週末の過ごし方
ひとつの企業から、ある郊外の街が
変わったことを知っていますか?
【センスの因数分解】
2024.12.17
“智に働けば角が立つ”と漱石先生は言うけれど、智や知がなければこの世は空虚。いま知っておきたいアレコレをちょっと知的に因数分解。
ここ数年、注目度が急激に増した東京郊外の街を知っていますか? 2024年首都圏版『住みたい街(駅)ランキング』で第4位になった立川です。この街の魅力的コンテンツのほとんどを、実はひとつの企業が手がけています。
立飛ホールディングスは、飛行機製造をしていた立川飛行機を前身とし、市内の総面積の約25分の1を占める大地主企業です。重量のある機体製造に耐えるようつくられた堅牢な施設を倉庫に利用する業務形態をメインとしてきました。貸倉庫という安定した業務から開発へと大きく舵を切ったのは、村山正道現社長が就任してから。ハードからソフトまで、枚挙にいとまがない立川のプロジェクトは、立飛ホールディングスの村山社長が発端となっているのです!
「市内に広大な面積を所有しながら、かつては地域との関わりが希薄で、“立飛は何をやっているかわからない”と言われていました。私がやろうとしたのはその逆です。街の活性化につながることだけしかやらない、ということでした」
村山社長はその決意をどんどんと行動に移していきます。文化芸術、そしてスポーツ開催の受け皿となる『アリーナ立川立飛』や『ドーム立川立飛』をはじめ、約1000㎡の広場と商業施設にホテル、美術館、多機能ホールなどの入った複合施設『グリーンスプリングス』をオープン。浅田真央さんプロデュースのスケートリンク『マオリンク』も控えています。それだけではありません。保育園といった、日々の暮らしをサポートしてくれる施設にも注力しています。演劇やスポーツイベントなどのソフト面も多様。社長就任から15年足らず。驚くべきスピードとアイデアです。
「行政がやらないのなら私がやる、という心持ちではいます。開発のアイデアは、女性の意見がヒントになることがほとんどです。ハッとさせられることを言ってくれます」
柔軟に意見を取り入れることで、立川に注目する人はどんどんと増えていきました。少子化対策は国政でも取り上げられていますが、立川の人口は増加傾向で現在約18万7000人。駅の利用者数も、沿線の人気駅・吉祥寺を抜き中央線では新宿駅に次いで2位です。
「浮利は追わず、です。目先のもうけのためにやる、では人は集まってこないと私は思います」
村山社長に話を聞くため向かった本社のエレベーターには、歌舞伎やイベントなどのポスターがにぎにぎしく貼ってありました。
「これでもまだ少ないほうです。社長が就任以来、毎月何かしらあるので、私たちもワクワクがずっと続いていくんです」と案内してくれた社員の方が話していました。
「開発にはバランスが重要。あれもこれもではなく。将来負の遺産となるのがわかることは選ばず、地域の未来を考えていきたい」と村山社長は言います。そのビジョンは、地域を会社にも置き換えられるのではないでしょうか。目先の利益ではなく、続く満足のためにバランスを考えて、今やる。地域も企業も大事なことに違いなどないと、語っているようです。