銀座の柳が芽吹きはじめる頃、和光本店の「アーツアンドカルチャー」にも、春の景色がやってくる。
「春の楽園―真珠織と彫刻家具―」と題した催事が3月12日からスタートするのだ。
「真珠織というのは、アゼルバイジャン地方の長い間途絶えていた技法です。一般的な毛足があるパイル織と異なり、点描のような織りが特徴です。一粒ずつの結びが表面に現れる構造で、結びそのものの輪郭がくっきり見えます。このため、アンティーク絨毯のように毛羽が擦り切れて結び目が露出したような風合いを持っています」
撮影: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
そう説明するのは、東京・白金台にあるミーリーコレクションの『ソレマニエ・フィニィ』工房のオーナー、ソレマニエ・フィニィ=アミール氏。「遊牧民の高齢女性がかろうじて覚えていました。それを礎として技法を確立し、若い職人たちへ教育するところから始めました」
真珠織はもともと日常で使われる袋物、道具入れなど民具として作られてきた歴史がある。そのため、使われている手紡ぎの羊毛糸は撚りが強く、丈夫。そして、結びの点で文様を描いているので、多様な文様を織り出すことが可能である。工房では、古い織物から結びの技術を研究し、試行錯誤を重ねて、大きい敷き物を作ることに辿りついた。撚りの強い手紡ぎの羊毛糸に草木染を施し、古の製法を元に真珠織に新しい命を吹き込んだのだ。
撮影: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
動く染織美術館ともいわれる京都の祇園祭の山鉾。実はその中にも真珠織がある。
「京都の町家での真珠織の展示会を見に来ていただいた方の中に、祇園祭・南観音山の関係者がいたのです。南観音山に飾られていた17世紀王室工房製ペルシャ絨毯が掛け替えを必要とされていました。それに真珠織が採用されたのです」
真珠織は「失われた伝統技法を手紡ぎ草木染で復活させた織」として紹介され、絨毯好きだけでなく、美しいもの、美しい暮らしを愛する人たちの間で、徐々に広まっていった。
「商業性が加速し、手紡ぎ草木染による本当のペルシャ絨毯は廃れていきました。人は暮らしの中に自然とのつながりを求めていると思います。草木染の美しさは自然そのものです。花びらや木々の葉は、全く同じ色が一つもありませんよね。草木染の絨毯には均一ではない自然の色がいきています。真珠織は、暮らしに癒しをもたらしてくれるでしょう」
細かい織り目のドットが絵画のような景色の真珠織は、春の芽吹きや咲き誇る花のさまを投影した姿でもあるのだ。
催事: 「春の楽園―真珠織と彫刻家具―」
会期: 3月12日(木)~4月1日(水)
場所: 和光本店地階アーツアンドカルチャー
問い合わせ先: 和光 03-3562-2111
URL: https://www.wako.co.jp/
Text: Toshie Tanaka (KIMITERASU)
Produce: Teruhiro Yamamoto (YAMAMOTO COMPANY)

