お酒
クラフトビールと映画。【第6回】
『ミッキー17』に合う一杯は?
2026.10.14
“土着醸造”を掲げている富山県のNAT.BREWによる、同県南砺市立野原で栽培された「紫芋」を使用した限定プロダクト「MAJOGAMA」。しっかりとした苦味のなかにある独特の甘みは、紫芋の甘さなのだろうか。芋焼酎のような風味と合わさって、今まで味わったことのない新感覚IPA。ラベルに描かれた魔女は、一体大釜で何をつくっているのか……?
今回ペアリングした映画は、『パラサイト』で知られるポン・ジュノ監督の最新作『ミッキー17』。
失敗ばかりの人生を送ってきた男ミッキーは、一発逆転を狙おうと惑星開拓の仕事に志願し、契約内容を確認もせずにサインしてしまった。その仕事内容とは、死してもなお身体を再コピーし、記憶も再インストールして、危険な人体実験をされ続ける「人間消耗品(レプリカント)」の任務。
まだ調査がしきれていない未開の地では、未知のウィルスやモンスターに対応するだけの知識がない。安全な惑星移住とうたうためには、誰かの命に代えてでも、証明する必要がある。つまり、「何度でも生まれ変われるんだから、これできるよね?」というトンデモブラック企業に就職してしまったというわけだ。
ある日「使い捨てワーカー」として危険な任務を遂行し、なんとか生き続けることができたミッキー17が部屋に戻ると、処分されたはずのミッキー18が……。事態は一変、過酷な労働を強いられてきたミッキーの逆襲が始まる!
これまでポン・ジュノ監督は、極限状態に陥った人間の本質を革新的に描いてきたが、今回はSFを利用しながらも現代の社会風刺を効かせ、よりコアな「人間とはなにか?」を問いかける。
根本的には重いテーマを取り扱ってはいるものの、予測のつかない展開と、ブラックすぎる奇妙なユーモアをふんだんに織り交ぜ、エンターテイメントとして完璧に仕上げているポン・ジュノ監督には、脱帽せざるを得ない。
倫理観やアイデンティティを完全に無視した新たな技術は、割と身近に起きているのかもしれない……。
テクノロジーが急速に発達していく昨今。こんな時代でも、太陽の恵みを存分に受け、愛をこめて作られた野菜を使用し、熟考され創り出されたビールを、大切に、感謝しながら楽しもう。
鮎川ジュン(あゆかわ・じゅん)
アエラスタイルマガジンwebの人気企画『いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは?』の選者・執筆者。音楽家、DJ、イベントオーガナイザーなど幅広い顔を持ち、ソーシャルイシューギャラリー「SIGNAL」ではバー部門を担当。多種多様なクラフトビールを取り扱う。
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Photograph:Ryohei Oizumi
Text:Jun Ayukawa