週末の過ごし方
島のもうひとつのリゾートへ
心を豊かにする“ラグジュアリー”
2026.10.20
「豊かさ」を内側へ
ラナイ島には、Four Seasonsが運営するもうひとつの滞在先がある。「Sensei Lānaʻi, A Four Seasons Resort」。フォーシーズンズ リゾート ラナイがビーチリゾートであるのに対し、こちらはラナイ・シティに近い高原のリゾートというイメージだ。こちらはエリソン氏の肝いりで、一般的なウェルネスリゾートとは性格が大きく異なる。利用できるのは16歳以上の大人から。3~5日間の幅広いプログラムを擁し、なかには1か月以上滞在するゲストもいるという。
リゾートが提供するウェルネスの柱は「Move」「Nourish」「Rest」。身体を動かし、食を整え、休む。それだけではなく、マインドセットや人との関係まで含めて、自分自身を見つめ直していく。
その特徴がよく表れているのが、「My Intention」「My Plan」といったセッションだ。それぞれに専門学を有するプラクティショナーたちとの対話を通して、今回の滞在で何を得たいのか、どんな状態になりたいのかを整理する。健康であるための個々の目標に沿って、現在の身体の状態をチェックし、それに合わせてフィットネスや栄養などのプログラムを組み合わせていく。最後には滞在中の気づきを日常にどう持ち帰るかまで考える。
つまり、ここでの休暇は「のんびりリラックスする」というだけではない。自分の現在地を知り、必要なものを見つけ、滞在後の生活につなげる。身体の不調はもちろん、人間関係やメンタルなど根本的な部分まで探り改善に向けた前向きな行動でもあるのだ。
興味深いのは、精神性に関わるプログラムも、いわゆる癒やし系のスピリチュアルなものではなく、科学的な研究などを踏まえて構成されていること。セッションを担当するのはカウンセラーではないが、会話からこちらの“不調(メンタル含め)”の原因を探り、適切なセッションへと誘ってくれる。
自分自身の“再生”も目指して
前編で紹介したフォーシーズンズ リゾート ラナイが、自然や地域社会との関係を通じて「島そのものをよりよい状態にする」ことを目指しているとすれば、センセイ ラナイが向き合うのは、その島を訪れる“人自身”だ。セッションを通して訪れる前よりもよい状態を目指す。その考え方は、島全体で進められている「再生」とも重なる。
もちろん、そうしたセッションを受けずにただリラックスしたい人にも、ここは完璧なリゾートで、和旅館と見間違えるようなスパ専用ヴィラや露天風呂といったお楽しみもある。ガーデンを散歩したり、プールサイドでひたすらのんびりしたり。大自然を体感できる豊富なアクティビティに参加して、島を探検するのもおすすめだ。大切なのは、自分自身が満たされること。セッションは予約制だが、気が向いたら空きがあるセッションに参加するのもいいだろう。
リゾートの外で感じる「再生」
リゾート外のアクティビティに、フォーシーズンズ リゾート ラナイ、センセイ ラナイのどちらからも出発する猫の保護施設訪問ツアーがある。
空港近くにある「Lānaʻi Cat Sanctuary」は、州内で保護された猫たちが暮らす施設。活動の始まりは2004年。ラナイ島の野良猫の不妊去勢に取り組んだことから活動が始まり、2008年に非営利団体として発足、現在の場所には2009年に移った。ラリー・エリソン氏が島の98%を購入した2012年より前から存在している、島独自の活動である。
ここで保護されている猫たちは、単に行き場を失った動物というだけではない。ラナイには地面に巣を作る海鳥が生息しており、野生化した猫による捕食から鳥たちを守ることもサンクチュアリの重要な役割だ。人間が持ち込んだ動物と、もともと島に暮らしていた生き物。どちらかを排除するのではなく、その両方を守ろうとする取り組みでもある。
この施設は積極的に観光客を受け入れており、訪問は無料、予約も不要。訪れれば入口で猫のドライフードを手渡され、猫たちと触れ合うことができるようになっている。リゾートからは週3回、送迎ツアーが催されており、すぐに予約でいっぱいになる人気アクティビティのひとつだ。
サンクチュアリの運営は100%寄付だといい、710匹の猫が広い敷地内でのんびりと暮らす。2023年のマウイ島ラハイナの大火で焼け出された猫200匹もここで保護されており、受け入れに対応するため敷地をどんどん広げているそう。観察していると、おもしろいことにマウイの猫たちのほうがラナイの子たちより大きい気がする。ラナイの猫は山で暮らす野生の猫なので、体が小さいほうが動きやすいのかもしれない。
