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旅と暮らし
人生に挑戦しつづける人 俳優・岸谷五朗
2017.11.24
35年近いキャリアをもちながら「俳優としての達成感はまだまだ」と語る。
俳優・寺脇康文とともに主催する演劇ユニット「地球ゴージャス」の舞台「ZEROTOPIA(ゼロトピア)」の公演を来年4月に控える。キャスト、スタッフ計100人以上を率いて約4ヵ月間で約12万人を動員する予定だ。いまは脚本の執筆に追われている。
「まったくの白紙からものをつくる。ひとつひとつがすべて挑戦で、大きな恐怖心を伴います。果たして稽古までに脚本を書き終えられるのか、この恐怖ったらないですよ。挑戦することは努力すること。毎回本当に苦しいです」
「地球ゴージャス」は作品によって俳優陣を入れ替え、再演はない。
「だから千秋楽は仲間との別れであり、作品との別れでもある。劇場に自分が書いたセリフが吸い込まれていくような感覚ですよ。そして、お客さまの心にだけ残って終わっていく。その寂しさと喜びはたまらない。終演後、恥ずかしながら感極まってしゃべれなくなることがあるくらいです。この喜びのために、また挑戦する。『代表作は?』と聞かれたらいつも『次の作品です』と答えています」
喜びと苦悩、楽しさと恐怖はオモテとウラ。ずっとそんな世界で生きてきた。
「がむしゃらな20代だった、稽古してもお金にならなくて、寝る時間もなかった。見返りは一切ないのに、なにかを信じて進んでいた20代があったから、30代があり40代、50代がある。僕のまわりには同じように壁にぶち当たりながら、自分の才能と勝負しているやつばかり。一流のアーティストも、みんなちゃんとつまずいています」
時間があれば、脚本執筆と演技のレッスンを受けるためニューヨークに向かう。気持ちは20代のころと同じ。ポケットに小銭とクレジットカードと夢を突っ込んで、スケボーで走る。かつてはひとりぼっち。いまは後輩たちに「勉強してもらいたい」と思って連れて行き面倒をみている。
「ブロードウェーにおじいさんの職人が手作りしているタップシューズ専門店があるんです。昔は欲しくても高くて買えなくて。しばらくしてやっとオーダーできるようになりました。さらにまた数年後に訪れたときは、『あなた、日本のフェイマス・アクターだね、壁にサインしてくれ』と言われたんです。一緒に行った後輩がその様子の写真を撮ってくれました。すごくうれしくて、そいつらも当時の僕と同じように自分では買えないんだけど、そのときは『よし、俺が買ってやるぞ』と(笑)」
必死にもがいて挑戦しつづけながらも、同時に若者の挑戦を応援できる余裕ができた。「人に認められなくても失敗しても、つまずきをいい方に変えて、大きな成功をつかんでほしい」
ポケットに小銭とカード。信じるものをつかむため岸谷は進む。
<岸谷五朗(きしたに・ごろう)>
1964年生まれ。大学時代から劇団スーパー・エキセントリックシアターに在籍し、舞台、テレビ、映画で活躍する。特に1993年「月はどっちに出ている」では映画初主演にして多くの映画賞を受賞し、高い評価を集めた。94年に独立後、同時に退団した寺脇康文と組み、演劇ユニット地球ゴージャスを主宰。出演以外に演出・脚本も手がけ、毎公演ともソールドアウトとなる人気を集めている。
ジャケット¥120,000/エルネスト(バインド ピーアール 03-6416-0441)、ニットポロ¥20,000/アングレー(アングレー丸の内店 03-6551-2568)、パンツ¥25,000/バルバッティ(グランデ アンド シーオー 06-6910-0335)
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
Photograph:Yoshihiro Kawaguchi
Styling:Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair:Akino@Llano Hair(3rd)
Make-up:Riku(Llano Hair)
Text:Yukiko Anraku