旅と暮らし
寒い冬を抜け出し、極うまラクサのあるシンガポールのホテルへ!
2017.10.19
Hotel Indigo Singapore Katong(ホテル インディゴ シンガポール カトン)
カトン/シンガポール
冬に近づき、すでに寒さが厳しくなってきた。そんな季節、無性にシンガポールのラクサを食べたくなるときがある。ラクサとはシンガポールの国民食で、ターメリックなどの香辛料が利いたスープに米粉の麺が入った料理。海老、魚、貝の出汁が利いたスープは、ココナッツミルクが入っているため乳白がかったのオレンジ色をしている。
凝縮された魚介の旨みにココナッツミルクのマイルドさとピリっとしたチリが合わさり、なんとも中毒性のあるスープなのだ。熱い食べものだというのに、暑いシンガポールで食べて汗をかきたい。そう思わせる美味しさのあるラクサに昨年出合った。
それが、「ホテル インディゴ シンガポール カトン」のラクサ。ラクサの話の前に、まずはホテルのあるカトン地区の説明を。カトンはシンガポールのなかで最もプラナカン文化の息づく街。プラナカン文化とはシンガポールにやって来た中国系移民の男性が現地のマレー系の女性と結婚し、築き上げたミックスカルチャー。
中国とマレー、さらにヨーロッパの影響も受けているプラナカン文化がどんなものかは、カトンを散歩すればすぐに感じることができる。街にはパステルカラーの鮮やかなプラナカン建築が立ち並び、その光景は女性がときめきそうなかわいさ。建築に限らず、花や草を描いたプラナカンのカラフルな食器は、人の心を明るくする。
マリーナ・ベイ・サンズをはじめ高層ビルが立ち並ぶ近代的なシンガポールとは対照的に、カトンは古きよき下町といった雰囲気が魅力だ。
そのカトンに昨年の夏、「ホテル インディゴ シンガポール カトン」がオープンした。日本ではまだなじみのない「ホテル インディゴ」は、グローバル展開するブティックホテルのブランド。特徴は街の特色をダイレクトに反映させたホテルづくりで、デザインもレストランも地元色がめちゃくちゃ強い。
というわけで、ホテル内のレストラン「Baba Chews Bar and Eatery」ではプラナカンらしいタイルが施された店内で、美味しいプラナカン料理を食べることができる。ラクサも元来はプラナカン料理。つまりカトンはラクサの本場なのだ。
地元民に大人気の店「328 カトン・ラクサ」も美味しいけれど、ホテルのラクサはよりスープが濃厚だった(写真※1)。海老の頭の味噌やすり潰した殻も出汁として使用されており、そのリッチさたるや……。ビールではなくキリっと冷えた白ワインがよく合う。いいつまみにもなるラクサだった。「328 カトン・ラクサ」はホテルの向かいにあるため、食べ比べも楽しい。
さて、気になるお部屋は入った瞬間に楽しくなるユニークなデザイン。壁には街の人たちが描かれ、ソファの布地はプラナカンらしく派手かわいい。洗面は昔のカトンの台所がモチーフとなっており、ブリキのマグカップに花柄の洗面バケツ、コットンの手ぬぐいだったりで、ありきたりじゃない。
カトンの街中で見たタイルや柄が部屋のそこかしこにあり、プラナカン気分にどっぷり浸かることができる。
そして窓の外はオレンジの低層住宅がどこまでも続き、ルーフトップのプールからも同じ景色を眺めることができる。マリーナ・ベイ・サンズのプールもいいけれど、この知られざるシンガポールの眺めも体験していただきたい。
チャンギ国際空港からはたったの15分。プラナカン料理を堪能できて、のんびり下町情緒に浸れるカトンはシンガポールの穴場。B級グルメのはしごにも最適なので、冬休みにふらりと訪れるのはどうだろう。
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。