旅と暮らし
ビルボードライブにソロとして初登場
日本を代表するギタリストChar
2017.12.12
10代前半でキャリアをスタートさせ、2016年にソロデビュー40周年を迎えたChar。今年『ギター・マガジン』誌が行った特集企画「ニッポンの偉大なギタリスト100」(2017年8月号)では堂々1位を獲得したのだが、それはある一時期の活動に対する評価ではなく、まさしく40年以上の長きにわたってずっと精力的にライブ活動を続けてきたことで得た評価と結果であったに違いない。
現在40代・50代の聴き手にとってCharを聴きはじめた、またはファンになったその入り口はさまざまだろう。「気絶するほど悩ましい」「逆行線」「闘牛士」と歌謡ロック路線の曲を連続ヒットさせてアイドル的な人気を博していた1977~78年のソロ時代。ジョニー吉長、ルイズルイス加部と組んだ「JOHNNY,LOUIS&CHAR」(後のPINC CLOUD)で日本最高峰のロックバンドとして君臨した79年から80年代半ば。あるいは90年代に入って石田長生と始めたアコースティック・デュオ「BAHO」の面白さに引かれてファンになった人もいるだろうし、ジム・コウプリーらと結成した「PSYCHEDELIX」のソリッドさに引かれて好きになった人もいるはずだ。
自分が初めてCharのライブを観たのは、3枚目のソロアルバム『THRILL』のリリース・タイミングで行われた日本武道館公演。それは1978年8月のことで、以来、約40年もファンのひとりとして定期的にライブを観つづけている。その78年の武道館公演でバックを務めたのは、大ブレイク直前のGodiego。Charはクレーンに乗って派手に登場し、アイドル人気の高かった時代ゆえ、そのような演出もファンたちを熱狂させたものだが、しかし中盤で「気絶するほど悩ましい」と「逆行線」を続けて歌った際、「いままでのようなシングルはもう出さない」といった趣旨の宣言をしたことを覚えている。その時点でもう、いわゆる芸能界から離れ、JOHNNY,LOUIS&CHARで硬派に活動していくことを見据えていたわけだ。当然のことながら、JOHNNY,LOUIS&CHARをスタートさせて以降、そうしたソロ曲は長きにわたって封印されていた。
あれから長い時間が流れ、現在のCharはライブでどんな曲をプレイしているのかというと……。しばらく離れていた人はきっと驚くんじゃないだろうか。そう、還暦前夜の2015年6月15日に日本武道館で行われたアニバーサリー・ライブ『Rock+EVE』や翌月の野音のフリーライブ『Rock Free』を経て、デビュー40周年イヤーとなった2016年から2017年にかけての全国ツアーは、初めのソロ時期(1976~78年)の楽曲が完全に主体となっていたのだから。アルバムで言うなら『Char』『have a wine』『THRILL』の3作。自分もツアーに何度か足を運んだが、例えば今年2月の練馬文化センター公演では「TOKYO NIGHT」で幕を開け、「闘牛士」「気絶するほど悩ましい」「逆行線」「Girl」と初期シングル曲を続け、さらに「ICE CREAM」「THRILL」「かげろう」「空模様の加減が悪くなる前に」「過ぎゆく時に」なども演奏された。「SHININ’ YOU, SHININ’ DAY」「SMOKY」を含め9割がソロ1作目~3作目の曲だったのだ。一昨年インタビューした際、Charは「還暦を迎え、ゼロに戻った気持ちで昔の曲を聴き返したり演奏したりするのが楽しいし、そこには発見がたくさんある」と話していたが、まさしくそれを反映させた構成。しかも懐メロめいたユルさなどは1ミリもなく、終始凛(りん)とした緊張感とモダンさと成熟の混ざり合った強力なグルーヴを実感できたものだった。
そのツアーの陣容は、ベースが近年ずっとパートナーとしてCharを支えている澤田浩史。キーボードが旧友の佐藤 準で、ドラムはロバート・ブリル。佐藤 準とロバート・ブリルは共に70年代のソロ3作『Char』『have a wine』『THRILL』で演奏していたミュージシャンだ。ちなみにこれはあまり知られていないことだと思うが、ファーストアルバム『Char』の時点でCharはバンド名。もちろん竹中尚人(たけなか・ひさと)=Charではあるが、あのアルバムを録音したChar、佐藤準、ロバート・ブリル、ジョージ・マスティッチ(ベース)、ジェリー・マーゴシアン(キーボード)の5人バンドを「Char」と称してもいたのだ。以前話を聞いたとき、A面1曲目を「SHININ’ YOU,SHININ’DAY」が飾ってB面1曲目を「SMOKY」が飾るその1作目『Char』が全キャリアの最高傑作であり、「ある意味において、どうしても超えられないアルバム」というふうにもCharは言っていたが、まさにそれこそが自身の思い描いた理想のサウンドであり、還暦を迎えて改めてそれを追求~再発見したい、原点となるグルーヴを現在の自分のものとして再生させたいという思いがこの2年くらいの原動力にもなっていたのだろう。
さて、2018年2月。ビルボードライブにCharがソロとして初登場。そのプレイを支えるのは澤田浩史とロバート・ブリルのふたりだ。繰り返すが、ロバート・ブリルは70年代のCharのソロ3作でたたいていたドラマー。80年代には「ベルリン」というカリフォルニアのニューウェーブ・バンド(映画『トップ・ガン』のテーマ曲「愛は吐息のように」を大ヒットさせた)のメンバーだったこともある人物だが、その伝説的なドラマーと時を経て再会したことはCharにとって非常に大きなことだったはず。そんなロバート・ブリルと澤田浩史という鉄壁のリズム隊と共に、Charがビルボードライブのインティメイトな空間でどれほど生き生きとしたプレイを見せてくれるのか、いまから楽しみでしようがない。
プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。ブログ「怒るくらいなら泣いてやる」(http://ameblo.jp/junjunpa)でライブ日記を更新中。
Billboard Live
Char
【大阪公演】
公演日/ 2018年2月5日(月)
問い合わせ/ 06-6342-7722
所在地/ 大阪府大阪市北区梅田2-2-22 ハービスPLAZA ENT B2階
【東京公演】
公演日/ 2018年2月7日(水)、2月8日(木)
問い合わせ/ 03-3405-1133
所在地/ 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガーデンテラス4階
その他、詳細についてはオフィシャルウェブサイトにて
PC/ www.billboard-live.com
Mobile/ www.billboard-live.com/m/