こうして島を旅してみると、自分の中で「豊かさ」の定義が少しずつ変わっていくのを感じる。5つ星リゾートに泊まり、ミシュランスターシェフのレストランで舌鼓、いたれりつくせりのサービスに身をゆだねる。極上の贅沢がここにある。けれど、それは大富豪が巨額を投じて目指したラナイなのかというと、そうではない。
これだけ手つかずの自然が残る島なら、もっと開発して、もっと観光客を呼ぶこともできるはず。だが、ラナイが目指しているのは、その逆。島をラナイのまま残し、そこに暮らす人々の生活をよりよくしながら、その魅力を訪れる人と分かち合うことだ。
自然環境への負荷を減らし、今あるものを守る。これまでサステナブルツーリズムが重視してきたのが、そうした考え方だ。そこからさらに、訪れることによって自然や地域社会をよりよい状態へと導くことを目指す。いま観光業界では、そんなリジェネラティブツーリズムへの移行が注目されている。ラナイでは、その考え方を島だけでなく、そこを訪れる人自身にも向けているのが、ほかのリゾート地と大きく異なるポイントだ。
自然は自然のまま残し、新しくつくられる施設も、島で暮らす人のためのもの。ブランドショップなんてないし、スーパーマーケットで売られているものも限定的だが、一度島を出てホノルルや本土の大都市で働いた後、また島に戻ってきたという住人に何人も出会った。そんなラナイを歩いていると、「豊かさ」とは、何かを持ったり、増やしたりすることではないのだと思えてくるのだ。
旅をすることで、自分も、訪れた場所も、その先の未来も少しよくなる。これからのラグジュアリーは、そんなところに向かっていくのかもしれない。
Sensei Lānaʻi, A Four Seasons Resort
住所:One Keomoku Highway, P.O. Box 631380, Lānaʻi City, Hawaii 96763, U.S.A.
電話(予約):+1 (800) 505-2624
予約メール:res.sensei@fourseasons.com
URL:https://www.fourseasons.com/jp/sensei/
インスタグラム:https://www.instagram.com/fslanaijp/
個人所有の島へのアクセスは?
拍子抜けするほど簡単!
フォーシーズンズ リゾーツ ラナイの宿泊料金には、ホノルルとラナイ島を結ぶラナイ エアのセミプライベートチャーター往復便が含まれている。ゲストの旅程や接続便に合わせてフライトスケジュールが設定されるため、日本からホノルルに到着した後の移動もスムーズだ。
ダニエル・K・イノウエ国際空港では、メインターミナル出口で「LANAI AIR」のサインを持ったスタッフが出迎え、専用車で約5分の専用ハンガーへ案内してくれる。そこで再び荷物をチェックイン、搭乗までの間はラウンジでゆったりできる。さらに、ラナイ空港に到着後は、フォーシーズンズの専用シャトルでリゾートへ向かう。荷物の上げ下ろしもなにもかもスタッフまかせで、ホノルルに到着しさえすればあとはもう楽ちん、なのである。
最初から最後までハワイ気分
ハワイアン航空 ワンワールド加盟でさらに便利に
日本からハワイへのアクセスはチョイスが多い。地方から出かける場合は特に、日本国内の航空機移動を考え、日系のエアラインを選ぶ人も多いかもしれない。が、2026年4月、ハワイアン航空がワンワールドに正式加盟。日本国内を日本航空(JAL)で移動し、国際線はハワイアン航空で、というチョイスがより気軽にできるようになった。
ハワイアン航空といえばその名の通りハワイ生まれの航空会社。「Ho'okipa(おもてなし)」を信条に、ハワイらしいあたたかなサービスが特長だ。今回の取材ではプレミアムクラス(いわゆるプレミアムエコノミー)を利用し、羽田空港からホノルルへと飛んだ。
プレミアムクラスはフルフラットにこそならないが、メインキャビンよりも足元が4インチ(約10cm)広くとられている。これだけでけっこうな違いで、足をゆったりと伸ばしてくつろぐことができた。しかしハワイアン航空でうれしいのは、機内でハワイ産のビールなどがサーブされることもさることながら、世界の航空会社の中でも群を抜いて早いWiFiサービスがあることだ。全クラス無料で利用することができ、8時間弱のフライト時間も仕事や動画の視聴などをしていればあっという間。途中でフリーズすることもなく、ストレスがまったくないのは驚きだ。日本を夜に出て、同日の朝ホノルルに到着するので、少しは眠っておこう……と思うものの、あまりにも快適なWiFiについつい海外ドラマの続きを見てしまうのであった。
Text: Shie Iwasa