旅と暮らし
名ソムリエがオーナーだから、安心しておまかせできる『クロディーノ』
状況別、相手の心をつかむサクセスレストラン Vol.03
2018.02.20
肩ひじの張るフレンチよりも、リラックスしておいしいものが味わえるイタリアンを望む声は男性の場合は特に多い。「得意先がワイン好きなんだけれど、フレンチだとかしこまりすぎてしまうから」「やっぱりパスタも食べたいし」「素材がストレートに味わえる」……。しかし、自信をもって接待に使えるイタリアンとなると意外に難しい。しかも銀座あたりで手ごろな店を、と言われたらなおさらだ。そんなハードルの高いリクエストを「クロディーノ」なら見事にクリアしてくれる。
エノテカ・ピンキオーリの精神をつなぐクロディーノ
オーナーソムリエの黒田敬介さんは、今はなき、銀座の「エノテカ・ピンキオーリ」のシェフソムリエを務めた方。伝説の名店を知らない若い諸氏のために簡単に説明しよう。本店は、フィレンツェに創業以来47年、三つ星を保持しつづけるイタリアを代表するリストランテ。その店を松屋が銀座コアビルの7階に誘致し、1992年に東京店をオープンした。黒田さんはローマに2年、フィレンツェのピンキオーリ本店で1年、ソムリエとしての修業を積み、東京店のオープンに合わせて帰国。世界中の銘醸ワインが集まるカーヴのワインを自在に操り、健啖家をうならせてきた。惜しまれつつ閉店したのち、ピンキオーリで学んだ“本物”をリーズナブルな価格で多くの人に伝えたいと、2011年にピンキオーリ時代につけられたニックネームの「クロディーノ」をオープンした。
正統派イタリアンの系譜を受け継ぐ心弾む美味
「バブル期から30年弱、贅沢ならよいという時代は過去のものとなりました。けれど、基本に忠実に、手間を惜しまず作る、正統派のイタリアンのおいしさはいつの時代でも受け入れられるはずです」と黒田さん。
オープンに際し、シェフに抜擢したのは調理師学校を卒業してエノテカ・ピンキオーリに入店し、スーシェフまで務めた丸山孝一さん。以来8年間、二人三脚でエレガントで華やかな料理を提供している。今回紹介する料理は1万1800円のコースの4皿というのだから信じられないほどリーズナブルだ。いずれも、トスカーナを中心とした正統派のイタリア料理をベースにしながらも、日本の旬の食材を使いこなした、心浮き立つ要素が盛り込まれ、目も舌も喜ばせてくれる。それらは、日常の延長としての“イタ飯”ではない、晴れの楽しみに満ちている。しかもスマートなのに心温まるサービスは黒田さんの人柄ゆえと、二重三重に接待に向く店といえよう。
変幻自在のワイン選びが料理に花を添える
丸山シェフの料理の力をさらに120%に引き上げ、リストランテでの食事を至福の時間と印象づけるのが、黒田さんのチョイスするワインの力だ。先方がワイン好きであるなら、好みを事前に聞いて、エリアやゆかりのビンテージなどを黒田さんに相談して選んでもらうのもいいだろう。もしくは、先方の“ワインに詳しい”という自負をくすぐりたいのであれば、ワインリストから選んでもらうのもいい。ワイン好き垂涎のリストだから、それだけで目を輝かすに違いないし、黒田さんとのやりとりも楽しんでくれるに違いない。
店内中央のサービステーブルには、リーデルの「ブラックタイ シリーズ」のデキャンティングボトルが並び、ワイン好きにはたまらない。シャンパンや白をグラスで頼み、とっておきの赤をデキャンティングしてもらうというのも粋だ。時間経過に伴いワインが花開くさまを味わうのは、ワイン好きの醍醐味である。
一方、昨年の12月から始めた、格上のワインをペアリングで出すという試みが、また、ワイン好きを泣かせる。ここで紹介したコースは1万1800円だが、実は5850円というリーズナブルなコースもあり、今日は料理は少し軽めにして、普段なかなか開けられないようなワインを合わせて楽しむ、そんなこともできる。ワイン×料理の組み合わせは変幻自在。ソムリエの力を借りて、接待の時間をいかようにも演出できる。
個室で親密な時間を過ごす大切な話に花を咲かせる
店内は全24席と決して広くはないが、シックで品格があり、席に着くととても落ち着く。テーブルの距離感もほどよく、客同士の話声がさんざめきとなり、店内の華やぎも増す。しかし、ちょっと込み入った話をしたいときに、また、お祝い事やプライベートな雰囲気を演出したいときなどには個室がおすすめだ。4人まで使用でき、室料がないのもうれしい。ただ、個室から埋まっていくほど人気なので、早めの予約は必須だ。
掲載したメニューはすべて税込み価格です。
Photograph:Makiko Doi