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日傘が必須なのは、真夏だけじゃない!
世界唯一の「傘ソムリエ」が選ぶ、ビジネスパーソン必携の日傘とは?
2025.10.24
いまや男性であろうと日傘は持っていて当たり前。飛躍的に普及した2025年夏はまさに“日傘元年”として記憶される年になるだろう。ただ、紫外線は一年を通して降り注ぐため、通年のUVケアが肝要だ。少量でも長年にわたって浴びつづければ慢性障害を引き起こし、皮膚の光老化(シミ、シワなど)や皮膚がんのリスクが増加、さらに白内障の近因となる。そこで、世界初の“傘ソムリエ”として、数多くのメディア出演でも知られる土屋博勇喜氏に、おすすめの日傘を紹介してもらった。土屋氏いわく“沼”だと語る、日傘の奥深き世界へようこそ。
「熱中症のリスクを含めて、自分の身は自分で守るしかありません。見た目が気になると言う方もいらっしゃいますが、周囲はそれほど人のことなんて気にしていないですから(笑)。それに、日傘を差さずに汗だくのまま人に会うより、よっぽどスマートだと思いますよ」
何となく日傘に抵抗感のあるこちらの瑣末な自意識を見透かしたように、その必要性をロジカルに説く土屋氏。自身でも200本を優に超える傘コレクションを持ち、自費を投じて製品の耐風性や撥水性のテストを行うとあって、その言葉にも俄然説得力が増す。今回、撮影で訪れた「Waterfront® JIYUGAOKA / TOKYO」は、ウォーターフロント社の旗艦店で、全4フロアに約500種類、1万本の傘がずらりと並ぶ、まさに傘のエンターテインメントビルだ。なかでも日傘は、毎年倍々で売り上げが伸びている主力商品だという。
「機能的な話をすると、裏にポリウレタンやラミネートなどをコーティングすることで、UVカット・遮光率が99%、遮熱率が35%を超えるのが、一般的な晴雨(せいう)兼用傘となります。その数値というのは傘になる前の生地単体の性能表記で、縫い目があるために100%ではなく、99.9%とか99%に落ち着くわけです。一方で、UVカット機能が付いている雨傘メインなのが、雨晴(うせい)兼用傘です。晴雨兼用と比べると劣りはするものの、紫外線もカットします。ただ、遮光と遮熱はしないので、太陽光をそのまま透過してまぶしさを感じることもあります。近年は晴雨兼用傘のシェアが増えているのが現状ですね。どちらも日本洋傘振興協議会(JUPA)の基準にのっとった数値が、製品の下げ札にも記載されています。最近だと、ニュージーランドの世界的機関によるUPF50+という評価基準を明記するものもありますし、単純に日傘と言っても情報量がすごく多いんです」
こう聞くと、晴雨兼用傘一択にも思えるが、どうやらそんな単純な話ではなく、それぞれ用途や特性も異なるようだ。
「晴雨兼用にも弱点があって、裏地のポリウレタンコーティングは水に弱い。スニーカーのインソールにも使われるポリウレタンなので、水分が残ったままだといずれ加水分解を起こしてしまうんです。お手入れとしては、水分を残さないよう乾拭きするのが必須です。また、耐水性に関しては、晴雨兼用傘のほうが優れています。なぜかというと生地の目が詰まっているから。ウエアで言うと要はゴアテックスみたいなものですね。それに比べると雨晴兼用傘は撥水生地くらいのイメージでしょうか。また、遮熱に関してもJUPAで定められており、35%以上であれば『遮熱機能をうたっていいですよ』というお墨付きの基準となります。色によっても多少変わってきますが、夏場であれば体感的には外気から2〜3℃は低く感じると思います」
機能や特性については十分理解できた。ただ、ここれだけの数からお気に入りの1本を選ぶのは難しい。そこで、小誌の読者層をイメージして、30代〜40代のビジネスパーソンに向けたおすすめを土屋氏自らがセレクト。ウォーターフロントブランドのなかから晴雨兼用傘という条件で選んだのが、以下の3本である。
ポケフラット® サンシェイド
「『薄くて軽くてコンパクト』がコンセプト。骨組みに特徴があり、通常の折り畳み傘が放射状に開閉するのに対して、こちらは閉じるときに上下3本の骨が左右にセパレートして平らに畳める構造になっています。蛇腹状に開閉する日本の扇子の作りをイメージしたそうです。親骨は50cmで、コンパクトで操作性も抜群。街なかで傘同士がぶつかることも少ないですし、トートバッグやショルダーバッグに収納して邪魔にならないのもポイントです」(土屋氏)
ZENTENKOU
「『あらゆる天候に対応する』がコンセプト。本来、受け骨にはカーボンやグラスファイバーなどの樹脂が用いられるのですが、こちらは一部にポリカーボネートを採用。そのため、柔軟性が向上し、正面からの強風にも負けない耐風性を備えています。また、風を受けて傘地がひっくり返っても一瞬で元に戻るようになっています。こちらは親骨が55cmなので、バッグも含めて体全体を広範囲でカバーできます。重さも男性であればまったく苦にならないですし、丈夫さを求めるならおすすめです」(土屋氏)
クイックシャット®
「こちらも親骨は55cmで、特徴としては傘地の折り目部分にフィルムのような硬いパネルを貼ったシェイプメモリー機能によって、一瞬できれいに折り畳むことができます。また、『ノーハジキ式』と呼ばれる開閉方法を採用しており、通常はボタンを押しながら開け閉めするのですが、シャフトの上げ下げだけで片手で簡単に操作できるのもポイントです」(土屋氏)
今回、ご紹介いただいた3本は、「Waterfront® JIYUGAOKA / TOKYO」やオフィシャルサイトで購入することができる。
傘ソムリエとしてメディアに引っ張りだこの土屋氏だが、紳士靴やカバンなどにも一家言を持つ好事家でもある。そのため、日傘選びにおいてもファッション的な視点が必要だと教えてくれた。
「最初にお話ししたUVカット、遮熱、遮光は第一条件として、次にサイズなのか、軽量性なのか、耐風性なのか。価格も含めてどの部分を重視するかによって選ぶ一本は変わってきます。人によって価値観はそれぞれだと思いますが、モノ選びという点では、靴や洋服を買うのと同じ感覚で選んでいいと思います。だからこそ、もうひとつ伝えたいのが、必ず傘を差した姿を鏡で見ることですね。洋服とのトータルコーディネートはもちろん、サイズ感や操作性のバランスなどがわかります。傘ってハマるとすごく面白いですし、本当に“沼”の世界なので(笑)」
土屋博勇喜(つちや・ひろゆき)
前職のホームセンター勤務時に、レイングッズを担当したことがきっかけとなり、作り手のこだわりや機能性、美しいフォルムに魅了され傘のとりこに。2019年、株式会社シューズセレクション(現ウォーターフロント)へ入社し、仕入れ・売り場作りの責任者となる。同時に、傘の魅力を広く伝える世界初の「傘ソムリエ」としての活動を開始。傘やレイングッズの開発・監修、商品紹介動画の配信、各種テレビ番組への出演など、傘にまつわる幅広い分野で活躍している。
Waterfront® JIYUGAOKA / TOKYO
住所:東京都目黒区自由が丘1-9-1
営業時間:11:00〜20:00
TEL:03-6421-2108
https://www.water-front.co.jp
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Tetsuya Sato