週末の過ごし方

俳優・町田啓太と考える、装う美学。
「霜月」の外套は、芯のある軽やかさで。
【第二期】

2024.11.27

俳優・町田啓太と考える、装う美学。<br>「霜月」の外套は、芯のある軽やかさで。<br>【第二期】

日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。

本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」(第二期)としてつづっていく。

風格あるトレンチをまとい、
装う美学の本質を知る。

町田啓太02

「神は細部に宿る」とは、近代建築の巨匠として知られるルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが残した名言。その意味するところは言わずもがなだが、デザインやプロダクトはもちろん、人生におけるさまざまな面において「言い得て妙」なことが多い。

町田啓太が従事する俳優業においても、それはしかり。自身も十分にそのことに留意すると言う。

「例えば……、放送中の大河ドラマ『光る君へ』で演じる藤原公任。若いころは貴族のサラブレットとして、とても勢いがあった。ゆえに烏帽子(えぼし)を深めに、やや前下がりに被るようにした。理由はそのほうがシャープに“らしく”映るからで、逆に権力争いに敗れ、年齢を重ねてゆくうちに浅めにかぶるようにしていった。役作りにおいて、キャラクターの背景や設定を細かく考えることはとても大切だと思う。少なくとも、自分はそうしたい」

町田啓太03

メンズファッションにおいて、こだわりのディテールの集積が“本物”のムードに昇華され醸し出されることはままある。今回の撮影で町田がまとったアクアスキュータムのトレンチコートにそれらは顕著で、町田の“芯”を精悍(せいかん)に際立たせる。

「トレンチコートには、本物を知る“大人”のイメージがある。学生時代はその風格に憧れ、自分も早く似合うようになりたいと思ったものだ。いま改めてコートのディテールに目を向け、その意味を知ることは楽しい。まとう際の心持ちが変わってくる」

町田啓太04

トレンチコートの出自に目を向けると、第一次世界大戦(1914年~1918年)中の英国陸軍が開発し採用した塹壕(ざんごう=トレンチ)戦用の外套にたどり着く。ミリタリーウエアの鉄則として、兵士たちが生き延びるための高い機能性(開発当時)が盛り込まれており、それぞれのディテールに相応の意味がある。それらを語り合う町田との“こだわり”の服飾談議は実に楽しい。ただ、町田はそれを確かに認めたうえで、こうも語る。

「自分の感覚的に“こだわり”という言葉自体に、“拘泥”や“固執”に含まれるようなネガティブな印象はあまりない。ただ、それは決して独りよがりな“エゴ”であってはならないとは思う。もちろんエゴを突き詰めて、ある意味で行き切ってしまうカッコ良さもあるだろう。でも、自分はそういうタイプではない。自分の仕事(俳優業)は、一人では成立しえない。細かな“こだわり”をひとつのアイデアとして、相手がちゃんと捕れるボールとして投げかける。そんなキャッチボールを繰り返すことで、クリエイティブな“表現”を自由に膨らませていきたい」

町田啓太05

ファッションも表現である。他者との関わりを避けられない以上、ある一定のルールが必要であることは間違いない。だがしかし、その本質は“自由”であるべき。かつての銀幕スターのトレンチの着こなしの鉄板は、タイドアップしたスーツスタイルにボルサリーノだった。翻っていまなら、ルーツやディテールを理解したうえで、あえてクルーネックシャツにスニーカーを合わせるという選択もクール。そんな芯のある軽やかさこそ、現代の「装う美学」には欠かせない。

町田啓太06
トレンチコート(KINGSWAY)¥242,000/アクアスキュータム(アクアスキュータム aquascutum-press@renown.co.jp)、その他スタイリスト私物

FROM EDITOR

先日、町田啓太さん初の単独ファンミーティングにお邪魔してきました。髪をバッサリと切り、ファンたちの前に颯爽(さっそう)と現れた町田さん。その表情は実に晴れやか。会場中を埋め尽くす“愛”に触れ、それ以上のありったけの“愛”で応えようとする姿に、改めて「この人を推していて良かったな」と感じた次第です。今年睦月の小欄に「町田啓太は周囲を良い場所に連れて行ってくれる」とつづりました。そのワクワク感は、来年も続きそう。芸能活動15周年を迎える現代を代表するファッションアイコンの躍進に、まだまだ目が離せません。
☆追記/2年間にわたる本連載は今月で終了。ご愛読、ありがとうございました。新展開にご期待ください。

アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾

町田啓太07

NEWS

町田啓太さんの掲載ページは20P以上! アエラスタイルマガジンvol.57好評発売中!! 

町田啓太(まちだ・けいた)
 1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。大河ドラマ『光る君へ』の出演も要チェック!

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Photograph: Satoru Tada(Rooster)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)

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