週末の過ごし方

ガンテ・ロッジ ~Gangtey Lodge~
ブータンの幸せを体現する小さなリゾート

2026.04.15

ガンテ・ロッジ ~Gangtey Lodge~<br>ブータンの幸せを体現する小さなリゾート
伝統的ファームハウスの様式をベースにした客室のデザイン。眼前にポブジカの美しい自然の風景が広がる。
Photograph: Ken Spence

「幸せの国」で知られるブータンの、小さな村に溶け込むように建つガンテ・ロッジ。ここには、温かなホスピタリティと静かな時間という現代の都市生活者の心身に必要な癒しがあった。そしてまさにブータンらしい美徳を体現しているラグジュアリーリゾートだ。

国民総生産(GNP)ではなく、国民総幸福(GNH)の追求で知られるヒマラヤの小国ブータン。そんなブータンのなかでも、ポブジカ村は唯一無二の個性を放つ秘境である。

標高約3000メートルの高地に湿原が広がるという、世界的にみてもめずらしい谷あいの村・ポブジカは絶滅危惧種のオグロヅルの飛来する地として知られていて、かつて(といっても21世紀に入ってから)この村に電気を通す話が上った際に、電線がツルの飛来の妨げになるからと、村民投票で「ツルを選び電気を諦めた」過去がある。またチベット仏教最古の宗派ニンマ派の一大拠点であるガンテ・ゴンパという僧院も、この地のシンボルである。

首都のティンプーの若者に話すと、誰もが「何もない秘境」と言うほど手つかずの自然が残る静かな地だが、ここにはミシュランやコンデナスト・トラベラーなどで世界的に高評価を得ているリゾートがある。スモール・ラグジュアリー・ホテルズ(SLH)のメンバーでもあるガンテ・ロッジだ。そしてこのロッジが提供するのは、ポブジカ村の息吹そのものである。

「このリゾートは、古くから受け継がれてきたこの谷の文化や伝統を守り、地域に雇用を生み出し、遠隔地であるコミュニティを持続させることを発端として誕生しました。そして手つかずの自然をはじめとした谷の豊かさを、訪れるゲストたちに体験してもらいたいと考えています」と話すのは、ガンテ・ロッジのオーナーであるキーン・オマール・ウィンさんである。

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温かなホスピタリティは到着から始まる。「ようこそ! 天国のようなブータン、ガンテ・ロッジへ」と歌うゲスト歓迎の歌はスタッフがつくったオリジナルだという。
Photograph: Ken Spence

リゾートの入口は見逃してしまいそうなほど小さい。建物に入ると、揃って並んだスタッフたちが牧歌的な歓待の歌を披露してくれるのだが、コミュニティとの繋がりを大事にするガンテ・ロッジのスタッフのほとんどがこの村出身だという。客室はわずか12室。ほかにはリビングダイニングと小屋というシンプルな構成で、自然に溶け込むような楚々とした佇まいは環境への配慮であるのはもちろんのこと、どんな建物がこの谷にふさわしいのかを表しているようだ。

伝統の保全とコミュニティの持続を両立し、自然の恵みとともに世界中の都市からやってくるゲストに味わってもらいたいという、まさにオーナーの言葉通りである。建築デザインは伝統様式からインスピレーションを受けており、客室のコンデプトである近隣のファームハウスのような、ほの明るい照明とシンプルなインテリアが心身のリラックスに一役買ってくれる。

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薬草を入れたブータンの伝統的癒しの湯「ホットストーンバス」は専用の小屋で体験する。スパのメニューは客室で受けるので、ゲストは移動がなく、施術後よりリラックスできる。
(左)Photograph: Ken Spence (右)Photograph: Ben Glassco
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ラウンジダイニングには、お茶や軽食、ライブラリーやゲームが用意されている。基本的にここで食事をいただく。
Photograph: Ken Spence
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    Photograph: Ken Spence
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    Photograph: Ken Spence

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標高約3000mのガンテ・ロッジでは、ゲストの体の負担を考え、食事の塩分や量を配慮。ディナーはブータンの伝統料理やインド料理など日替わりのセットやウエスタンなどのアラカルトを選べる。リクエストをすれば、ラウンジダイニングの外に広がるテラスで素晴らしい眺めを楽しみながら朝食をいただくことも可能だ。
Photograph: Ken Spence

この土地の精神性は、ハードだけに投影されているのではない。食事やアクティビティ、トリートメントメニューといったソフト面においても十分に受け取ることができる。たとえば谷のパノラミックな景観を堪能できるハイクや、僧院での声明や瞑想体験、伝統的メソッドを基盤にした癒しのプログラムなどは、自然の中に身をおくからこそ堪能できるものだろう。余分な事柄を削ぎ落とし自己と向き合う環境やプログラムは、心身の回復の一助となるはずである。

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ガイドのナビゲーションによる雄大な風景を堪能しながらのハイクは、人気のアクティビティ。晩秋から初春は、希少なオグロヅルを見ることもできる。
(左)Photograph: Ken Spence (右)Photograph: Lee Bennett

「ガンテ・ロッジは、シンプルな暮らし、美しい自然、そしてGNHや仏教哲学に根ざした文化に触れるための入り口として設計されています。ゲストには谷を探索しその文化や伝統に触れると同時に、自分自身と向き合い、リセットする時間を持ってほしいと願っています。

混乱や不安、ストレスに満ちた現代において、このような空間はますます重要だと思います。ここでは思考を整理し、忙しい日常から心身を回復させ、新たな生き方や視点に触れる機会を提供しています。ガンテ・ロッジは立ち止まり、ゆっくりとした時間を取り戻し、内なる静けさを見出すための場所なのです」(オマールさん)

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祈りの現場との出会いは、ブータンの旅の柱のひとつと言っていい。ガンテ・ロッジでは、ほど近い場所にある名刹ガンテ・ゴンパでの僧侶たちによる声明を聞く機会もアレンジしてくれる。
(左)Photograph: Ben Glassco (右)Photograph: Ken Spence

彼女の言葉の通り、豊かな自然とチベット仏教の名刹がすべて、というような小さな谷あいの村での滞在で何度も聞き耳に残っている言葉は、「コンパッション(慈悲の心)」、「セルフレスネス(利他の心)」、「ポジティブ(肯定感)」だった。不安定で緊張を強いられるようなニュースが世界中を覆っている今、ガンテ・ロッジのような哲学を持つ施設に滞在し、心身の緊張を解きほぐし本来の自分の姿を見つめることがいかに重要か。本当は誰もが理解しているのではないだろうか。ガンテ・ロッジは訪れるゲストに、その大切な機会を用意してくれているのだ。

ここには一人でやってくるゲストも少なくなく、誰もが落ち着いた雰囲気で、自撮りを含めスマートフォンで写真を撮ることに忙しい人を見かけなかった。人の心と体に本当に必要なことはなにか。本当に大切なことはなにか……。ブータンの秘境にある小さなリゾートには、その尊さに気づいた人、そして気づきたいと思う人たちが訪れているようだ。そしてガンテ・ロッジもまた、その真髄を捉えながらゲストに惜しみなく与えているのである。

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Photograph: Ken Spence

GANGTEY LODGE
https://gangteylodge.com/
※ブータンへの旅は、現地の旅行代理店と提携している国内ツアー会社から予約するのが一般的、まずは問い合わせを。

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