週末の過ごし方
近くてアツい、冬の香港へ!
(前編・街歩き編)
2026.01.28
東京からのフライト時間はわずか3〜5時間なのに、圧倒的な熱気と異国情緒で来訪者の五感を刺激する街、香港。東洋と西洋、現代と過去が交錯して生まれた独自のカルチャー、そして美食の数々。香港は日々アップデートを重ねており、常に最新の楽しみ方が待ち受けている。この時期、香港は過ごしやすく街歩きにもベストシーズン。まず前編では、話題の最新スポットとおすすめの過ごし方を紹介しよう。
定番ビクトリア・ピークに、最新カフェ&レストランが登場!
小高い山の上から夜景を一望できる香港屈指の観光スポット、ビクトリア・ピーク。冬の香港は気候が安定し、湿気も少ないため、眼下の街明かりがとりわけ美しく見える。
筆者は取材やプライベートでここへ幾度となく訪れているが、ピークトラムに揺られながら頂上へ向かう道のり、そして展望台から見下ろす光景にはいつ見ても心が奪われる。起伏豊かな香港島と九龍半島、またその間に挟まれたビクトリア・ハーバーなど、香港の地形をパノラマで堪能でき、人々が生み出すエネルギーやダイナミックさが光の洪水となって迫る。「香港に来ると運気がアガる」「パワーチャージできる」という声をよく聞くが、ここビクトリア・ピークはそれが最も体感できるパワースポットだ。
さて、こちらのビクトリア・ピーク。もしあなたが「眺めのよい展望台」程度に考えているのであれば、それはちょっともったいない。実は山頂周辺にはザ・ピークタワーやザ・ピークギャラリアといった大型商業施設が立ち並び、人気飲食店も数多い。景色だけでなく食事も楽しみに上ってこそ、旅のハイライトも言える最高に贅沢な時間を過ごすことができるのだ。
今話題なのは、ザ・ピークタワーのレベル1に入るLA VACHE! PEAK(ラ・バッシュ!ピーク)だ。牛肉で最高級部位のひとつとされるアントルコート(あばらの間の肉でほどよい霜降りとうま味が特徴)に定評のあるステーキハウスで、肉と絶景のダブルでパワーチャージが楽しめる。肉への自信の表れか、潔すぎるメニューはなんとステーキフリット1種類のみ。ランチ営業もしているが、人気なのはやはりディナータイム。窓側席を予約する場合は1テーブルあたり1500香港ドル(約3万450円)〜の最低利用料金が課されるが、それでもこの特等席をおすすめしたい。
LA VACHE! PEAK
https://www.lavache.com.hk/
ちなみにザ・ピークタワーにはミシュラン星付きレストラン「JARDIN DE JADE(ジャルダン・デ・ジェイド)」の姉妹店であり、中国四大料理に数えられている淮陽料理と上海料理が楽しめるチャイニーズレストラン「PETIT JARDIN(プティ・ジャルダン)」や、中環や湾仔で人気のベーカリー「BAKEHOUSE(ベイクハウス)」も昨年オープンするなど、食の楽しみが一段と増している。いずれにしても、ビクトリア・ピークへはおなかをすかして上ってみよう。
PETIT JARDIN
https://www.thepeak.com.hk/en/dining-and-shopping/dining/petit-jardin
BAKEHOUSE ピーク店
https://www.thepeak.com.hk/en/dining-and-shopping/dining/bake-house
もし日中に上るのであれば、ザ・ピークタワーからピークロードを500mほど下った場所にあるカフェ、HALFWAY COFFEE(ハーフウェイ・コーヒー)にも足を運んでみてほしい。かつての牛乳会社、デイリーファームの倉庫をリノベーションしたというお店の棚には、オーナー自らが集めたビンテージの中国茶器がずらりと並び、このフォトジェニックなカップでコーヒーを味わうことができる。HALFWAY COFFEEは香港市内に複数店舗を展開する人気カフェで、こちらのピーク店は2025年10月にオープンしたばかりの新店。訪れた際は周辺の高級住宅街から散歩がてら訪れる人がほとんどで、まだ観光客でにぎわっていないのもよかった。
コンクリート打ちっぱなしの店内は天井が高く、開放的な窓もあり1時間でも2時間でも長居したくなる心地よい空間。こだわりのコーヒー豆はブラジル、インドネシア、コロンビア、エチオピア産のものをブレンドしている。力強いナッツの香りと、コクのある味わいで、ダークチョコレートのようなほのかな甘さが余韻に残る。またリンゴとビーツ、ジンジャーを使ったフレッシュミックスジュース、グリーンが豊富でヘルシーなフードメニューなど(写真右)、食事もしっかり楽しめる実力派カフェだ。
HALFWAY COFFEE
https://www.instagram.com/halfwaycoffee/
映画のロケセットがプチブーム。舞台はあの九龍城砦だ!
