カジュアルウェア
内野聖陽、味わいが増す逸品と共に
味な男と、トッズの肖像。【後編】
2025.04.04

レザーや麻ならではの魅力といえば、着込むほどに味わいを増す姿。それは、多様な役を演じる役者にも通じる。熱中し、追い込み、勝負し、時に負ける。その積み重ねが、役者だけでなく、人間としての深みを増す。
「ハマり役でしたねってよく言われるけど、ちょっと複雑。うれしいけど、ハマったんじゃなくてハメるために苦闘したんだよ!って、正直思います(笑)」
役者として30年以上のキャリアを築いてきた内野さん。最近、世代による変化を感じるという。
「大河ドラマで主人公を務めさせていただいた際に、往年の映画スターの方々と共演する機会に恵まれました。皆さん、ものすごくビリビリとしていたんです。鬼気迫るって、こういうことなんだなと。そんな世代の役者さんは、役のために、例えばヤクザに喧嘩を売るようなこともあったり、いろいろと滅茶苦茶なこともあったみたいですね。今の時代は、許されないことでしょう。時代の流れに柔軟であることはもちろん大切だと思いますが、いわゆる昭和の世代で生きてきた荒ぶる魂の先輩役者に対する憧れと尊敬は、いつもどこかにある気がします」
もがくこと、苦しむこと
それが楽しさにつながる

軽やかでサラリとした風合いが魅力の麻を使ったセットアップ。それでいて麻は耐久性に優れ、長く愛用できる。そして、シワさえも味になる。積み上げた経験を武器に、監督やプロデューサーとして新たな活躍の場を求める役者が散見される昨今について、内野さんはどう見ているのか。
「自分の中にある演出力を試してみたい気はあります。でも、自分はまだまだ未熟。常に自分に対して目を光らせていないと、ダメになってしまう弱さもある。そもそもやはり、役者一本槍なとこが自分らしいと思っています」
慣れを嫌う内野さんは、同じ役を引き受けることはないそう。

「未経験で不思議な役は惹かれます。新しい役の度に苦しい思いをするけど、もがく中でこそ新しいものって生まれるんだと思うんですよね」
とはいえ、ひたすらなストイックとは、また違うのだとか。
「大変な役が次から次へと来るので(笑)、オフであっても気を抜きすぎるとバランスが崩れちゃうんです。仕事中は、常に身構えている部分があるので。でもそのほうが、いざ現場に入ったときに楽しめるんですよね」
レザーや麻をしなやかに、そして軽やかに着こなす裏側には、日々の中で貫かれる矜持(きょうじ)がある。

内野聖陽(うちの・せいよう)
1968年生まれ。1993年に俳優デビュー。NHK大河ドラマ『風林火山』(2007)では主人公・山本勘助役、『JIN–仁–』シリーズ(09、11)では坂本龍馬役を演じる。2019年放送のドラマ『きのう何食べた?』での演技も大きな話題に。WOWOWオンデマンドにて毎週日曜日午後10時に配信中のヒューマンドラマ『ゴールドサンセット』(全6話)では主演を務める。
問/トッズ・ジャパン 0120-102-578
本誌にはWebでは見られない内野聖陽さんの写真が多数掲載!
「アエラスタイルマガジンVOL.58 SPRING / SUMMER 2025」より転載
Photograph:Masafumi Tanida(CaNN)
Styling:Hiroshi Nakagawara(CaNN)
Hair & Make-up:Yuko Sato(Studio AD)
Text:Masafumi Yasuoka
Edit:Ai Yoshida