カジュアルウェア
内野聖陽、味わいが増す逸品と共に
味な男と、トッズの肖像。【前編】
2025.03.28
レザーや麻ならではの魅力といえば、着込むほどに味わいを増す姿。それは、多様な役を演じる役者にも通じる。熱中し、追い込み、勝負し、時に負ける。その積み重ねが、役者だけでなく、人間としての深みを増す。

「経年変化が楽しめるレザーは、昔から好きです。シワが刻まれたレザーのワイルドな雰囲気って、味わいがあってカッコいいですよね。でも、そろそろ年齢的にもワイルドなだけでは面白くないですね。ここ数年は、エレガントな要素も意識しています」
今回着用したキッドスエードを使ったパシュミーシャツジャケットは、まさしくであったとか。
「深みがあるものって人でも物でも惹かれます。奇麗なだけ、優しいだけ、武骨なだけではなく、もう一歩奥に何かを秘めているというか、そんな奥深さが事物を魅力的に見せるんだと思います。このジャケットも、名門レザーブランドとしての長年の研鑽(けんさん)があればこそできた一着なのでしょうから」
30年以上のキャリアを積み重ね、先日第48回日本アカデミー賞では優秀助演男優賞を受賞。日本アカデミー賞での受賞は、1997年の新人俳優賞を含め3回目となる。

「年齢的にもキャリア的にも、周囲からベテランとして見られるようになってきました。ただ、自分としてはいくつになっても常に挑戦する姿勢を忘れたくないですね。役者って、ある種の戦いだと思っているんです。気を抜いたり、甘んじていたりすると、すぐに負けてしまう。それなりの年齢、キャリアになったからこそ、そんな緊張感を持ちつづけたいです」
達観や悟りという言葉は、自分には無縁。常に最前線に身を置く。
「いつもギリギリですよ( 笑)。ひとつの役を演じるために、時間をかけて試行錯誤を重ね、自分の中で納得できるものを身に付けて撮影に臨んでいます。そうでないと、いろんなことに負けてしまいますから」

ラムレザーを使ったショートトレンチは、素材のやわらかさに加え、ゆとりのあるシルエットがリラックスした着心地に。貫禄があり肩の力が抜けた雰囲気は、内野さんのスタンスと調和する。
「以前、土佐弁を習得するために、高知県に行き地元の方たちとお酒を飲みながら交流しました。単にイントネーションを覚えるのではなく、風土や慣習を体感することが大切。そのためには、感覚も態度もいつも開いていられたらと思いますね」

その自然体な中にもプライドが――。(後編に続く ※4/4[金]公開予定)

内野聖陽(うちの・せいよう)
1968年生まれ。1993年に俳優デビュー。NHK大河ドラマ『風林火山』(2007)では主人公・山本勘助役、『JIN–仁–』シリーズ(09、11)では坂本龍馬役を演じる。2019年放送のドラマ『きのう何食べた?』での演技も大きな話題に。WOWOWオンデマンドにて毎週日曜日午後10時に配信中のヒューマンドラマ『ゴールドサンセット』(全6話)では主演を務める。
問/トッズ・ジャパン 0120-102-578
本誌にはWebでは見られない内野聖陽さんの写真が多数掲載!
「アエラスタイルマガジンVOL.58 SPRING / SUMMER 2025」より転載
Photograph:Masafumi Tanida(CaNN)
Styling:Hiroshi Nakagawara(CaNN)
Hair & Make-up:Yuko Sato(Studio AD)
Text:Masafumi Yasuoka
Edit:Ai Yoshida