週末の過ごし方
東大卒ニートが東洋哲学に
どっぷりつかりたどり着いた境地
【センスの因数分解】
2026.02.02
“智に働けば角が立つ”と漱石先生は言うけれど、智や知がなければこの世は空虚。いま知っておきたいアレコレをちょっと知的に因数分解。
仕事と妻を失い、実家のふとんに入ったままの元東大生。虚しさのなか彼に響いたのは東洋哲学でした。本書はレジェンドたちがどんな思想を持ち、どんな教えを説いたかをつづるエッセイでベストセラーとなっています。
筆頭に仏教の始祖ブッダ、そして龍樹のインド編。次に老子と荘子、達磨の中国編。最後に日本の親鸞と空海。計7人の哲学者を彼らが生きた時代、見た目、人となりといった同じスタイルで紹介しており対比がしやすい構成。そして章を追うごとに、東洋哲学の考え方に自然と理解を深められるようになっています。各章で登場するレジェンドたちを、ドラマやアニメのキャラクターのように解説する著者のリードにより、難解で崇高なイメージの東洋哲学がぐっと近づき、いつの間にか目線の高さほどになっているのです。
それは著者本人がエゴを手放し、自分の失敗を隠すことなく東洋哲学と出合ってからの変化を語っているからかもしれません。数千年前の教えも修行や苦悩の果てに到達した真理も、現代的な生きづらさや執着という実体験と引き合いにしながら伝えるので、難解なお題に挑戦しているという意識はありません。最後は自分の生きづらさの正体がなにかに気づき少し楽になる、はずです。
不寛容な社会と言われる昨今。周りを気にして萎縮したり自分を盛って見せたりは、誰もが思い当たるのではないでしょうか。世の中をサバイブする人に、本書は東洋哲学がお守りになるかもよ、と伝えていると思うのです。
Photo: Takashi Sakamoto