かつて最先端の品々が、訪れる人に大いなる刺激を与えたという和光本店地階。そのDNAを受け継いで、2024年に誕生したアーツアンドカルチャーでは、他の大型店舗や小売店ではなかなか実現できないような出合いが待っている。
象鯨彫刻家具もそんな存在だろう。丸太の状態から本棚、椅子、棚といった家具を作り出しており、まるで生きているかのようだ。3月12日から和光で開催されている『春の楽園―真珠織と彫刻家具―』では、唯一無二の家具たちが出迎えてくれる。
撮影: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
撮影: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
「野外アトリエで制作する環境が、(家具の)風合いに影響しているところが多いかと思います。雨が降れば仕事はできませんし、夏の暑さや冬の寒さなど、自然の影響を強く受けます。そして木や動物の気配を感じながら作業をすると、あまりに繊細では周囲の環境に負けてしまうような感覚になるので、自ずと表現が力強くなる。そういうこともあって、(造形に)生命力や自然の趣を感じさせる形を選んでいるのだと思います」
撮影: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
そう話すのは、象鯨彫刻家具作家の里佳孝氏。
象と鯨。陸と海でいちばん大きな動物の名を持つ家具は、組み立てではなく、主にチェンソーで削り出された、文字通り彫刻のような家具である。「家具と彫刻の中間、あるいは両方の要素を兼ね備えていると思います。私たちのウェブサイトでも“家具を飾る、彫刻に座る”と案内していますが、こういう中間の領域にあることで、見る人によって多様な解釈ができる点が一番の特徴であり、面白さかもしれません」
撮影: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
そんな象鯨彫刻家具は、里氏の東京藝術大学の先輩である彫刻家・西村浩幸氏が立ち上げた。神奈川県の大磯に野外アトリエを持ち、同じく彫刻家としてキャリアを積んだ里氏も、このアトリエと湯河原の2拠点で創作を続けている。彫刻という領域から家具づくりへシフトしたこともあるのだろう。有機的なフォルムをまとった家具は、垂直や水平といった概念から自由に解放されている。しかし実際に座ってみたり、本を収めてみると思いのほかしっくりくるのだ。「丸太をそのまま家に置くようなかっこよさを大切にしています。それでいながら、実は一般的な日本の住宅にも違和感がなく、この家具が一つあるだけで、空間の雰囲気が変わるんですよ」
撮影: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
倒木や街路樹など、廃棄される可能性のある材を積極的に活用しており、サステナブルなものづくりの表現でもある彫刻家具。そんな一面も、アーツアンドカルチャーの考える「日本の美意識」とリンクする。固定概念から解き放たれたアートのような家具は、触れ合う人を触発するはずだ。
催事: 「春の楽園―真珠織と彫刻家具―」
会期: 3月12日(木)~4月1日(水)
場所: 和光本店地階アーツアンドカルチャー
問い合わせ先: 和光 03-3562-2111
URL: https://www.wako.co.jp/
Text: Toshie Tanaka (KIMITERASU)
Produce: Teruhiro Yamamoto (YAMAMOTO COMPANY)