香港のトレンドで昨年から話題なのが、映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(原題:Twilight of the Warriors: Walled In)』だ。第97回アカデミー賞®国際長編映画賞の香港代表作品に選出され、「トワウォ」の愛称で親しまれる本作は、かつて存在した伝説の無法地帯、九龍城砦を舞台としたアクション映画。映画この中に登場するロケ地巡りやゆかりのスポット、おみやげ探しが今香港旅のテーマとして人気を博している。
なかでも注目を集めているのが、九龍城塞公園で開催されている「九龍城砦:映画の旅(原題:Kowloon Walled City: A Cinematic Journey)展」だ。精巧なセット美術でカオス&ミステリアスな「東洋の魔窟」が再現されており、往年の香港ファンはもちろん、リアルタイムで九龍城砦の存在を知らない世代をも強烈にひき付ける世界観になっている。
展示には九龍城砦の歴史を紹介するパネルなどもあるが、メインの見どころとなるのはやはり映画で使用された実物大のセット群だ。重要なシーンで登場した駄菓子屋や魚団子工場、理髪店、冰室と呼ばれる飲食店など、どのセットも細部まで丁寧に作り込まれており、まるでさっきまで誰かが生活していたかのようである。九龍城砦といえば無秩序に張り巡らされた電線も有名な光景だが、それらも実に緻密に再現されており、テーマパークさながらのワクワク感が味わえる。
ちなみに一番奥にある城砦の路地、そして屋上を再現したスペースでは、九龍城砦からの光景さながら、目の前で低空飛行の飛行機が轟音を立てて着陸する光景が流れ、五感を通じて九龍城砦での暮らしぶりを体感することもできる。単なる映画の再現ではなく、まるで1980年代の香港へタイムスリップしたかのような没入体験こそが本展示の魅力だ。
また、この展覧会が開催されている九龍城塞公園が、実際の九龍城砦跡に作られているという点も興味深い。かつての場所にセットを再現することで香港の現在と過去が結びつき、伝説の魔窟の存在をよりリアルに体感できるのではないか。九龍城砦は姿を消したが、香港の混沌やエネルギーは、今でも九龍半島の下町に行けば感じられる。よりディープに映画の世界を旅したい方は、映画で登場した油麻地のフルーツマーケットや広東料理店「楽口福酒家」などに足を運んでみるのも良いだろう。
九龍城砦:映画の旅(原題:Kowloon Walled City: A Cinematic Journey)展
https://www.discoverhongkong.com/jp/what-s-new/events/kowloon-walled-city-cinematic-journey-exhibition.html
(上記サイトから展示に関する日本語の音声ガイドがダウンロード可能)
香港冬グルメといえば、ローカルと相席で温まる煲仔飯!
凍てつくほど寒いわけではないが、それでも自然と体が温かいものを欲する冬の香港。そこでおすすめのグルメが「煲仔飯(ボウジャイファン)」である。土鍋で炊き上げる香港式釜飯で、寒い季節になるとよりそのおいしさが身に染みる。
煲仔飯の魅力は、なんといっても土鍋から立ち上がる香ばしい香りにある。直火にかけた鍋の中で米がじんわりと水分を吸い、具材と一緒に炊き上がるのだが、まず米そのものの香りが鼻をくすぐる。そこに腸詰(ラプチョン)や鶏肉、白うなぎ、豚のスペアリブなどの具材のうま味が湯気とともに鼻から伝わり、この香りだけでも香港に来てよかったと思うほど心が躍る。
また土鍋の鍋底にできる黄金色の“おこげ”は、広東語で「飯焦(ファンツィウ)」と呼ばれており、煲仔飯の醍醐味(だいごみ)でもある。香ばしさとほのかな苦み、かめばかむほどに広がる米の甘みが絶妙で、シンプルながら一度味わうとやみつきになる。煲仔飯の名店と言われる店では、火加減と時間を微妙に調整することでこのおこげが「薄すぎず厚すぎず」の理想形に仕上がり、職人技を堪能できる。
煲仔飯はそのままでも十分おいしいが、特製の甜醤油(テンジャンユ)を味変に使ってみよう。煲仔飯の店の卓上には必ずといっていいほど置かれている調味料で、少し甘みがあり中国料理に欠かせないものだ。これを鍋に余熱があるうちにかけると香りが立ち上がり、さらに深い味わいのグルメへと昇華するのだ。煲仔飯の名店は下町に多く、九龍半島では旺角、香港島では西營盤エリアがそれに当たる。こちらで紹介した坤記煲仔小菜は特に人気店で、ピーク時の行列は当たり前。店内でローカルとの相席も楽しみながら、名物グルメを堪能してほしい。
