのステキな提案に、二つ返事で応えた。
イタリア半島の南東に位置するプーリア州は、東にアドリア海とオトラント海峡、南にイオニア海とターラント湾に囲まれる。有名なのは、なんと言ってもアルベロベッロ。高い円すい形の屋根と白壁が印象的なトゥルッリと呼ばれる建築群は、まるで「おとぎ話」の世界を思わせ、その唯一無二の景観は世界遺産に登録されている。
海に囲まれているエリアということもあって、シーフードが豊富だ。カキ、ムール貝、エビなどを生食する文化があり、日本人にも親しみやすい。豚肉や野菜、唐辛子をよく使うのも特徴的で、モッツァレラやブッラータ、ストラッチャテッラといったチーズの食べ比べも楽しい。
そんな美食を生む風土は、ハイレベルなワイン文化も醸成させる。その代名詞がサン・マルツァーノなのだが、ひと言ではその特徴を表せない。高樹齢の老木から得たブドウで造る「セッサンタアンニ」(赤)の奥深く複雑な味わいは〝看板〟には違いないが、エレガントな味わいの「エッダ」(白)や華やかな「トラマーリ」(ロゼ)なども秀逸。表情豊かなプーリアの景色と同じく、自身の気分や合わせる料理で、その瞬間のベストを選びたい。
ところで、冒頭の先輩から言われた「宮崎問題」だが、それは少し違う気がした。だって、プーリアは唯一無二なのだから!
問/モトックス(輸入元) 0120-344101
Photograph:Mitsuya T-Max Sada
Text:AERA STYLE MAGAZINE