ファッション好きなら見逃せない、星街かいわい
ファッション感度の高いアエラスタイルマガジン読者のために、香港のおすすめ買い物情報も紹介したい。香港でハイセンスなショップが並ぶのは、香港島・湾仔の星街(スターストリート)かいわい。トラムも走る主要幹線、軒尼詩道(ヘネシーロード)から急坂を上がっていくため喧騒から切り離されたエリアで、おしゃれなカフェも点在。道行く人を眺めるだけでファッショナブルなエリアということに気づくだろう。
まず足を運びたいのはスターストリートから一本入ったサンストリートにあるセレクトショップ「KAPOK(カポック)」。フランス人オーナー、アルノー・カステル氏が提案する「クラシックでありながら、新しい(FUTURE CLASSICS)」をアジアに届けることをミッションとして2006年に設立。現在、香港で約10店舗を展開する人気店だ。なかでもこちらのサンストリート店がフラッグシップとなり、シンプルで質の高いウエアや、ヨーロッパやアジアで厳選された実用的で美しい文具・雑貨、五感を魅了するコスメやフレグランス、キャンドルなど、カテゴリーに縛られないライフスタイルアイテム全般を提案してくれる。
トレンドを追いかけすぎるのではなく、長く愛せる品質にもこだわったものがそろうKAPOK。実はかつて、東京にも店舗があったのだが、現在は撤退。残念ながら復活の兆しもないので、私は香港に来るたびに立ち寄るのを楽しみにしている。例えば、ロンドン発の「YOU MUST CREATE(ユーマストクリエイト)」や「PERCIVAL(パーシバル)」、デンマーク発の「LES DEUX(レドゥー)」といった日本ではあまりお目にかかれないレアな欧州系ブランドの出合いもこの店がきっかけだった。加えてKAPOKが自ら手がけるオリジナルブランド「FUTURE CLASSICS」、また香港デザイナーによるウィメンズブランドも取り扱っており、ユニセックスでも楽しめるショップとなっている。
KAPOK
https://ka-pok.com/
星街かいわいでキュレーションが光るセレクトショップはまだまだある。スコットランド出身のHamish Peddie氏が2021年に創業したSALVO(サルヴォ)は、サステナブル(持続可能性)な欧州系ブランドを中心に取り扱う。廃材からリサイクルされた椅子やヴィンテージ家具が置かれたインテリアからも、その哲学がひしひしと伝わってくる。
取り扱うブランドは、ロンドン発のFOLK(フォーク)やニューヨーク発のCORRIDOR(コリドー)、マドリード発のEDMMOND(エドモンド)、アントワープ発のCASTART(キャスタート)など。ファストファッションとは対極にあるインディペンデント・ブランドを世界中から集めている。環境負荷の低い素材を使っていたり、生産者の労働環境に配慮したりする点などを評価し、Peddie氏自らが何を置くか厳選している。「人とかぶらない、質の良い服が欲しい」「環境や倫理に配慮したブランドを応援したい」という方に、訪問を勧めたいショップだ。
ほかにもロロ・ピアーナやドルムイユ、エルメネジルド・ゼニアなど世界トップクラスの高級生地メーカーと提携し、最高水準のビスポーク・テーラー(オーダーメイド紳士服店)として知られるTHE BLOCK(ザ・ブロック)、ロンドン発の情報誌『MONOCLE(モノクル)』が運営するライフスタイルショップTHE MONOCLE SHOP(ザ・モノクル・ショップ)、カジュアルなベースボールキャップやニット帽、ベレー帽やバケットハットまでありとあらゆる帽子がそろうTHE MID-LEVELS HAT CLUB(ザ・ミッド−レベルズ・ハット・クラブ)など、多様なファッションが交じり合うのも星街かいわいの魅力。定番観光とは違った目線で歩いてみると、香港の魅力がまた一段と増して見えるに違いない。
THE BLOCKS
https://www.theblock.hk/
THE MONOCLE SHOP
https://monocle.com/shop/
THE MID-LEVELS HAT CLUB
https://www.instagram.com/themidlevelshatclub
後編では、香港で話題の最新バーを巡る「飲み歩き編」を紹介する。[2月4日(水)公開予定]